米国ではWebサービスの活用が始まっている!
Webサービスのビジネス活用と
相互運用性への取り組み


Webサービスをビジネスで活用するための取り組みが進んでいる。米国では、将来さまざまな企業が独自のWebサービスを公開して利用し合うことをにらみ、相互運用性を前提とした実証実験が盛んだ。米国の状況に詳しい筆者が現状をレポートする。(編集局)

岡部惠造
XMLコンソーシアム エバンジェリスト Webサービス推進委員会 委員長
株式会社イー・ブリッジ
2002/10/9


Webサービスは既にコモディティ化した技術だ!

 「米国では、Webサービスは既にコモディティ化した技術だ!」とは、XML海外調査団で訪問した米国のWebサービス・ベンチャー企業 ボウストリート社のテクニカル・マーケティング担当者から聞いた言葉だ。しかし、ここでいう「Webサービス」とは、まだXML、SOAP、WSDLを使用した単純な異種アプリケーション連係の仕掛けを指しており、Webサービスの最終ビジョンである、UDDIなどのビジネス・レジストリを利用してWebサービスを流通させてダイナミックな企業アプリケーションを構築する大掛かりな仕組みを指してはいない。

 確かに、米国では、Webサービスの基礎レベルでのアプリケーション連係、つまりイントラネットでのフロントWebアプリケーションとバックエンド・アプリケーション間の連係といったような場面で、Webサービスの活用がかなり始まっている。企業内で稼働しているさまざまなベンダーから購入した異なるプラットフォーム、異なる言語で開発されたアプリケーション同士を、安価にスピーディーに接続する際に、Webサービスは、ベンダ共通のアプリケーション連係用のプロトコルとして大いに役に立ち始めているようだ。米国のソフトウェア・ベンダも、あらゆる種類のWeb関連ソフトウェアに、この基礎レベルのWebサービスによるアプリケーション連係機能を搭載し始め、ツールのWebサービス対応を歌っている。

本格的なWebサービスの流通は?

 一方、一部の大手ベンダによってインターネット上で運営されているUDDIレジストリには、ほとんど利用されていないサービスが実験的に登録され、Webサービスに対応している大方のミドルウェア・ベンダやシステム・インテグレータは、今のところ、このビジネス・レジストリの活用にまったくといってよいほど取り組んでいない。せいぜいツール内部でWSDLなどのWebサービス定義データを格納するレジストリのアクセス・インターフェイスを、UDDI仕様を使用して作り込んでいる程度だ。

 この本格的なWebサービスが普及するためには、企業アプリケーションを分散アプリケーションとして構築するために必須のセキュリティ技術や、サービスを統合するオーケストレーション技術の標準化が完了する必要がある。特に、Webサービスのセキュリティ技術の標準化は、Webサービス普及の鍵を握るテクノロジーとして最重要視されており、現在W3CとOASISの共同作業で集中的な標準化活動と普及啓蒙が行われている。

 こうした米国でのWebサービス活用の現状や取り組み全体を見渡してみて分かることは、インターネットそのものの活用がそうであったように、Webサービスも、図1に示すような順番で、イントラネット統合技術からインターネットでの公開サービスの流通へと発展していくだろうということである。調査会社ガートナーなどもそのように予測している。

図1 予想されるWebサービスが発展の順番

最も重要なのはインターオペラビリティ

 さて、Webサービスの目的は、ベンダに依存しない分散アプリケーション構築技術であるが、ここで最も重要なのは、ベンダ非依存のプロトコル・スタックの標準化と、それを実装するベンダ・ツール間のインターオペラビリティ(相互運用性)の確保だ。図2に、Webサービスを構成するために使用されるXMLベースのプロトコル・スタックの標準候補を示す。

 この図は、IT各社が提案している有力なプロトコル・スタック標準候補を、スタックの役割別に積み上げてWebサービス標準の全体像を描いたものだ。米国のSOAP Buildersと呼ばれる草の根のWebサービス・インターオペラビリティ・テスト・グループのInterop Roadmapの資料をベースに、私が最新の提案を付け加えて、加工したものである。

図2 Webサービスを構成するプロトコル・スタック(クリックで拡大します)
原典: Soap Builders Interop Roadmapを基に筆者が最新情報などを付け加えた

 これらのスタックの中で最近の話題は、マイクロソフト、IBM、ベリサインが提案し、OASISに提出されたWebサービスのセキュリティ技術であるWS-Securityと、マイクロソフト、IBM、BEA システムズが提案したWebサービス統合言語であるBPEL4WS、WS-Coordination、WS-Transaction、そしてサン・マイクロシステムズなどが提案したWebサービス統合インタフェース WSCI(Web Services choreography Interface)の行く末であろう。

