Vistaの地平
第6回 より高機能になったVistaのバックアップ機能

2.Windows Complete PCバックアップ

株式会社NTTデータ関西 井上 成二
2007/03/29

Vistaのエディションと使用可能なバックアップ機能

 Vistaには複数のエディションがあり、それぞれ使えるバックアップ機能に違いがある。これらの違いについて、下表にまとめた。また比較のために、Windows XPのバックアップ機能についても併記している。

機能
Windows Vista
Windows XP *1
Home Basic Home Premium Business/Enterprise/Ultimate Home Edition Professional
ファイル単位のバックアップ/復元
*2
  スケジュール実行
×
*2
  ネットワーク共有へのバックアップ
×
*2
Windows Complete PCバックアップ/復元
×
×
×
×
シャドウ・コピーによるバックアップ/復元 *4
×
×
×
×
以前のバージョン(ファイル/フォルダのプロパティ上の復元用ユーザー・インターフェイス)
×
×
×
×
復元ポイントの作成/システムの復元
グループ・ポリシーでのバックアップ機能制御
×
×
×
*3
自動システム回復(ASR)
×
×
×
×
コマンドラインでのファイル単位のバックアップ実行
×
×
×
*2
Vistaのエディションと使用可能なバックアップ関連機能
<表の見方、注>
○=使用可能/△=条件付きで使用可能/×=使用不可能
*1 ○が付いている機能でも、細部はVistaと異なる部分がある。
*2 インストールCD-ROMからバックアップ・ユーティリティを追加インストールすることで各機能を使用可能。
*3 システムの復元についてはグループ・ポリシー項目が存在するが、ファイル単位のバックアップなど、ほかのバックアップ機能を制御する項目は存在しない。
*4 [以前のバージョン]タブでのシャドウ・コピーからの復元に関するバックアップ/復元機能を指す。Windows XPのバックアップ・ツールでもバックアップ時にシャドウ・コピーの機能を使ってスナップ・ショットを作成するが、その機能を指すものではない。

 このように、Windows Vista Business/Enterprise/Ultimateについては、いずれもバックアップ関連機能に違いはなく、すべての機能が搭載されている。

 一方、Home PremiumとHome Basicで利用可能なバックアップ機能は限定されている。特に下位エディションであるHome Basicでは、ファイル単位のバックアップのスケジュール実行、ネットワーク共有へのバックアップができない。本当に最低限のバックアップ機能しか搭載されていないわけだ。仕事での利用など、失っては困る作業ファイルを扱うなら、最低でもHome Premiumを、可能であればBusinessかUltimateを選択した方がよいだろう。

 Vistaでの新機能であるWindows Complete PCバックアップ/復元とシャドウ・コピーによるバックアップ/復元、[以前のバージョン]タブによる復元機能は、Business、Enterprise、Ultimateにのみ搭載される。Enterpriseは、パッケージ版やPCへのプレインストールの形態では販売されず、企業向けのボリューム・ライセンス形態でのみ販売される。従ってボリューム・ライセンスを利用しない個人、または小規模事業者で、Vistaのバックアップ機能をフルに使いたければ、UltimateかBusinessを購入する必要がある。

Windows Complete PCバックアップ/復元の詳細

 ここからは、これまでに紹介してきたVistaの各バックアップ機能について、具体的な操作方法や細部の特徴、対応するWindows XPの機能との違いなどを述べることにする。なお本稿での動作検証と画面キャプチャは、Vista Ultimateで実施している。エディションによっては、実行できない操作があったり、ボタン名称などが一部異なったりする可能性がある。

■Windows Complete PCバックアップ
 すでに述べたとおり、Windows Complete PCバックアップは、障害時の復旧を主な目的として、ハードディスク・イメージを丸ごとバックアップする機能だ。Windows Complete PCバックアップを実行するには、本稿の最初で紹介した「バックアップと復元センター」の[コンピュータのバックアップ]ボタンをクリックするか、「バックアップの状態と構成」ツールの[Complete PCバックアップ]を使用する。これらのツールでComplete PCバックアップの開始を指定すると、バックアップ先が問い合わせられる。ここでハードディスクまたはDVDを指定するとバックアップ処理が開始される。

■Windows Complete PC復元
 すでに説明したとおり、Windows Complete PCバックアップで作成したバックアップ・イメージを復元するには、コンピュータの起動時、またはVistaのインストールDVDからの起動時に、F8キーを押すことで表示される詳細ブート・オプションを使って、システム回復オプションを起動する。ただし、ハードディスクから起動してシステム回復オプションを表示させるには、システム回復オプションがコンピュータにあらかじめインストールされている必要がある。次の画面は、VistaのインストールDVDでコンピュータを起動したところだ。ここで[コンピュータを修復する]を選択すれば、システム回復オプションを実行できる。

Windows Vistaのインストール画面
VistaのインストールDVDでコンピュータを起動したところ。ここからシステム回復オプションを起動できる。
  これをクリックすると、システム回復オプションが表示される。

 システム回復オプションでWindows Complete PC復元を選択し、復元するバックアップを選択すれば、後は自動でバックアップ時の状態に復元される。仮にハードディスクからVistaを起動できなくなった場合でも、この方法でバックアップ時の状態を復元できる。

 なお、「バックアップと復元センター」に[コンピュータの復元]ボタンがあるが、このボタンをクリックしても、Windows Complete PC復元に関する注意点とシステム回復オプションにアクセスする方法が表示されるだけである。

■Windows XPとの違い

TIPS:ASRでシステムをバックアップする

 Windows XP Professionalには、ディスク障害などでコンピュータが使用できなくなった場合に、早期の復元を可能にするためのしくみとして、自動システム回復(ASR:Automated System Recovery)機能が用意されていた(ASR機能の詳細については関連記事を参照)。しかしVistaでは、Windows Complete PC バックアップ/復元によりASRの機能を代替できるので、VistaにはASR機能が搭載されていない。


 INDEX
  Vistaの地平
  第6回 より高機能になったVistaのバックアップ機能
    1.Vistaのバックアップ機能の概要
  2.Windows Complete PCバックアップ
    3.シャドウ・コピーによるバックアップ
    4.ファイル単位のバックアップ(1)
    5.ファイル単位のバックアップ(2)
 
 「 Vistaの地平 」


Windows Server Insider フォーラム 新着記事
@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)

注目のテーマ

Windows Server Insider 記事ランキング

本日 月間