米国XML2000カンファレンス報告
Webソリューションの中心的な技術となったXML

岡部惠造
株式会社イー・ブリッジ 取締役コンサルティング本部長
2001/1/20

 20世紀最後の月、小生は日刊工業新聞社主催の「XML2000研究視察団」のコーディネーターとして約20名の団員とともに、米国で開催されたXMLのイベント、「XML2000カンファレンス」に参加しました。そこで本稿では、カンファレンスで入手したXML標準化やXMLソリューションの最新動向と、多彩な内容であったXML2000カンファレンスのキーノート・スピーチの内容について、日本のXMLer(*)の皆さんにご報告したいと思います。お茶でも飲みながら、気軽にお読みください。

* XMLソリューションに取り組むXML関係者をXMLer(エックスメラー)呼びます。

   日本のインフォテリアもカンファレンスのスポンサーに

筆者と、OASIS事務局長のローラ・ウォーカー女史

 今回のXML2000カンファレンスと展示会は、2000年12月3日から8日まで、米国ワシントンD.C.の目抜き通り、コネチカット・アベニューの北部に位置するマリオット・ワードマン・パーク・ホテル内のコンベンション・センターで開催されました。

 主催は、ご存知GCA(Graphic Communications Association)、共催がAIIM International(Association for Imaging and Information Management)、BizTalk(BizTalk Initiative)、DISA(Data Interchange Standards Association)、OASIS(The Organization for the Advancement of Structured Information Standards)、W3C、XML.COMなど多彩な面々で、スポンサーとしてIBM、Microsoft、Sun Microsystemsなどの大企業と並んで、日本のインフォテリアが名前を連ねていました。

 カンファレンスの参加者は1200名。展示会の参加者はベンダー説明員を含めて1500名、約84社が3カ所に分かれてXML製品の展示を行いました。セッションの講演者は計150人に及び、28のチュートリアルセッション、32のSpecial Interest Dayセッション、そしてカンファレンス自体は10のキーノートセッションと9つのトラックに分かれた、合計82のセッションから構成されるという、昨年に比べてさらに大規模なカンファレンスになっていました。以下、Special Interest Dayとカンファレンスのキーノート・スピーチを中心に報告していきます。何が議論されたかを見渡すだけで、XMLに関する現在のトピックスの全体像を見渡すことができるでしょう。

 まず、Special Interest Dayセッションからご紹介しましょう。

 今回のSpecial Interest Dayセッションは12月4日に開催され、前年から大きく拡張されて、7つのトラックで大変充実したセッションが繰り広げられました。各トラックは以下のとおりです。

  1. XML Implementer Day(XML実装者の日)
    OASISの事務局長 ローラ・ウォーカー女史(Laura Walker、Executive Director of OASIS)がトラックの議長を務めたXMLの利用技術に関するセッション群。XMLを活用したビジネス・ソリューションの実装の方法論について議論されました。

  2. XML Developer Day(XML開発者の日)
    XMLの生みの親と呼ばれるSun Microsystemsのジョン・ボサック氏(Jon Bosak、Distinguished Engineer of Sun Microsystems)がトラック議長を務めたXMLの標準の開発に関するトピックスを網羅したセッション群。私はこのセッションを中心に参加しましたので、そのセッション内容については以降に詳しく報告します。

  3. Enterprise Content Management Day(企業コンテンツ管理の日)
    AIIM Internationalが主催する企業のコンテンツ管理(ECM)でのXMLの役割りに関するセッション群。

  4. Web Syndication Using ICE and PRISM Day(ICEとPRISMによるWeb配信の日)
    デジタル・コンテンツの配信交換プロトコルICE(Information and Content Exchange)と、出版コンテンツ用のメタデータ標準PRISM(Publishing Requirements for Industry Standard Metadata)を使用したWebでのデジタル・コンテンツ配信に関するセッション群。

  5. XML Interoperability Day(XML相互運用性の日)
    各産業界でのXMLを使用したデータ標準化における相互運用性(インターオペラビリティ)の確保に関するセッション群。

  6. XML Topic Maps Day(XMLトピック・マップの日)
    このTopic Mapsとは、今回のXML2000で最もホットな話題の1つで、ナレッジマネジメント用のメタデータ標準です。元来SGMLとして標準化されていた仕様をXML化した、XML Topic Maps(XMT)の第1.0版が当日リリースされました。これは今回初めて知った標準であるが、今後最も注目したい標準の1つです。

