特集:XMLビジネスプロトコル 〜 第4部
eマーケットプレイスのための標準言語「xCBL」

新野淳一
@IT編集局
2002/4/10


 xCBL(XML Common Business Library)は、主にeマーケットプレイスで利用されるXMLベースのBtoB用ビジネス言語である(xCBLは、実際にはトランスポート層の定義がないため、ビジネスプロトコルというよりもビジネス言語と表現した方が正確だ)。eマーケットプレイスには、製品を供給するサプライヤと、製品を購入するバイヤーの両方が関係するが、xCBLはサプライヤ、バイヤー双方の機能をすべてサポートする。今回は、このxCBLについて解説する。

xCBLはeマーケットプレイスベンダによって作成された言語

米コマースワンのホームページ
eマーケットプレイス製品の大手ベンダとしてxCBL対応の製品を提供する。日本法人コマースワン株式会社もある

 xCBLは、コンソーシアムや標準化団体によって策定された仕様ではない。xCBLの原型であるCBLは、1997年に米Veo Systemsによって、当時の米商務省がかかわったXMLによるeコマース実現の可能性などに関する研究プロジェクトの中で開発された。その後Veo Systemsは、1999年にeマーケットプレイスベンダである米コマースワンに買収される。そして、コマースワンの製品にxCBLが採用されて広まり、標準の座を獲得していった。このように特定のベンダによって策定され標準として広まった点が、ebXMLやRosettaNetと異なるxCBLの特徴の1つだといっていいだろう。

 ちなみに、米コマースワンは1994年の設立当初、DistriVisionという名称の、CD-Rを用いた電子カタログのディストリビュータだった。そのときのノウハウをインターネットに生かしてeマーケットプレイス市場に参入、1997年には名称を現在のコマースワンに変更。1999年にはNASDAQで株式公開を実現した。自動車業界のeマーケットプレイスであるCovisint、航空業界のExostarなど、大規模なeマーケットプレイス構築に採用されるソフトウェアの開発元であると同時に、自社でeマーケットプレイス「Commerce One.net」の運営も手掛けている。

xCBL.orgのホームページ
xCBLの情報はここから入手できる。本記事のxCBLの解説も、ここからダウンロードした資料を参考にした

独自サイトで情報公開を行う

 現在xCBLはxCBL.orgという独立したサイトで情報を公開しており、ここでxCBLのあらゆる情報が手に入る。xCBLの仕様はだれでも無料で自由に利用でき、しかも改変して利用することも構わない。つまり、技術的にはxCBLに対応したeコマースソフトウェアや、eマーケットプレイスへのコネクタなどを自力で開発することができるわけだ。

 もちろん、xCBLの仕様を基に独自開発せずとも、コマースワンからパッケージソフトとしてxCBLに対応したeマーケットプレイス構築用のソフトウェアやコネクタを購入することができる。同社のソフトウェア販売のことを考えると、xCBLの技術情報を公開する必要はあまりないようにも思えるが、コマースワンにとっては、xCBLの利用が広まり、幅広い分野で使われるほど、自社製品のマーケットも広がっていくことになる。そのため、積極的にxCBLを中立な立場に置き、広めようとしている。

 xCBL.orgは現在、米コマースワンはもちろん、米マイクロソフト、米コンパック、独SAPなど数社からの支持や支援を受け、またxCBLユーザーコミュニティなども交えた活動をしており、パブリックでオープンな標準という位置付けが強調されている(xCBLの仕様がオープンな理由として、開発当初に商務省がかかわった結果、税金を利用して開発された成果物、つまり米国民の財産としてxCBLの仕様公開が義務づけられている可能性がある。が、この点を確認することはできなかった)。

xCBLのアーキテクチャ

 xCBLを理解するには、まず先にeマーケットプレイスの仕組みを理解してもらった方が早いだろう。下図では、eマーケットプレイスで行われるトランザクションの流れを概説している。

eマーケットプレイスで行われるトランザクション (資料提供:コマースワン株式会社)

 xCBLは、このeマーケットプレイスで発生するトランザクションのうち、カタログ情報の配信から始まって、在庫、価格チェック、注文、そして最後の請求までの企業間のXML文書のやりとりをカバーする。こうしたやりとりに使われる一連のXML文書のボキャブラリと文書型が、xCBLによって定義されているわけだ。

