BABOKバージョン2を解説する本連載の第3回となる今回は、「エンタープライズアナリシスKA」と「要求アナリシスKA」に続き、「ソリューションのアセスメントと妥当性確認」の知識エリアを紹介する。
ついに、BABOKの日本語版が公開されました! 正確には、2009年12月7日に「International Institute of Business Analysis(IIBA)」の日本支部から「ビジネスアナリシス知識体系ガイド(BABOKガイド) Version 2.0」がリリースされました。
IIBA日本支部のWebサイトから、IIBA日本支部会員なら5400円、非会員は6000円で入手することができます。
これまでの連載でBABOKに興味を持たれた方、より理解を深めたいと思われた方は、ぜひご一読されてみてはいかがでしょうか。
さて今回は、前回紹介した知識エリア「エンタープライズアナリシス」「要求アナリシス」に続き、要求から導き出したソリューションをより効果的にするための活動として、「ソリューションのアセスメントと妥当性確認」の知識エリアを紹介します。
前回紹介したエンタープライズアナリシスや要求アナリシスでは、要求の定義とともにソリューションのアプローチや推奨されるソリューションの候補、費用対効果(ビジネスケース)などを明らかにしました。
今回は、要求から導かれたソリューションがビジネスニーズに確実に応えられるように、より効果的なパフォーマンスを発揮できるようにするための活動をまとめた「ソリューションのアセスメントと妥当性確認(Solution Assessment & Validation)」の知識エリアを紹介します。
まず、「ソリューションとは何か?」を明らかにしておきましょう。
ソリューションとは、「ビジネス上の問題を解決したり、強みをさらに向上したりするための実現手段の集まり」のことです。
例えば、システム開発プロジェクトを思い浮かべてください。開発ベンダにとっては、納品するITシステムやオペレーションマニュアルがソリューションと見えるかもしれません。確かにこれらはソリューションの一部ですが、すべてではありません。
顧客にとっては、自分たちの課題を解決したり効率化を実現するためには、ITシステム以外にも、「業務ルールや組織の変更」「事前の合意取り付け」「トレーニング」などが必要となる場合があります。これらをすべて含み、ビジネスニーズやステークホルダーの要求を満たすものこそが、“BABOKにおけるソリューション”となります。ビジネスアナリストにも、後者の視点が求められることはいうまでもありません。
それでは、効果的なソリューションを実現するためには、いつ/誰が/何をすればよいのでしょうか。BABOKの知識エリア「ソリューションのアセスメントと妥当性確認(Solution Assessment & Validation)」がこの領域を扱っています。
まず「誰が」を見ていきましょう。
ソリューションの源となる要求を定義している顧客や、ソリューションを構築する開発者、ソリューションを手に入れてオペレーションを実行するエンドユーザーなど、さまざまなステークホルダーがこの活動にかかわります。そして、その中心となり、活動を促進・支援するのがビジネスアナリストになります。
次に「いつ」「何を」になりますが、ソリューションの候補が見え始めた時点からプロジェクトの全期間を通じて、いくつかの活動を行います。
BABOKでは、明確な実施タイミングやタスクの前後関係は説明されていませんが、状況に応じて適切な時期に、要求とソリューションの整合性を確認していきます。今回は、一般的なシステム開発のライフサイクルを例にとって説明します。
上図の【企画】から【テスト】までの青い部分が、主な活動とその時期です。必ずこのタイミングになるとは限りませんが、該当する期間周辺で各活動を行います。
また、下方には、「複数の候補」「設計」など、ソリューションの状態遷移を示しています。要求に対して、複数の候補があり、要求の充足度や制約を考慮し絞り込みを行い、詳細な設計を実施した後、構築、展開と続きます。
システム開発におけるレビューやテストによって、仕様通りにシステムが作成されているかを確認しながらシステムを構築していく流れは、なじみのあるものだと思います。
BABOKの「ソリューションのアセスメントと妥当性確認」では、システム開発の活動と並行して、仕様通り作成したシステムがそもそも正しいもので、導入後の効果が見込めるのかどうかを確認していく活動になります。
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