連載 XML雑記帳 (1)

技術者不足とXMLのカンケイ

江島健太郎
インフォテリア株式会社の事業開発部に所属。B2Bの電子商取引を実現する手法としてのXMLの啓蒙活動と、事例の発掘にいそしむ。 電子ガジェットを大量に保有するサイバー魔人。 XML eXpert eXchangeフォーラムのガイドとして、記事の執筆や監修などを行う
kenn@infoteria.co.jp

江島健太郎
インフォテリア株式会社
2000/5/22

 XML専門のこの「XML eXpert eXchange(略称XXX)」フォーラムにやってくる読者の中には、「XMLのことは何となく知っている。でも、タグ名を自分で決められると何が嬉しいんだろう? どうして世間ではこんなにXMLが盛り上がっているんだろう?」 と、素朴な疑問を感じている方も多いでしょう。

 そうした、XMLの概要は理解できたけれど、もっとXMLの本質にグイグイと迫りたいと考えるあなたに、世の中に既にある事例を理解するだけでは最先端を行けないと考えるあなたに、この連載コラムがお役に立てれば幸いです。内容は軽め、でも普通の雑誌記事などには載らないような切り口で、XMLにまつわるさまざまな事柄を解剖していきます。

 そこで記念すべき第一回は、「技術者不足とXMLの普及」と題して切り込んでみましょう。

シンプルさは効率に勝つ

 インターネットの普及によって、我々は「シンプルな冗長さ」は「複雑な効率のよさ」に勝つ、ということを学びました。例えば、HTTPはIIOP(CORBAに利用されるオブジェクト間通信のプロトコル)に比べるべくもない単純な仕掛けのプロトコルですが、半面で理解しやすく実装もテストも簡単です。そのおかげで、多くのインスタントなインターネット技術者に支えられ、猛烈なスピードで今日のWebの繁栄に至りました。

 XMLの世界でも似たような現象がおきています。XMLのスキーマ定義言語の例ですが、コマースワンのSOX v2は、SOX v1のサブセットとして定義されました。マイクロソフトのXDRは、それ以前に提唱していたXML Dataを2度ほど仕様削減したものとなっています。W3CのXML Schema仕様がどんどん複雑で重くなる一方、それをシンプルにしたRELAXなどのライトウェイトなスキーマ定義言語が登場してきました。

 ソフトウェアの歴史を見ても、バージョンが上がると仕様が軽くなるというのはあまり例のないことではないでしょうか?

小さく生んで大きく育てる

 データウェアハウスの世界でもよく言われることですが、最近では「小さく生んで大きく育てる」アプローチが大切と言われています。かつてメインフレーム全盛の頃に用いられたビッグバンアプローチ(最初から大きなシステムをヨーイドンで構築する方法)が通用する領域は、どんどん減ってきているようです。

 この背景として、慢性的な技術者不足という現実があると私は考えています。かねてより情報システム部門は、ユーザーからあがってくる大量の要求をうまくこなせる、投資効果の高い情報システムの構築を迫られ続けていました。一方でこうしたシステムの歴史は膨大なバックログとの戦いの歴史でもありました。技術者の不足は深刻な問題となり、1970年代にはソフトウェア危機とまで言われました。

 ソフトウェアというのは、ある一定の規模までは小人数の優秀な人材が綿密なコミュニケーションを取りながら作っていくのが、最も品質も開発効率も高いと言われています。しかし、ソフトウェアの大きさが一定の規模を超えたあたりから、保守やプロジェクト管理の負荷が重くなります。そうなると、あうんの呼吸で作られてきた「美しい」コードを維持しようとすることが、逆にそのソフトウェア開発のネックになってきます。

 こういった事態を回避するために、オブジェクト指向やライフサイクル管理などのアプローチが研究されてきました。シンプルな技術のよさは、こうした中で生きてきます。ソフトウェアを開発するうえで、数人の天才だけが理解できる高級なものではなく、多数の平凡なプログラマーが理解できるシンプルで平易なインターフェースと安価なツールが用意される。こういった環境があってはじめて、真に大規模なシステムに耐えうる開発環境が整ったといえるでしょう。そしてここで言う大規模なシステムの究極の姿が、インターネットなのです。

シンプルさが生んだXML

 こうした背景のもとでXMLは誕生しました。XMLは階層構造を表現できるフォーマットとしてはおよそ最もシンプルで、HTMLに似た構文形式は、あらゆる技術者にとってすでに非常に馴染み深いものとなっています。しかもXMLそれ自体の構文規則は必要最小限しかなく、データの中身はテキスト形式なのでどんな環境でも表示して確認することができます。

 タグに意味のある文字列を記述したり、タグを使ってダイナミックに階層化することで人間の目に整然と見えるようということは、コンピュータにとっては冗長でしかないのですが、XMLの良さを語る上で非常に重要な要素です。ほとんどの技術者は新しい技術を書籍やWebで学習しますが、意味の分からない記号の羅列よりも、テキストで表示でき、タグがそのまま読めることは、理解の敷居を下げることにつながるからです。

 技術者不足という外的要因がシンプルなプロトコルの集合体であるインターネットを生んだと同時に、間接的にXMLの起爆剤になったという一面は見逃せないでしょう。



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