Windows 2000 Insider/PC Insider合同特別企画
Windows XPの正体

Windows XP性能評価(1)
アプリケーション実行性能

4.アプリケーション・ベンチマーク・テストの考察

デジタルアドバンテージ
2001/11/30

 これまでに実施したアプリケーション・ベンチマーク・テストの結果を整理してみよう。

 まず、スクロール表示によるビットブリット(BitBlt)処理が多いWordテストでは、Windows XP(デフォルト)はWindows 2000に比較して20%〜30%弱低速(20%〜30%よけいに時間がかかっているということ)、シート内の大量の文字表示とグラフ描画を行うExcelテストでは90%程度と劇的に低速(ほぼ半分ということ)、もっぱら2Dグラフィックス表示を行うPowerPointテストでは7%〜12%低速とあまり変わらず、米国版環境でのSYSmark 2001テストではほぼ同等の性能という結果である。

 最も気になるのは、SYSmark 2001テストと編集部で作成したアプリケーション・ベンチマークの傾向が大きく異なることだ。考えられる要因の1つは、SYSmark 2001テストは英語環境、編集部独自のベンチマーク・テストは日本語環境で計測しているという違いである。Windows XPは、英語環境と日本環境では、アプリケーションの実行性能に影響を及ぼすような何らかの違いがあるのではないか?

 次に気になるのは、ExcelテストでのWindows XPにおける劇的な速度低下である。何度も述べているように、Excelテストでは、テスト中に大量の文字描画を行っている。Excelテストでは2Dグラフィックスによるグラフ描画も行っているが、PowerPointテストの結果を見れば、この部分が差の要因になっているとは考えにくい。Wordテストでも文字描画は行っているが、多くはスクロール処理に時間を割いており、スクロールでは、一度描画した文字はビットマップ・イメージとしてビットブリット処理で転送されるため、文字描画処理が占める割合はあまり大きくないと考えられる。

 もう1つ、Excelテストにおいて、Windows XP(デフォルト)とWindows XP(パフォーマンス優先)の間で、前者を1とすると、後者は0.77〜0.80と無視できないレベルで高速化した点だ。両者の違いは、[パフォーマンス オプション]の[視覚効果]タブにおいて、視覚効果オプションをすべてオンにしているか、すべてオフにしているかの違いである。すでにご紹介したとおり、これらのオプションをよく眺めてみると、「スクリーン フォントの縁を滑らかにする」という、文字描画に関連するオプションが含まれていることに気づく。

 これらを総合すると、今回のベンチマーク・テストに影響を及ぼしている大きな要因の1つは、日本語版Windows XPでの文字描画性能にあるのではないかと推察できる。そこで次に、先のExcelテストを使って、Windows 2000とWindows XPの文字描画処理性能に特化したテストを実施することにした。

フォント・レンダリング性能テスト

 前出の[スクリーン フォントの縁を滑らかにする]というのは、いわゆるアンチエイリアス機能のことで、文字のエッジ部分を中間色で補間することで、ジャギーを低減して滑らかな文字表示を行う機能である。これはWindows 2000、Windows XPの双方に備えられた機能である。このアンチエイリアス機能に加えWindows XPでは、RGBの画素の階調を独立して制御することで、さらに滑らかな文字表示を可能にする「ClearType」という機能が追加されている。ClearTypeはデフォルトでは有効化されていないので、これまでのテストでは使っていないのだが、今回はClearTypeを有効化したものもテストに加えてみる。

 Excelテストが使用するシートには、MS Pゴシック/11ポイント(これはExcelのデフォルトの文字設定)の日本語文字と英数字からなるデータに加え、一部異なるフォント(フォント・サイズ)の文字を含むグラフなどが挿入されている。しかし大部分の文字はグラフ以外のシート上の文字データである。今回のテストでは、このシート上の文字データを、当初のMS Pゴシック/11ポイントのデータから、日本語を適当な英語(ローマ字)に翻訳・置換し、シート上の全フォントをArial/11ポイントに変換したデータと、日本語データを含む文字データをすべてサードパーティ製のTrueTypeフォント(DF平成ゴシック/11ポイント)に変換したデータの3種類を用意して、テストを実施した。

 テスト環境としては、Windows 2000のデフォルト設定(アンチエイリアスは無効)とアンチエイリアスを有効にしたもの、Windows XPのパフォーマンス優先(アンチエイリアス/ClearTypeともに無効)とアンチエイリアスを有効化したもの、ClearTypeを有効化したものの全5種類を用意した。

 なお、今回のテストでは、ハイエンド構成のマシン2のみを使用している。結果は以下のとおりである。

フォント・レンダリング性能テスト
フォントを置き換えたり、アンチエイリアス処理のなどをオン/オフしてExcelテストを実行した。Arialは、日本語を英語文字に翻訳・置換したもの、MS Pゴシックは標準状態、DF平成ゴシックは、フォントをサードパーティ製TrueTypeフォントに置換したもの。Windows XPでは、フォントの描画処理がかなり重いことが分かる。またアンチエイリアス/ClearType処理を行わない「パフォーマンス優先」の状態と比較して、これらの処理を行った場合はさらに処理速度が大幅に低下した。