 本稿では、これらの標準を1つ1つ解説することが目的ではないので、解説は稿を改めたいが、この図を見て沸き上がる疑問は、これらの標準のどれをどのように組み合わせたものが、Webサービスなのかということである。現在は、この図の低位レベルのSOAPとWSDLが利用されているに過ぎない。そして、インターネット上に広く分散したサービスをビルディング・ブロックとして、ダイナミックにアプリケーションを構築するという本来のWebサービス・ビジョンを実現するためには、これらの標準を組み合わせ、それにプロファイル名を与えてWebサービスを定義し、インターオペラビリティ検証テストを行う必要がある。このベンダー非依存を実現するインターオペラビリティ確保の活動には、IT業界のコンソーシアムによるフォーマルな活動と、草の根(grass-roots)の活動がある。以下、それぞれの活動を紹介する。

ベンダー協業によるインターオペラビリティ確保の活動

 WS-I(Web Services Interoperability Organization)と呼ばれる組織がある。2002年の2月にマイクロソフト、IBM、インテル、オラクル、富士通など9社がコア・メンバーとなって設立された、Webサービスのインターオペラビリティを確立することを目的としたIT業界の業界コンソーシアムである。現在、会員数は、110社を越え、Webサービスの実現に向けた大きな期待を担っている組織である。このWS-Iの活動を以下に列挙してみる。

(1) Webサービス・ロードマップを含むガイドライン開発(図2のような)
(2) Webサービス・プロファイルの開発
(3) オープンソース・ツールの検証及び開発
(4) サンプル・アプリケーションをベースに、インターオペラビリティ検証テストを実施
(5) テストで現れたインターオペラビリティを阻害する副作用を標準化団体にフィードバック

 WS-I内で最初に提案されているWebサービス・プロファイルは、XML Schema 1.0、SOAP1.1、WSDL1.1、UDDI1.0を利用する「WS-I ベーシックWebサービス」と呼ばれるプロファイルである。今後、BtoB電子商取引用といったいくつかのWebサービス・プロファイルが定義されて、各社のWebサービス・ツール間でのIT業界を上げたフォーマルなインターオペラビリティ検証テストが展開されていく予定だ。

早い時期の草の根インターオペラビリティ・テスト

 Webサービスのインターオペラビリティ確保の活動には、WS-Iのようなフォーマルな業界コンソーシアムの設立よりずっと早い時期に、草の根のテスト活動があった。前述のSOAP Buildersである。Webサービスのインターオペラビリティ・テストの最初の動きは、2001年1月27日にYahoo! Groupサイトに開設されたオープンなSOAP Builders ニュースグループ上で始まった。IT各社のSOAP開発者が、このニュースグループでSOAPに関する情報を交換し議論すると共に、インターオペラビリティ・テストを個別に行っている中、後述するXMethods社のTony Hong氏が、ベンダ結集によるインターオペラビリティ・テストを提案したのだ。それは、2001年1月31日のことであった。

 インターネット上の共通メッセージ交換プロトコルであり、さらに標準トランスポートを利用したリモート・プロシジャ・コールとしてのSOAPのインターオペラビリティに、こうした早い時期に着目してテストを提案したのである。この提案の結果として、その後ノースカロライナ州ラーレイのIBMオフィスに約20社が結集して、ROUND Iと名付けられたSOAPのインターオペラビリティ・テストのイベントが開催された。その後、このテストは、ラスベガスで開催された2001年のNetWorld+Interopにてデモされた。

 このROUND Iに引き続いて、ニュースグループではさらなるインターオペラビリティ・テストの議論が高まり、SOAPヘッダと複雑なレベルのエンコーディングに関するROUND IIテストがオンラインで行われた。さらに、2002年2月には、ボストン郊外のアイオナ社オフィスに17社が集まり、WSDLの利用にフォーカスしたROUND IIIテストを行った。このときの各社の代表がテストに取り組む模様の写真が、WHITE MESA SOFTWAREのWebサイトに掲載されている。

 2002年6月には、カリフォルニア州サンノゼのIBMオフィスにてROUND IVのFace-to-Face会議が実施され、現在、ニュースグループ上では、2002年の10月に開催を予定しているROUND Vに関する議論が展開されている。

