連載 XML雑記帳 (2)

XML地域紛争を読み解く

江島健太郎
インフォテリア株式会社の事業開発部に所属。B2Bの電子商取引を実現する手法としてのXMLの啓蒙活動と、事例の発掘にいそしむ。 電子ガジェットを大量に保有するサイバー魔人。 XML eXpert eXchangeフォーラムのガイドとして、記事の執筆や監修などを行う

江島健太郎
インフォテリア株式会社
2000/5/31

 XMLとその周辺技術は、すでに標準であるか、もしくは標準になることを目指しています。こうした標準化のプロセスでは、議論に参加する利害関係者の数が増えて収束のスピードが鈍化することはよくあることでしょう。今のXMLの世界でも、まさにその恐れていた事態が起こっていると言えます。

 例えばマイクロソフトのBizTalkとOASISのebXMLとの確執という、マスコミの大好きな構図の俗っぽい話はよく引き合いに出されますし、スキーマや名前空間といったより根源的な問題についても同様の対立と混乱が起きています。しかも困ったことに、これらが必ずしも単純な対立概念ではない、ということを理解できている人が非常に少ないという現実があります。

難易度が高い対立を抱えるXML

 XMLに限らず、標準化が進められている過程で複数の仕様が対立している場合でも、それぞれの仕様が複数のレイヤーをカバーしており、その一部がほかの仕様のあるレイヤーを侵食しているに過ぎない。そのため一方を全面的に肯定も否定もできない。という構造的な難しさを含んでいるケースがよく見受けられます。こんな場合は利害も複雑にからみ合い、「お互いの良いところを使う」という折衷案は、参加者の多い議論ではなかなかまとまりません。現在のXMLにまつわる各種の対立は、多くがこのような難易度の高い問題を抱えています。

 多くのIT関係者は標準の混乱やデファクトスタンダードの台頭などで、自ら選択し投資してきたいままでの技術が使われなくなることを恐れています。もちろん過去の投資が無に帰すことを恐れるのは当然のことで、「勝ち馬に乗りたい」という考え方を否定することはできません。

 しかし、XML自体はいずれにせよ次世代テクノロジーに必須の要素技術であり、もはや「XMLを学ばない、考慮しない」という選択肢はほとんど残されていないというのも事実。それでは、この混乱の中から何を読み取り、選択していけばいいのでしょうか?

 本連載では、今回からしばらく、こうしたXMLの世界で起きている混乱を、筆者なりの観点で整理してみようと思います。本稿が読者のXML導入の指針の一助となれば幸いです。

XMLは誰のものか?
文書系、データ系、Web系、eコマース系の綱引き

 すでに述べたように、XMLの世界にも標準の地位をめぐって数々の対立が見られます。しかしそれは、これまでのIT産業によくみられた「企業対企業」といった構図ではない新しい形の対立、「アプリケーション対アプリケーション」とでも言うべき新しい対立構造を持っています。このことを説明するために、軽くXMLの歴史を整理してみましょう。

 XMLはSGMLを起源としています。そして同じくSGMLから派生したHTMLがインターネットの普及とともにブレイクしたことにより、HTMLとSGMLの長所を併せ持ったものとしてXMLが登場しました。

 SGMLはドキュメンテーションのためのメタ言語で、仕様の面でもXMLとかなり似ています。誤解を恐れずに言えば、XMLはSGMLに2対8の法則(構成要素のうち2割の部分で8割の機能を満足するという法則)を当てはめ、スリムにしたものと言えます。HTMLはSGMLを応用して生まれた言語で、ボキャブラリが規定されています。つまり、SGMLにとってのHTMLは、XMLにとってのMathML(Mathematics Markup Language)やSVG(Scalable Vector Graphics)にあたるわけです。

XMLの出自はSGML

XMLの用途とデータの性格

 ちょっとややこしいですが、これらを芸術家の家系になぞらえてみましょう。SGML氏の作品の中で、傑作がHTMLで、SGML氏の直系の2代目がXML。XMLは、HTMLという親の傑作のいいところ(インターネット親和性)を英才教育で仕込まれており、SGML以上に画期的な作品を次々に世に送り出している。と、こういった感じと思っていただければよいと思います。つまり、SGML、HTML、XMLと並べた場合には、HTMLだけは特異な存在、つまり人ではなくて作品、ということになります。

 よってXMLは、その出自からして文書系(SGML)、Web系(HTML)の用途が原点にあります。そこに新たに加わってきたのが、データ系とeコマース系です。

 文書をいかに長期間保管可能なフォーマットとして保存し、パブリッシュするか、という観点で考えられてきたXMLの技術はいま、主としてeコマース系アプリケーションを実現するものとして注目されていることは、XMLの業界にいらっしゃる方なら感じておられると思います。eコマース市場は経済的インパクトがずば抜けて大きいという明確な理由があるので当然と言えば当然なのですが、これらの新規アプリケーションに関わる人々の発言力が増すにつれ、XMLに要求される仕様は当初の想定を超えてしまいました。そして、従来より文書系・Web系のアプリケーションの枠組みでXMLを活用しようと考えてきた人々にとっては、ただ煩雑で重いだけのデータ系、eコマース系向け仕様がXMLの周辺に増えてきていると感じているようです。

 つまり、ここに新たな対立構図が生まれているのです。

 続きはまた次回。



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