■KIUオピニオン

BPM導入アプローチと留意点を考える

アビームコンサルティング株式会社 プリンシパル
三箇 功悦

2006/3/17

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BPMという言葉が日本でも広がり始めている。いま、なぜBPMに注目が集まっているのか──。BPMのメリットと導入の際の留意点を解説する。(→記事要約<Page 2>へ)

BPMとは?

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 BPM(Business Process Management)という言葉は、昨今日本でもIT業界を中心に使用されるようになってきている。いろいろ定義の仕方はあるのであろうが、ここでは「ビジネスプロセスに、分析・設計、実行、モニタリング、改善・構築(Plan, Do, Check, Action)のマネジメントサイクルを適用し、継続的なプロセス改善を遂行しようとする一連の活動のこと」をBPMと定義したい。言葉を換えると、「継続的BPR」がBPMということになる。

 BPR(Business Process Reengineering)は、企業の業務内容や業務構造・手順を根本的に見直して売り上げの拡大やコスト削減を目指す一連の活動であるが、どちらかというと、一時的なワンタイムのプロジェクトという感覚が強かった。BPMはこのBPRを一時的なものに終わらせずに、継続的に実施する仕組みを企業内に埋め込み、より成果を上げていこうという一連の企業活動と見なすことができる。

 BPMが、脚光を浴び始めている背景には、いくつかの理由があると考える。

 第1の理由には、多くの企業でERPを導入してみたものの、本当に当初もくろんだ効果が上がっているか、なかなか検証できていないことが挙げられる。ERPのシステム的な導入そのものが成功裏に終わっても、本当の効果──例えば「在庫削減」「納期回答の正確性とスピードの向上」「各種伝票の冗長入力の廃止による事務要員の工数削減」「月次決算早期化」などが、本当に実現されているかはまた別物である。システムの導入とともに、ユーザー側の業務改革をしようという意欲(本来の効果を達成を実現したいという意識)とそれを裏付ける活動が現場にないと最終的な目標は達成されない。そのため、ERP導入後に、キーとなるプロセスについて、実績をモニタリングできる仕組みを構築したいとか、導入後の効果を継続的にモニタリングしやすい仕組みをERP導入時に埋め込んでおきたいというニーズが顕在化してきている。

 もう1つの理由は、日本版SOX法(J-SOX法)が具体化するにつれ、ビジネスプロセスを可視化し、それぞれのビジネスプロセスの抱えるリスクを識別して、各リスクに対応するための内部統制(コントロール)を定義していくことが、一定規模の企業では必須になると分かってきたことがある。残念ながら多くの企業では、リスクの識別とコントロールの定義の前に、ビジネスプロセスの可視化という根本的な作業が十分になされていない。日本版SOX法は2009年3月決算から適用されるといわれているが、その場合多くの企業は2008年4月までにプロセスの可視化の作業を終了する必要がある。またせっかく、現在のビジネスプロセスを可視化するために、大量の工数を使って業務フローを整理しても、プロセスが変わるとそれを継続的に修正していく必要がある。この流れはBPMと一致するところがある。

BPMの対象業務って何?

 ところで、BPMやBPRでいう、ビジネスプロセス(Business Process)は、何を意味するのだろうか? 日本語でいう業務プロセスを意味すると解釈したいのだが、この定義にもいろいろな意見がある。ここでは「顧客に付加価値を直接・間接に生む相互に関連した企業活動」と定義したい。

 ビジネスプロセスの分類の仕方には、産業や業種によって相当異なると同時に、理論的にもさまざまな方式がある。一般的には、顧客へ直接付加価値を創造するプロセスである「基幹業務プロセス」と基幹業務を全般に支援する「支援業務プロセス」の大きく2つから構成される。前者は、バリューチェーンでいう矢印の下の部分で、後者は上の部分にほぼ相当する。

 基幹業務プロセスは、商品・製品・サービスを設計し開発するプロセスや、それらを実際に供給するプロセス、そしてマーケティングや営業を通して需要を創造するプロセスから一般的には構成される。一方支援業務プロセスは、会計・財務・税務や人事・採用・研修といったプロセスに分解されていく。各主要プロセスは、ツリー構造の形で、どんどん細分化されていく。また基幹業務プロセスと支援業務プロセスをつなぐプロセスとして、経営管理プロセスが存在する。企業全体の業績を管理する仕組みがそれである。

 BPMの対象業務は、このように分類整理されるが、全プロセスを一気にBPM化するか、効果が大きいプロセスから徐々にBPM化するとか、容易に実現しやすいプロセスからBPM化するかは、その企業の置かれている状況によって判断していくことになる。

 なおBPM化を検討する場合、一般的BPR視点である、集約化・簡素化・並列化・低コスト化・システム化・廃止などの普段忘れている視点からものを見ることも大切である。シェアードサービスアウトソーシングの手法はその一例でもある。また本社企業だけでなく、子会社や取引先を巻き込んだプロセスフローを考えると効率化の斬新なアイデアが出る場合もある。

図1 典型的な業務プロセス

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BPM導入アプローチと留意点を考える
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BPMとは?
BPMの対象業務って何?
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BPMシステムの全体イメージ
BPMを導入する場合の主要留意点
 (1)基幹システムの再構築との位置関係
 (2)対象業務プロセスの範囲の選定
 (3)BPMツールの有効活用
 (4)既存システムとの効率的なインターフェイス
 (5)人間系への配慮


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