Webサービス実証仮想ラボ

 こうしたSOAP Buildersの活動に加えて、インターネット上には、Webサービスによる分散アプリケーション構築を実証するための仮想ラボの役割を狙ったWebサイトがいくつか存在している。その代表的なサイトを2つ紹介する。1つは、前述のSOAP Buildersの集合テスト開催のきっかけの提案を行ったTony Hong氏とJames Hong氏が創設したカリフォルニア州サンノゼに本拠を置くXMethodsであり、もう1つは、英国サウス・ウェールズに本拠を置くインターネット・システム開発会社Lucin社のシニア・アナリストMichael Clark氏が主宰するSalcentralである。両サイトとも、数多くのWebサービスと、それらを統合してアプリケーションを開発するための各社のツールと事例を掲載している。

XMethodsのWebサイト。インターネット上で利用可能なWebサービスのリストが公開されている

 XMethodsサイトは、Webサービスの開発、設置、利用を容易にするサービスを通して、Webサービス・ネットワークの開発者のための仮想ラボラトリの役割を演じている。利用可能な多くのWebサービスを公開し、Webサービスの技術が適用される新しいアプリケーション構築方法のショーケースを示すことを目的としている。さらに、XSpaceと呼ばれる、SOAPあるいはXML-RPCでアクセス可能なデータベース・サービスを提供している。

 もう一方のSalcentralは、UDDIと同じコンセプトのWebサービスの流通サービスで、「WebサービスのNapster」を標榜している。確かに、Webサービスは、音楽ファイルの交換の代わりにSOAPによる接続を提供すると考えれば、SalcentralがWebサービス流通サービスとしてNapsterサーバの役割を担っているともいえる。つまり、Salcentralは、WSDLとSOAPによるWebサービス探索エンジンとして機能し、近々、UDDI仕様でWebサービスを検索できる機能を追加する予定だ。さらに、指定したWebサービスを監視し、それに変更が加えられたときに利用先に連絡する「WebサービスWatchサービス」を提供している。

sacentralのWebページ。UDDIのように、Webサービスを検索できる

 両サイトに掲載されているWebサービスは多種多様に渡り、IT企業の開発者が開発したものや、サイト運営者が開発したものなどが数多くある。使用料にも、有料と無料のものがある。これらのサイトには、Webサービスにアクセスするためのインターフェイス、IT各社が提供しているSOAPモジュールやWebサービス開発ツール、それらを使用した実装事例なども数多く掲載されている。本稿冒頭に、米国では既にWebサービスの活用が始まっていると述べたが、米国のソリューション・プロバイダやシステム・インテグレータは、こうしたWebサービス仮想ラボ・サイトで、Webサービスを活用したアプリケーション連係の情報や各社のツールの情報を交換し、実際に掲載されているWebサービスを使用してサンプル・アプリケーションを構築して評価し、Webサービス活用の実際を身に付けているのである。また、IT業界各社は、こうしたサイトに情報を提供することで、各社間の実質的なインターオペラビリティ・テストを実現しているのである。

日本での活動は、どうなっているのか?

 日本には、残念ながら上記のような仮想ラボ的な役割を提供しているWebサイトは存在しない。しかし、Webサービスのインターオペラビリティに着目して活動している組織はある。日本におけるXMLとWebサービスの推進啓蒙を目標に、日本のIT業界の250社のITベンダーとそのユーザ企業が参加する非営利会員制組織であるXMLコンソーシアムのWebサービス推進委員会である。この委員会傘下にある技術小委員会は、Webサービスのインターオペラビリティの確保を活動目標の1つに掲げている。さらに、IT業界の分散オブジェクト技術の推進啓蒙グループである「分散オブジェクト推進協議会(DOPG)」が、この9月にWebサービス接続検証のオープンハウス実験を開始し、SOAPを初めとするWebサービス技術のインターオペラビリティ検証に取り組んでいる。両組織は、今後協力して日本におけるWebサービスのインターオペラビリティ検証テストを行っていく予定だ。

 さて、本稿での私のWebサービスのインターオペラビリティに関する情報は、ここまでである。引き続いてXMLコンソーシアムのWebサービス推進委員会で活動を共にしているIBMの武用さんに、XMLコンソーシアムの活動を紹介していただこう。

XMLコンソーシアム連続コラム(全2回)

 ・ Webサービスのビジネス活用と 相互運用性への取り組み(岡部惠造氏)
 ・ 国内でのWebサービスの利用はどれだけ進んでいるか?(武用佳哲氏)

XMLコンソーシアムがWebサービスの事例を募集中
XMLコンソーシアムでは、Webサービスの普及、推進の一環としてWebサービスの事例を募集しています。Webサービスの開発者や利用者の参考にしてもらうために、お寄せいただいた事例はXMLコンソーシアムのホームページで公開されます。皆さまの事例の応募をお待ちしています。詳しくは、XMLコンソーシアムの事例募集案内のページを参照してください。(XMLコンソーシアム Webサービス推進委員会)


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