 前述したように、xCBLの原型であるCBLは1997年に、EDI技術をベースにして開発された。2002年3月現在のxCBLの最新バージョンは、2001年10月に発行された「xCBL 3.5」である。xCBL.orgの情報によると、3.5以前のバージョンと比較して、9つの新しい文書型が追加された。これらの文書型の一部は、ERPなどとの緊密な連係を可能にするものなどが含まれているという。

 一方でxCBLでは、こうしたXML文書をどのような通信プロトコルで送受信するか、といったトランスポート層の部分は決められていない。その部分はコマースワンが提供するソフトウェア製品の実装によって決められている。ちなみにコマースワンの製品のトランスポートでは、HTTPS、プロセスソフトウェアのSonicMQなどに対応している。さらにMIMEフォーマットを用いて、製品画像や添付情報なども送受信できる。つまり冒頭で触れたように、xCBLは厳密には「ビジネスプロトコル」と呼ぶよりも「eマーケットプレイスのために標準化されたビジネス文書の定義」と表現した方が正しいといえる。

 xCBLのもう1つの特徴は、文書定義をDTD以外のスキーマ言語でも積極的に提供している点だ。xCBL.orgからは、SOX、XSDL、XDRなどのスキーマ言語によって定義されたxCBL仕様が入手できる。また今後は、XML Schemaによる文書定義も行われるとされている。また、詳細なオンラインマニュアル、EDI標準の1つであるX12に対するマッピング仕様など、仕様を理解するに十分な情報の入手が可能だ。

xCBLで定義している内容

 では、xCBLで定義しているXML文書の内容を見ていこう。

 まず、xCBLのボキャブラリでは、日付、時間、カントリーコード、通貨など、国際的な取引に必要な用語は一通り定義されている。ただし、RosettaNetのようにすべての企業にID番号を付けて一意に表現するといったことはしておらず、基本的に国や企業名によって企業はユニークに表現できるという前提になっている。製品名についても同様だ。

 取引モデルとして、eマーケットプレイスを挟んで、製品やサービスを提供するセラー/サプライヤ(販売側)と、バイヤー(購入側)が取引を行うスタイルのほか、バイヤーとセラーが直接相対するモデルにも対応する。また、xCBLを利用したeマーケットプレイスは、自動車や航空機といった製造業、文房具などの小売りやさまざまなサービスまで、間接材、直接材の多種多様な業界や製品の取引に利用される。しかし、基本的にはインターオペラビリティを維持するために、そうしたマーケットごとのxCBLの拡張は行っていない。それでも、xCBLはさまざまな業種に対応した実績があるということは、それだけ柔軟性があるように設計されているということだろう。

 xCBLは、定義している文書を大きく何種類かに分類している。下記は、その大分類のそれぞれの役割について、簡単にまとめてみた。これを見れば、xCBLがどんな機能を提供するのか、概要が理解できるだろう。

オークション(Auction)
eマーケットプレイス上での、オークションの作成、開始、結果報告。
アベイラビリティ(Availability)
購入可能かどうかの問い合わせと返答。
カタログ・コンテント(Catalog Content)
製品名や製品内容、価格などのカタログ情報の交換。
メッセージ・マネジメント(Message Management)
メッセージ送受信の確認。
インボイス&ペイメント(Invoicing and Payment)
納品書、請求書、支払い確認。
マテリアル・マネジメント(Material Management)
出荷予定や出荷状況の情報交換。
オーダーマネジメント(Order Management)
受発注管理、受発注の内容変更、受発注状況などの情報交換。
見積もり依頼・見積もり(RFQ/Quote)
見積もり依頼と見積もりのための情報交換。
ソーシング・ドキュメント(Sourcing Documents)
eマーケットプレイス上の製品調達アプリケーションが、調達先を探す際などの情報交換。
統計・予測(Statistics and Forecasting)
アプリケーションによる統計情報処理のための情報交換。
同期確認(Synchronous Checks)
販売価格や在庫状況などの確認。
取引パートナー(Trading Partner Documents)
取引先一覧や取引内容などの情報更新など。

 eマーケットプレイスが提供する機能全体から見ると、実はxCBLでカバーできていない分野がいくつかある。例えば、自分の取引条件に合わせて取引相手を探す機能や、探した相手との取引契約の締結といった機能はxCBLでは実現できない。また、詳細な製品情報や最新の製品情報を、取引相手からeマーケットプレイスを経由せずにカタログ情報として提供してもらう機能などもxCBLにはない。また、課金管理などもないようだ。