  7. XML Inside the Beltway Day(XML政府・官庁の日)
    政府および官庁向けのXMLアプリケーションにフォーカスしたセッション群。ebXMLの紹介、XMLとEDIの議論、デジタル署名などの議論が行われていました。Beltwayとは、ワシントンD.C.とメリーランド、バージニア両州を囲む首都環状高速道路の名称で、この環状線の内部に米国政府の施設が集中していることから、Inside the Beltwayで米国政府および官庁を指しています。

 以上が、Special Interest Dayの全体像ですが、この中からXML Developer Dayについて詳しく報告します。これは、XMLを使用した技術標準の最新動向を集めた、ジョン・ボサック氏厳選のセッション群です。以下、主要なセッションについて紹介していきましょう。

   米国版「XML開発者の日」のセッション内容

  1. CommonXML : A Reliable Subset of XML1.0 and Namespace
    XML1.0はSGMLのサブセットですが、まだ仕様の範囲が大きすぎるために、XMLパーサやアプリケーション間でインターオペラビリティの確保が大変困難であるという現状への提案です。XML1.0のサブセットを切り出し、名前空間の機能を追加することで、真のインターネットオペラビリティを確保できるXML、つまりCommonXMLを開発していることを紹介するセッションでした。以前、Simple Markup Language(SML)というXML1.0の極端なサブセットの提案があり、これをW3Cが受け入れなかったことから、今回はより現実的な仕様を切り出したものであるといえます。CommonXMLのドラフト仕様書は、http://www.docuverse.com/smldev/commonxml.html から入手できます。

  2. Computational Model of RELAX Verifier
    ご存じ、日本IBM研究員の村田真氏による、RELAX(Regular Language Description for XML)の文法と実装モデルに関するデモを交えたセッションです。RELAXのトレードマークともなった招き猫のロゴ入りのスライドでさっそうとプレゼンする村田氏と、それを真剣に見ているボサック氏が大変印象的でした。セッション後、村田氏と立ち話をしましたが、W3CのXML Schema標準に対抗する形となったRELAXでは、仕様の開発もさることながら、実際に使える標準とするために、処理プロセッサの開発にも力を入れており、仲間とともにVisualBasicやJavaによる開発に積極的に取り組んでいるとのことでした。特に、名前空間に関する「RELAX Part2」では、仕様よりも先にすでに処理ソフトウェアが出来てしまったのですと笑っておられました。

  3. XML Schema Extension Mechanism
    前出のRELAXに対抗する(いやっ、RELAXが対抗しているのでした)、W3CのXML Schemaの属性とアプリケーション・コール情報に関する拡張の方法論のプレゼンテーション。ますます機能が大きくなるXML Schema標準。それが、RELAX開発の動機ともなっています。

  4. Where XML meets the Phone : VoiceXML
    インターネットと電話ネットワークを統合したTellMe Networksによる音声認識と音声合成を組み合わせた自然言語インターネットの実現に向けた技術言語 VoiceXML(VoiceXML Forum)の紹介と、実際の音声合成サービスを使った大変興味深いデモンストレーションが行われました。実際の音声サービスTellme Studioは、http://www.studio.tellme.comで聞くことができます。

  5. Web Service Registries and the jUDDI Open-Source Project
    Webサービスによるアプリケーション構築を目指すソフトウェア・ベンダーであるBowstreetの技術者による、UDDI(Universal Description, Discovery and Integration for Business on the Web)の紹介と、UDDIアクセス用のJavaによるオープンソース jUDDI(ジュッディと発音するらしい)が解説されました。jUDDIでは、クライアント側からUDDIディレクトリへアクセスするためのモジュールが先行して開発されているとのこと。UDDIの技術に関して、Bowstreet社の貢献は大きいようです。

  6. Modeling XML Schema with UML
    オンツージェニックス社によるUML(Unified Modeling Language)を使用してXML Schemaを開発するツールの紹介。このツールはebXMLプロジェクトにて利用されているようですが、なんとUDDI仕様を例にデモしていました。詳細は、http://xmlmodeling.com/portal/にて。

