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UNIX

【ユニックス】

最終更新日: 1999/05/21

 1969年、米国のAT&Tベル研究所で、Ken ThompsonとDennis Ritchieの2人の研究者の手によって開発されたオペレーティングシステム。現在は、パーソナルコンピュータからマルチプロセッサシステム、メインフレームコンピュータ、スーパーコンピュータまで広く使われている。

 当初は、米DEC社(Digital Equipment Corporation。現Compaq社)のミニコンであるPDP-7用のOSとして、アセンブリ言語で組まれた。その後、1973年にC言語の開発者であるThompsonとRitchieの2人によってC言語で組み直された。ポータビリティの高いC言語で記述し直されたことで、それまでのOSにはない高い移植性が備わり、後にUNIXが普及した大きな要因の1つとなった。

 UNIXの大きな特徴の1つは、開発当初はあくまでも研究を目的としたオペレーティングシステムであり、すべてのソースコードが広く公開されたことにある。このため大学や研究機関などでの利用が広がり、さまざまなシステムに移植されるに至った。しかしこの一方では、ソースコードが公開されたことにより、UNIXをベースに独自の機能拡張を施したバージョンが多数作られた。1979年にAT&TからリリースされたUNIX V7.0が、最後の共通UNIXであり、この後UNIXはさまざまに枝別れしていくことになる。

 AT&T以外によって開発された代表的なものとして、カリフォルニア大学バークレー校によるBSD(Berkeley Software Distribution)版のUNIXがある。カリフォルニア大学バークレー校は、1977年にAT&Tのソースコードをもとに「1BSD」を開発、無料配布を開始した。これがBSD版の始まりである。1980年代に入って発表された4.1BSDでは、AT&T版のUNIXにはないさまざまな機能が追加され、大学や研究機関を中心に広く普及した。たとえば、独特なユーザーインターフェイスを持ち、未だプログラマの中には常用する人も少なくないというviエディタや、高機能なCシェル(csh)もこのときBSD UNIXに搭載された。後にこれらは、AT&T版のUNIXに移植されることになる。

1983年には、4.2BSDとSystem Vがほぼ同時に発表され、大学や研究機関向けの無償で利用できるBSDと、商用のAT&Tの標準UNIXとに発展の方向性が分かれた。ここで4.2BSDは、現在のインターネットの起源とされるARPAの支援を受けて開発されたため、特にネットワーク関連の機能が強力であり、インターネットの標準プロトコルであるTCP/IPが最初に実装され、注目を集めた。1986年には、4.2BSDの機能を強化した4.3BSD がリリースされ、BSD UNIXはその後も開発が続けられ、1999年現在の最新バージョンは 4.4BSDになっている。

 一方、AT&Tの「System V」シリーズも、1983年にSVR2(System V Release 2)、1986年にSVR3と進化し、1988年には、BSD系の機能を統合した、SVR4が発表された。現在の商用UNIXは、ほとんどがこれをベースとして開発されている。

 1987年、AT&TとSun Microsystems 社はUNIXインターナショナル(UI)を設立。同時にAT&TはUNIXシステムラボラトリーズ(USL)社を設立し、UNIXの研究と商標、ライセンス管理をここに移した。 これに対しDEC、IBM、HPなど8社は、Open Software Foundation(OSF)を設立し、System V系とBSD系の機能を統合したOSF/1などを発表した。1993年にはNovell 社がUSLを買収し、X/Open に統一仕様の認定機関として「UNIX」の商標権を譲渡してUIは解散した。現在では「UNIX」という商標はX/Openによって管理されている。

 UNIXの特徴としては、高級言語のC言語で書かれているために移植性が高いことや、複数のユーザーが複数のプロセスを実行できるマルチユーザー/マルチプロセスのOSであること、複数の選択可能なシェルによる対話的処理と、パイプ機能によって単純な機能のプログラムを組みあわせて複雑な処理を行えること、周辺機器に対するインターフェイスが統一されていること、バイト列としてのファイルの概念が一貫していること、ファイルやディスクプリタによる階層型ファイルシステム、マウントによる複数のファイルシステムの統合が可能なこと、などが挙げられる。ユーザーインターフェイスとしては、文字ベースのコマンドラインインターフェイスが基本であるが、X Window Systemを使ったグラフィカルユーザーインターフェイスも広く使われている。

 UNIX(uni:単一の)という名前は、ベル研究所が当時GE、MITと共同で開発していた「Multics(マルチクス)」(multi:複数の)というOSが、そのあまりの複雑さゆえに完成せず、中断することになったことに対する皮肉として、Brian Kernighanによって付けられたといわれている。

 現在の商用UNIXシステムとしては、SunのSolaris、IBMのAIX、DECのUltrix/DIGITAL UNIX、HPのHP-UX、SGIのIRIXなどがある。また最近では、X/Openのライセンスを必要としないフリーUNIX(PC-UNIX)も開発され、PC/AT互換機を中心に広く普及し始めている。代表的なフリーUNIXとしては、LinuxやFreeBSDなどがある。

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