 グラフの解説を行う前に、注意点を1つ述べておく。前述したとおり、今回テストに用いたExcelのシート中の文字は、すべて11ポイントで、基本的に表示はズーム100%の状態で行っている。アンチエイリアスやClearTypeの処理は、すべての文字表示に一律に適用されるわけではない。画面上での作業で一般的によく使われるサイズについては、性能や見栄えを理由にするためか、アンチエイリアスやClearTypeの処理が実行されないことがある。例えば、今回使用した11ポイントの文字では、Windows 2000/Windows XPともに、アンチエイリアスの設定を有効にしても、表示上は未処理の状態となった。なおWindows XP(パフォーマンス優先+ClearType)については、ArialおよびDF平成ゴシックの場合だけClearTypeが有効になり、MS Pゴシックでは有効にならなかった。このように、実質的にアンチエイリアスの処理は、ほとんど行われなかったにもかかわらず(シートに挿入されたグラフの凡例の文字などでは有効になっていた)、設定によって結果は大きく異なることとなった(ClearTypeの詳細については別稿「Windows XPの正体――文字表示を滑らかにする新技術『ClearType』」を参照していただきたい)。

 まずはWindows 2000(デフォルト)とWindows 2000(アンチエイリアス)の結果に注目してみよう。両者にはまったく差がない。いま述べたように、アンチエイリアスの効果は現れなかったのだから、当然といえば当然の結果である。

 次はWindows 2000(デフォルト)とWindows XP(パフォーマンス優先)に注目してみよう。英語フォントのArialでは、Windows 2000を1とするとWindows XPでは1.41、同じくMS Pゴシックでは1.72、DF平成ゴシックでは1.67といずれも大幅に低速になっている。このテストは、あくまで日本語環境で英語フォントのArialを描画しているので、前出のSYSmark 2001テストと直接比較することはできない。しかしこのテストで見るかぎり、Windows XPの文字描画処理はWindows 2000に比較すると重いと考えられる。SYSmark 2001テストの結果にこれが現れないのは、長時間にわたり、さまざまな処理を組織的に実行するSYSmark 2001では、全体に占める文字描画処理の割合はあまり大きくなく、Windows XPで導入された高速化などの要因と相殺しあっているのかもしれない。

 いずれにせよ、MS Pゴシックの結果はWindows XPが大幅に遅い。先のExcelテストにおいて、Windows 2000とWindows XPであれだけ大きな差が生じた理由として、このフォント・レンダリング性能が影響していることはほぼ間違いがなさそうだ。

 今度はWindows XP(パフォーマンス優先)とWindows XP(パフォーマンス優先+アンチエイリアス)を比較してみよう。前述したとおり、今回のテストでは、結果としてほとんどアンチエイリアスの効果が得られていないのに、前者:後者を比較するとArialでは1:1.33、MS Pゴシックでは1:1.34、DF平成ゴシックでは1:1.30と大きく性能が低下している。ここでWindows XP(パフォーマンス優先+アンチエイリアス)では、MS PゴシックとDF平成ゴシックとの間に無視できない差があるのだが(MS Pゴシック:DF平成ゴシック=1:0.87)、この理由は不明である。マシンの性能にもよるが、Windows XPのデフォルトの状態では、ほとんどの場合でこのアンチエイリアスが有効になるはずだ。先のExcelテストで、Windows XP(デフォルト)とWindows XP(パフォーマンス)優先で顕著な性能差が現れたのには、これが影響しているものと考えられる。

 最後にClearTypeのテストに注目してみよう。ここでMS Pゴシックだけは、すぐ上のアンチエイリアス・テストと同等の結果になっているが、これは、MS Pゴシックだけは11ポイントではClearTypeが有効にならないからだ。これに対し、ClearTypeが有効になるArialとDF平成ゴシックでは、大きく性能が低下した。具体的には、Windows XPパフォーマンス優先と比較すると、Arialでは1:2.51、DF平成ゴシックでは1:2.12と2倍以上の時間がかかっている。

ベンチマーク・テストを終えて

 今回のベンチマーク・テストでは、アプリケーション実行環境として見た場合、やはりWindows XPはWindows 2000よりも負荷の大きなOSだということが確認された(同じマシン上でWindows 2000からWindows XPにアップグレードする場合)。ただしその差は処理によってまちまちで、少なくとも2Dグラフィックスではあまり差はなく、ビットブリットは若干重いがそれほどではない。問題は文字描画で、常に大量の文字描画(特に日本語文字の描画)を行うような処理では、Windows XPは体感レベルでも遅さを感じることになろう。

 性能低下の割合は同じでも、当然ながら、低性能なマシンほどそのインパクトは大きい。特に、ClearTypeを常時使いたいと考えるなら、文字描画の性能低下を我慢する必要があるだろう。だがマシンをそのものを新しくするなら話は別だ。今マシンを購入するなら、少なくとも以前のマシンよりも(はるかに)性能は向上しているであろう。そのため、文字描画の性能がWindows 2000よりも少々遅くなっていても、以前のマシン(Windows 2000か9x/Me)よりは処理そのものが絶対的に高速になっているだろう。そのためClearTypeでも十分実用的に利用できる。それに、実際にはベンチマーク・テストのように常時文字の描画が行われるわけではないので、アンチエイリアスやClearTypeによる影響ははるかに小さい。これらの機能を使ってみても遅いと感じることがないようならば(逆にいうと、これらの機能をオフにしてもその差が感じられないようならば)、使ってみても問題はないだろう。

 最初に述べたとおり、今回のベンチマークは、Windows XPのごく一部分をテストしたにすぎない。今回の結果はあくまで参考値としてご利用いただければ幸いである。


 INDEX
  Windows XP性能評価(1)−アプリケーション実行性能
     1.ベンチマーク・テストを実施する前に
     2.Windows XP搭載メモリ・サイズ別性能テスト
     3.Windows 2000/Windows XP性能比較
   4. アプリケーション・ベンチマーク・テストの考察
     コラム: アプリケーション・ベンチマーク・テストの内容

Windows XPの正体


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