特集:「XML 1.1」を分析する

XML 1.1とは何か? 答えなき迷走の果て
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川俣 晶
株式会社ピーデー
2004/4/27

利用者から見たXML 1.1

主な内容
XML 1.1が勧告されたが……
XML 1.1は1.0とどこが違うのか
XML 1.1が生まれるまでの経緯
XML 1.1とほかの標準とのかかわり
利用者から見たXML 1.1
答えなき迷走の果て

 さて、ここまでXML 1.1に関する話題を見てきたが、実際にXML 1.1を使おうという話はほとんど聞かれない。それよりも、本当に使われるのだろうか、普及するのだろうか、という懐疑的な声ばかりが聞こえる。通常、新しい技術に懐疑的な声が多くても、最終的に普及することが多いのだが、XML 1.1の場合は少々事情が異なる。それは、たとえXML 1.1を使う人たちが出てきても、そのことがほかの人たちまでXML 1.1を使わねばならない理由につながらないためである。例えば、XML 1.1勧告には以下のような文書が見える。

5.1 Validating and Non-Validating Processors

Programs which generate XML SHOULD generate XML 1.0, unless one of the specific features of XML 1.1 is required.
(一部抜粋)

 大ざっぱに訳すと、

XMLを生成するプログラムは、特定のXML 1.1の機能が必要とされない限り、XML 1.0を生成することが望ましい

ということになる。つまり、XML 1.1という勧告があるとしても、XML 1.1にしか存在しない機能を使っていないXML文書は、XML 1.0のXML文書として生成されることが、望ましい(SHOULD)とされている。では、XML 1.1にしか存在しない機能を使うことは、どれぐらいあるだろうか。

 名前文字の拡大は、英語や日本語での利用には、ほとんど影響を与えないだろう。XML 1.0勧告では未対応の文字を使う言語の利用者には関係があるかもしれないが、それも要素や属性の名前にその文字を使う場合に限られる。それらの名前を英語で表記するなら、XML 1.1を使わねばならない理由にはならない。

 追加された制御文字については、そもそも文書に制御文字を書き込むケースはまれであるため、通常のXML文書で必要とされるケースはほとんどないと思われる。

 追加された改行文字は、おそらくほとんどのケースで必要とされないだろう。実際に使うかもしれないのは、メインフレーム上でXML文書を作成する場合だが、そもそもメインフレームはパソコンと比較して圧倒的に数が少ないうえに、XML文書作成のような安価なパソコンで問題なくできる作業にわざわざ使われるケースが多いとは思えない。これも、めったにないケースだろう。

 「full normalization」については、Unicode/ISO 10646の世界でもまだ流動的な部分が残っているため、あまり有効ではないという意見もある。また、これまで、このような正規化抜きでシステムを構築して運用してきた実績があることから考えると、「full normalization」を使わねばならない強いニーズがあるとも思えない。

 以上のように、そもそもXML 1.1固有の機能が必要とされる頻度は極めて低く、その結果、たとえXML 1.1対応のソフトを使う利用者がいるとしても、そこから送り出されるXML文書は、XML 1.0の形式にしかならない可能性が高い。

 このような状況では、XML 1.1が徐々に普及していくか懐疑的であるという見方が多いことも納得できる。

 実際に、XMLをJIS X 4159として規格化しているJISの対応としても、XML 1.1が本当に利用されるかまだ明確ではないので、当面はJIS化の作業に着手せず、状況を見守るという判断である。

答えなき迷走の果て

 筆者なりにXML 1.1を要約すると、「答えなき迷走の果てに生まれた歓迎されざる不遇の子」といったところだろうか。XMLとはいかようにも発展させられる柔軟な原石のようなものだと思うが、それ故に、XMLにかかわる各人がXMLに見る未来像は異なる。もしXMLの専門家が10人いたら、11通りの未来像があるかもしれない。

 しかし、標準技術としては、1つの確定した仕様を作らねばならない。そうしなければ、相互運用性が得られないからだ。それを考えると、たった1つの確定したXMLの未来像を描けるはずもなく、XML 1.1の正しい在り方の答えなど最初からなかった。なのに、それを追い求めたことで6年にもわたる迷走が続いた、といえるだろう。さらに悪いことに、苦労して生まれた割に、本当にそれを必要としているユーザーが多いとはいいがたい状況が残る。ほとんどのケースではXML 1.1対応システムであっても、XML 1.1固有の機能を使用していないため、XML 1.0の文書が生成されることになるだろう。

 さて、締めくくりに、読者としてはXML 1.1とどう向き合うべきか、筆者の意見を書きたいのだが、これが実に難しい。なぜなら、筆者やその周囲の者たちは、XML 1.1固有の機能を特に必要とはしていないためだ。

 緩和された名前文字の恩恵を受けるのは日本人やアメリカ人ではなく、身近に該当者はいない。また、改行文字の追加の恩恵を受けるのはメインフレーマーになるが、ずっとパソコンを扱ってきた筆者にとってメインフレームは縁遠い世界で、事情もよく見通せない。それらの世界からの強い意思表示も見えてこない。ニーズがないのか、それともニーズがあるにもかかわらず使う人たちのアピールが筆者に届いていないだけなのか、区別が付かない。もし、本当にニーズがなければ、XML 1.1が使われないまま消えていく幻の言語になる可能性も否定できない。だが、ニーズがあって使われ始めれば、徐々に普及していく可能性も否定できない。

 XML 1.1と同じ日に、旧版のアップデートとなる「Extensible Markup Language (XML) 1.0 (Third Edition)」が発行された、という点も気になる。もし、W3Cが健全なXML 1.1の普及を期待しているなら、旧版のアップデートはやめて、新版の利用を勧めるはずである。しかし、実際には旧版も積極的にアップデートが行われ、健在であることが示されている。このような状況を見ると、ますますXML 1.1の未来に懐疑的にならざるを得ない。

 現時点では、XML 1.1が実際に使われるとも使われないともいいがたい。おそらく大半の利用者にとって、XML 1.1は不可欠のものではないので急いで取り組む必要はないだろう。ただ、XML 1.1の利用動向は見守っていく価値がある。(完)

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XML 1.1が生まれるまでの経緯
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