連載
KIU研究会レポート(2)


経営戦略からみたBPMの必要性

生井 俊

2006/3/7

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2005年12月22日、「経営とITの融合」研究会(以下、KIU研究会)の第2回会合が開催された。今回は、株式会社メタジトリー代表取締役の丸山則夫氏、有限会社アイ・エフ・コンサルティング代表の高橋淳氏らが発表を行った。その模様をお伝えする。 (→記事要約<Page2>へ)

スキル標準とラーニングの必要性

 
Speaker
株式会社メタジトリー
代表取締役
丸山 則夫氏
   

 まず発表を行った株式会社メタジトリー代表取締役の丸山氏は、2003年ごろにアメリカのボストンでBPM(ビジネスプロセス・マネジメント)を見て「プロセスを真ん中に置いて、いろいろなものをひも付けできる概念。情報システムとしてどうかという部分だけではなく、マネジメント対象を少し広く考えていく必要がある」と感じたという。

 次に、丸山氏自身が情報システムにかかわる中で見た「2つの嘆き」を紹介した。

 「1つは事業部長の嘆きで、経営戦略に基づいてこういうシステムを作ってほしいと説明しているとき、7〜8人のSEがいたにもかかわらず、話に参加しているSEは1人だけ。後のSEはじっと話を聞いていて、メモを取っているだけ。発言ができる人を連れてこないと、何のために打ち合わせを行っているか分からない。

 もう1つはSIerの嘆きで、プロジェクトの工期が伸びることがよくあるが、その一方で毎年単価が下がり、状況がどんどん厳しくなっている。この原因は、要件がはっきりしないことにあると分かっているが、なくならない」

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 このような状況を解決する方法の1つとしてBPMに期待する。「BPMの参加者は、ユーザー、コンサルタント、システム管理者、システム事業者の4者だと考えている。その4者が四つ葉のクローバーのように連携することで、情報システムについての課題を早く解決していきたい。

 また、企業のシステム開発においては図1のように技術、経営、構築、業務の4つの領域がある。右側の2つは不確定なもの、左側は確定したものに対して何かをすること、上は判断、下は実行というようにギャップがある。それをBPMで埋めると収まりがよさそうだ」という。

図1 4つの領域を結び付けるBPM

 その中で、誰がどの領域のスキルを持っているかが分かると便利だ。丸山氏は、「個々の専門はあるが、個々をつなぐ理論的な部分がまだ不十分だという思いがある。そうした人材・スキルをチェックすることで、初めてBPMがマーケット的に認知されるのではないか。入門者→初心者→実行者→熟達者→指導者とセットしたときに、どういうスキルが入門段階では必要なのかをまとめてみた。単に技術でなく、漠然とやりたい、変えたいというやる気の部分をどう定着していくかが課題だ。ラーニングによる展開を模索している。

 今後、ユーザーコース、プランナーコース、インテグレーターコース、アドミニストレーターコースを用意し、共通な教材に対してどこをやっていくかをセットしていくことを実現したい。技術者に必要なスキルをまとめたカリキュラム図にある、知識、やり方を修得しながら、大勢の人にGuru(最高位)を目指してほしい。経営の改善サイクルを人とITで実現するのが、いまやろうとしているテーマ。『人と』にこだわっている」と締めくくった。

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事業のソフト化で他社との差別化を図る

 
Speaker
有限会社アイ・エフ・コンサルティング
代表
高橋 淳氏
   

 次に「経営戦略からみたBPMの必要性〜事業のソフト化による差別化の推進」をテーマに、有限会社アイ・エフ・コンサルティング代表の高橋氏が発表した。まず、「プロセスを考え直し、差別化戦略につないでいくことが必要だ。そのためにも、システム開発方法論ではなく、マネジメント側も含め、マネジメントシステムの枠組みを広げていきたい」と述べた。そこで、BPMの定義(私案)として

  1. 経営の外部環境への日常的な適応もしくは戦略的対応のために繰り返し継続的にBPRを実施すること
  2. 前項を実施するための組織、経営管理、人材、情報技術における内部条件を確保・維持すること

の2つを挙げ、BPMはこの2つの取り組みからなる企業変革活動だと紹介した。

 プロセス改革については、「BPRを3年前にやったからしばらくしない──ではなく連続的に行うことが大切だが、そのためには必然性が必要だ。確立されたプロセスや業務のモニタリング、トレーサビリティが生かされるためには、1点目は人件費の圧縮などの『低コスト化』、2点目は変化への速やかな対応、リスクマネジメントといった『適応化』、3点目は顧客とのプロセスの共有を含めた事業のソフト化による『差別化』という戦略・コンピテンシーが必要となる。そのときに、プロセスを見直さざるを得ないという状況が起こる」と話した。

 そのうえで、「機器を売り切ってしまう商売よりも、顧客に対してアフターを見ていくことにより、信頼関係を築き、リピート需要をきちんと開拓していく重要性が高まってきている。供給者側がサービスの付加価値化を進め、場合によっては他社製品を組み入れていくという方向性に変化してきている」と動向を説明。「サービス拡張による顧客との接点の拡張には、顧客とのプロセス共有、情報共有をしないといけない。そのためには確立されたプロセスが必要になる。それによって、顧客から見ると、どのようなサービスがどれだけ受けられるかが保証されることになり、かつその商品を生かして実現しようとしていることに対してどれだけ貢献するのかが見えるようになる」と、確立されたプロセスが持つメリットを挙げた。

 最後に、ある保守サービス企業の業務改善事例を紹介し、「面白いのは、日常の業務改善の延長線上でやっている点。現場が『プロセスをいかに良くするか』に加えて『環境変化を見通し、どのように対処するか』を真剣に突き詰めていったために、システムレベルでの変革が必要になり、サービスの質が大幅に向上した。結果的に他社との差別化に成功している。事業のソフト化による差別化展開には大切なこと。業務改善に留まらない事業方法論の改革を提案するときにBPMは有用だ」とまとめた。

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経営戦略からみたBPMの必要性
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スキル標準とラーニングの必要性
事業のソフト化で他社との差別化を図る
  Page2
各種システムが担う業務を連鎖化する仕組みを提供


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