  7. Second Generation Discovery Process for B2B Using XTM (Topic Maps) Syntax
    UDDIやebXMLで開発中のリポジトリに登録されたWebサービスを検索する際に、Topic Maps標準が必要になるということをもとにした、XMTの紹介セッション。Topic Mapsに関する詳細情報と仕様書1.0は、http://www.topicmaps.org/にて入手できます。

   「マッピングとバインディング」が今後のチャレンジ

 さて、Special Interest Dayの翌日、12月5日に、いよいよXML2000カンファレンスがスタートしました。その初日の一連のキーノートセッションを紹介しましょう。毎年、初日のキーノートは、ゲスト・スピーカーによるプレゼンテーションと、標準化組織の最新動向に分かれています。

 まずゲスト・スピーカーのプレゼンテーションから紹介していきましょう、フランク・ギルバーン氏(Frank Gilbane、Bluebill Advisors, Inc.の社長)による講演は、「Why XML is/will be everywhere Part2」と題したもの。

 彼は懐かしい人物です。フランクは、ドキュメント管理業界のコンサルタント、ギルバーン・レポートの発行者、そしてドキュメント管理カンファレンス&展示会「Documation」の主宰者として、業界の尊敬を集めています。講演の「Part1」は、SGML時代に彼が行った今日の時代を予測したプレゼンを指しているという仕掛け。「Part2」のこのプレゼンでは、XMLがさまざまなアプリケーションで活用される理由を解説し、市場規模を予測し、そしてXMLが生み出すソリューションについて解説した後、XMLのこれからの2つの大きなチャレンジを、マッピングとバインディングと定義しました。

 マッピングは、この世の多様なデータフォーマットとXML文書の柔軟な変換を実現すること、そしてバインディングは、XML文書を使用して企業や企業システム間をルーズに結合することです。RosettaNet、OASIS、BizTalk、そしてebXMLといった業界コンソーシアムがこの課題を完全に解決できるかと自ら問い、答えは「ノー」だが、それらの活動は重要であるとしました。

 最後に、「どのように、いつバインドするか?」「どのように、何とマッピングするか」が、これからのキー・チャレンジであるとして講演を結びました。なるほどとあいづちを打ちながら聞いてしまった深いプレゼンテーションでした。さすがフランク・ギルバーンだと感心。

 ロイターのニック・フルトン博士(Dr. Nic Fulton , Chief Technology Strategist, Reuters)による講演は、「The Industrialization of knowledge」です。

 博士のキーノートは、1900年代前半の急激な産業化で起きたリアル世界のさまざまな事象を、ちょうどいま、インターネットというバーチャルな世界で起きていることと対比させながら考察し、業界ごとのXML言語の標準化という作業を通して、産業界の知識のコンテナ化(XMLデータとして蓄えられていくという意味)が起きていると解説しました。そして新聞業界のNewsMLを例に挙げ、それは単なるニュース記事のプレゼンテーション用の言語ではなく、生のニュース記事をフィルタリングし、パッケージングし、そしてWeb/TV/新聞といったメディアで露出しながら、データベースに蓄積されていく、まさにIndustrialization of Knowledge(知識の産業化)を実践しているのだと結びました。

 ケン・レヴィ氏(Ken Levy、Director of Technology, XML Fund, LLC)による講演は、「XML Fund」。

 XML Fund, LLCは、XMLをベースとした技術を開発するアーリー・ステージのベンチャー企業に投資するベンチャー・キャピタルで、1999年11月に、データチャネル社のデイブ・プール氏が設立しました。XML Fundは、XML技術の発展ロードマップを開発し、そのマップに沿った技術を開発する企業に投資を行っています。投資対象の技術として、UDDI、メッセージ・キュー、非同期通信、PtoPサーバ通信、パーソナライゼーション・データと表示フォーマット、そしてXML開発ツールを挙げていました。中でも、優秀なXSLTの開発ツールには、ぜひ投資したいと述べていました。