 ただし、こうしたxCBLにない機能は、eマーケットプレイス独自で実装したり、コマースワンが提供する製品の機能として備わっており、eマーケットプレイスを構築したり、利用したりする立場から見れば、コマースワンやeマーケットプレイス、もしくはサードパーティが提供する製品のソリューションとして提供されているわけで、製品とxCBL仕様がお互いに不足分を補完していると考えられる。

xCBLとeマーケットプレイスの将来

 ここしばらく、いくつかのeマーケットプレイスがビジネスとして失敗するなど、eマーケットプレイスの評判があまりよくない。xCBLの培地ともいえるeマーケットというビジネスモデルは今後どうなっていくのだろうか? コマースワン日本法人のマーケティングコミュニケーションズ マネージャーの湊谷敦子氏によると、ITバブル期に乱造されたいくつかのeマーケットプレイスが失敗したにすぎず、現にCovisintExostarPantelloseScoutなど、主要なeマーケットプレイスは引き続き活発な取引をしているという。「eマーケットプレイスは、オークション、見積もり依頼(RFQ)、トランザクション管理、ドキュメントルーティング、オークションなど、企業コラボレーションのためのプラットフォームを提供している」(コマースワン 湊谷氏)と、eマーケットプレイス自身の価値も評価されているという。

 一方で、eマーケットプレイスはサプライヤが価格で比較される要素が強く、サプライヤはいつも価格競争に引き込まれて疲弊し、eマーケットプレイスから去ってしまう可能性がある、という意見もある。確かに規格化された汎用品についてはそういう傾向もあるだろう。しかし調達元から見ればそうした競争はもっと歓迎されるべきともいえるし、その流れでは、汎用品の調達などはバイヤーが市場からの低価格化の圧力を受けて、どんどんeマーケットプレイスやオークションサイトでの調達を活発化させる方向にもある。

xCBLから新たな言語が生まれる

 筆者としては、月並みな意見だがeマーケットプレイスのモデルと、取引相手と直接BtoBでやりとりする両方のBtoBのモデルは、うまくすみ分けていくものと思われる。例えば、規格化されている汎用品の調達などは、eマーケットプレイスになじみやすいだろう。一方で、特定の製品などにカスタマイズされた特殊製品や付加価値の高い製品、取引相手との十分な打ち合わせや契約などが必要な場合は、直接取引によるBtoBで行う、という具合だ。

 xCBLで注目したいのは、多種多様な製品を扱うeマーケットプレイスの機能を1種類の言語で支えるその柔軟性だ。現在、あらゆる業種のBtoBをカバーする業界横断的/汎用のビジネス言語は事実上存在せず、いくつかのプロジェクトが、この汎用ビジネス言語の座を獲得すべく努力を重ねている。xCBLの業界横断的な利用のされ方は、こうした汎用言語の座に近く、有望だ。今後xCBLがさらに進化して、eマーケットプレイスという枠を超えた利用のされ方が始まったり、もしくはオープンなxCBLの情報公開から生まれたUBLなどの新しい言語が、さらにビジネス言語の世界の進歩を促進するのではないだろうか。

(取材協力:コマースワン株式会社)

 

Index
XMLビジネスプロトコル
  第1部〜BtoBを支える「ビジネスプロトコル」の全貌
・ビジネスプロトコルは複数レイヤを包括する
・なぜビジネスプロトコルが必要なのか?
・ビジネスプロトコルの大統一に向けて
  第2部〜ターゲットを絞ることで成功したRosettaNet
・IT業界のBtoBに、関連業界が参加して発展
・PIPsで文書構造とワークフローを定義
・さらに領域を広げるRosettaNet
  第3部〜BtoBの理想を目指したebXML
・ebXMLのアーキテクチャ
・CPP/CPAをパートナーとやりとりする
・ebXMLで仕様として決まったこと、決まらなかったこと
第4部〜eマーケットプレイスの標準言語xCBL
・xCBLはeマーケットプレイスベンダによって作成された
・xCBLのアーキテクチャ
・xCBLとeマーケットプレイスの将来


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