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Enhanced IDE

【エンハンスト・アイ・ディー・イー】

別名
E-IDE (Enhanced IDE) 【イー・アイ・ディー・イー】
EIDE (Enhanced IDE) 【イー・アイ・ディー・イー】

最終更新日: 2000/07/10

 ハードディスク メーカーである米Western Digital社が1994年に提唱したIDEインターフェイスの拡張仕様。それまでのIDEインターフェイスとの互換性を維持したまま、性能と機能の両面から大幅にIDEを強化したのが特徴である。Enhanced IDE登場後、IDEインターフェイスを持つ製品はいずれもEnhanced IDEに準拠するようになった。つまりEnhanced IDEは、IDEインターフェイスにおける業界標準(デファクト スタンダード)になったのである。また、IDEの公式な規格であるATAにも、Enhanced IDEの仕様の一部が吸収されていった。

 Enhanced IDEで主に強化された部分は、以下の4つである。

■データ転送速度の向上

 従来のIDEでは、インターフェイス部分のデータ転送速度が約4.2M〜8.3Mbytes/s程度だったのを、Enhanced IDEでは13.3Mbytes/sまで高めた。さらにその後すぐ、最大転送速度は16.7Mbytes/sまで引き上げられた。その後もハードディスクの性能向上に合わせて、IDEインターフェイスの転送速度は引き上げられ、現在では最大100Mbytes/sという転送速度を実現している。

■接続可能なデバイス数の増加

 IDEでは1本のケーブルに最大2台のデバイスを接続できる。これはIDE登場から現在に至るまで変わっていない仕様である。そのため、3台以上のIDEデバイスをパソコンに接続するには、IDEインターフェイス(IDEポート)の数も2つ以上に増やす必要がある。しかし、Enhanced IDE以前のIDEでは、2つ目以降のIDEポートをIBM PC/AT互換機に実装する方法がはっきりと決まっておらず、標準状態ではIDEポートを1つしか装備しないIBM PC/AT互換機がほとんどだった。つまり、標準ではIDEデバイスを2台までしか接続できなかった。

 そこでEnhanced IDEでは、プライマリ ポートとセカンダリ ポートという2つのIDEポートを定め、最大4台のIDEデバイスをIBM PC/AT互換機に接続するための標準的な実装方法を決めた。これにより、Enhanced IDE登場後のIBM PC/AT互換機では、特別な拡張なしに標準状態のまま4台までのIDEデバイスを接続できるようになった。

■ハードディスク以外のデバイスのサポート

 IDEの元になったのがハードディスク専用のインターフェイスだったため、IDEの仕様もハードディスクだけを前提とした設計になっていた。そのため、ハードディスクとは異なる特性を持つCD-ROMドライブやテープ ドライブなどのデバイスは、IDEでサポートするのが非常に難しかった。Enhanced IDEが登場するまで、IDEインターフェイスに接続できるのは、事実上ハードディスクだけだった。

 Enhanced IDEでは、当時すでにハードディスク以外のデバイスをサポートしていたSCSIの技術をIDEに持ち込むことで、ハードディスク以外のさまざまなデバイスを、IDEインターフェイスに接続する道を開いた。SCSIでは、デバイスに与える命令とそれに付随するパラメータを1つのパケットにまとめてデバイスに送出する。このパケットを使う技術がIDEに合わせて改良され、ATAPI(ATA Packet Interface)としてEnhanced IDEに組み込まれた。

 ATAPIのメリットは、既存のIDEハードディスクとATAPI対応のIDEデバイスを共存させられる点にあった。また、ATAPIのコマンドセットはSCSIと互換性があったため、周辺機器メーカーがSCSI向けに開発されたデバイスを、IDE向けに流用するのが比較的容易だった。現在では、CD-ROMドライブやCD-R/RWドライブ、DVD-ROM/RAMドライブ、テープドライブなど、さまざまなデバイスをIDE(ATAPI)に接続して利用できる。

■大容量ハードディスクのサポート

 ハードディスクなどの記憶デバイスでは、一般的に、記憶領域を数百bytes〜数Kbytes程度の大きさのブロック(セクタ)に細分し、アクセスするときの最小単位として扱う。各ブロックには、特定のアドレスが割り当てられ、このアドレスを指定することで、特定のブロックを選択してアクセスできる。

 Enhanced IDE以前では、ブロックを特定するのに、シリンダ/ヘッダ/セクタという3つのパラメータ(頭文字をとってCHSパラメータと呼ばれる)を同時に指定する必要があった。これはハードディスクの内部構造をそのまま反映した方式で、ソフトウェアから扱いにくいという問題があった。特に当時のIBM PC/AT互換機では、ディスクBIOSで取り扱うCHSパラメータと、IDEにおけるCHSパラメータの間で不整合があり、その結果、ディスクBIOSは記憶容量が528Mbytesを超えるIDEデバイスを正常に認識できなかった。つまり、事実上、IDEハードディスクの容量は528Mbytesに制限されていた。

 これに対しEnhanced IDEでは、ブロックの指定方式として、CHSパラメータ方式よりずっと単純なLBA(Logical Block Addressing)を追加した。これにより、ディスクBIOSからIDEデバイス内部のブロックを指定するのが簡単になり、528Mbytesの制限もなくなった。

 Enhanced IDEの特異な点は、IDEデバイス/インターフェイスだけではなく、IBM PC/AT互換機へのIDEの実装方法にも触れている点だ。つまりEnhanced IDEは、IBM PC/AT互換機のためのIDE拡張仕様だったといえる。一方、ATAの規定範囲はIDEデバイス/インターフェイスの仕様だけであり、IBM PC/AT互換機などのプラットフォームまでは含まれない。また、ATAと違い、Enhanced IDEは公式な規格ではない。しかし、その後のIDE関連製品がEnhanced IDEの仕様に従って製品化されていったのは確かである。

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