 ゲスト講演者は以上で、続いて元SoftQuadの社長で、SGMLの普及啓蒙に多大の貢献をしたユーリ・ラビンスキー氏(Yuri Rubinsky)を追悼するビデオセッションがありました。1996年の1月のXML W/Gの設立の6カ月前に氏は亡くなりましたが、彼のビジョンと精神、そして彼が起こしたダブリン・コアから、OASIS(旧SGML Open)、そして世界で最初のXML Webブラウザの開発などの多くのプロジェクトで、業界に命を注ぎ込み続けました。氏はいまでも多くのSGML/XML関係者の尊敬を集め、懐かしく思い出される人物なのです。この短いビデオの中で、ジョン・ボサック氏をはじめとする多くのXML関係者がユーリの思い出を語り、彼なくしてXMLがこの世に誕生することはなかったと、次々にその好奇心にあふれた人柄と功績をたたえていました。

 続いて、Web Standards Updateと題して、5つのXMLに取り組む標準化組織の近況報告がありました。それを、簡単にお話しして報告を終わりたいと思います。

  1. W3C Update - XML-Related Activities at the World Wide Web Consortium
     XML1.0勧告のエディタの1人であり、現在、XML Schema W/Gの議長、マイケル・スパーバーグ・マックイーン氏(C. Michael Sperberg-McQueen)によって、W3CのXML関連標準の近況が報告されました。彼によって紹介された活動は、SOAP(Simple Object Access Protocol)の標準化を行っているXML Protocol W/G(これは別にXML-RPCとも呼ばれているようです。)、XML InfosetとXincludeを含むXML1.0第2版、XML Base、長引いているXML Schema、XLink、XSLといった標準化でした。特に目新しい発表はありませんでした。

  2. ISO(The International Organization for Standardizations) Update - International Standards for Document Description and Processing
     ISOが登場してびっくりしました。ISO/IEC JTCI/SC34の議長 ジェームズ・デイビッド・メイソン氏が、ISOのXML関連の標準化活動について報告しました。前述したXML2000の売り物、Topic MapsはISOの標準なのです。さらに、ジェームズ氏は、村田さんのRELAXをISOのFirst-Track Processで、ISO-TRとして標準化すると言明しました。

  3. OASIS Update - Interoperability、Conformance and Standards for Structured Information
     OASISのカール・ベスト氏が、OASISの最新の活動を報告しました。OASIS活動の中心ともいえるインターオペラビリティとコンフォーマンス・テストの活動では、XMLパーサをはじめ、XML Schema、XSLT/XPath、DOC/SAXと活動対象を広げています。技術委員会活動としては、スキーマ関連で、DocBook 4.0XML標準、DSML(Directory Services Markup Language)、顧客情報品質、セキュリティ・サービスの各委員会、インターオペラビリティでは、レジストリ/リポジトリ、Entity Resolutionがあります。そのほかの活動では、CGM(Computer Graphic Metafile) OpenとebXML(Electronic Business XML Initiative)を紹介していました。

  4. DISA Standards Update
    紹介されたDISAのXML関連プロジェクトは以下のとおりです。
    − 2000年10月にリリースされたX.12 EDI標準のXML版。これは、ebXML準拠。
    −HIPAA(Health Insurance Portability and Accountability):保険業界のEDI標準で、患者記録データの記述にXMLを使用しているとのこと。
    −Open Travel Alliance:旅行業界の、XMLを使用した業界データの標準化。ebXML準拠。
    −Interactive Finance Exchange(IFX):インターネット・バンキング用データの標準化。
    −Mortgage Industry:住宅融資トランザクションのXML化。
    −Open Philanthropy Exchange(OPX):慈善活動の寄付情報のデータ交換の標準化。
    −Hotel Electronic Distribution Net(HEDNA):ホテル客室情報データの標準化。
    -−従来からのXML/EDIグループ

  5. IDEAlliance Standards Update
    IDEAlliance(International Digital Enterprise Alliance)はGCAの技術研究開発機関で、そのXMLに関する活動は、ICE、PRISM、CPEXchange(Customer Profile Exchange)(顧客情報のメタデータ標準)などです。新しい活動として、前述したXTM (XML Topic Maps)の標準化および推進啓蒙はIDEAllianceのプロジェクトとして実施されます。

 以上、XML2000のトピックスについて報告しました。最後に、展示会における約6割の展示がコンテンツ管理を含めたパブリッシング系であったことを報告して、私のXML2000の参加報告を終わります。長いことお付き合いいただき、お疲れさまでした。

 



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