ビジネスの役に立たないシステムは、もう要らない@IT情報マネジメント 勉強会

膨大なコストと時間を費やして開発した業務システムが、結局はユーザーにほとんど使われないまま放置される……。こうした事態を避けるには、どうすればよいのだろうか? 「ビジネスモデリング」は、こうした問題に対する解決策を提供する。

» 2007年11月19日 12時00分 公開
[内田功志(システムビューロ),@IT]

そのシステムは、本当に必要ですか?

 突然ですが、あなたは自分の会社がどのようなビジネスを行っているかご存じですか? もしあなたが経営者であれば、ある程度は把握できているかもしれません。しかし、経営陣以外の社員は本当に分かっているのでしょうか? 会社が大きくなればなるほどビジネスは複雑になり、中にいる人間にとって自社のビジネスの全体像をつかむことは難しくなってきます。

 それでは、あなたは自社のビジネスにとって、どんなシステムが必要か分かるでしょうか? ビジネスやシステムの現場担当者であれば、システムの漠然としたイメージぐらいは浮かぶかもしれません。しかし、そうしてイメージしたシステムが本当に自社のビジネスにとって有効なものかどうか、正確に判断できますか?

 そのようなあいまいな状態なのに、「コスト削減」や「効率向上」の名のもとに、システム(主にアプリケーション)は作られ続けています。果たして本当に「コスト削減」ができているのでしょうか? 本当に「効率向上」が図られているのでしょうか? それが本当に最適解かどうか、誰がどんなふうに判断しているのでしょう?

 もしかしたら、もっと有効なシステムが低価格で手に入ったかもしれません。もっと使いやすいパッケージが既にあったかもしれません。でも、「コンピュータに関することはコンピュータのプロに完全に任せているから、きっとうまくやってくれているはずだよ 」と安心しているのではありませんか?

 実際には、世の中に存在するシステムは、ビジネスではあまり役に立たないものが多いようです。なぜそのようなことになるのでしょうか?

システム開発にはビジネスの理解が不可欠

 このような事態を招く主な原因は、システムの開発担当者がビジネスを理解していないからです。しかし、原因は開発側だけにあるわけではありません。システムを発注する側も、ビジネスをきちんと理解して開発側に伝えていないのです。

 ビジネス自体が分かっていないのに、どのようなシステムがそのビジネスにとって有効に機能するかなど、判断できるはずがありません。発注側も開発側も、ビジネスに対する理解が不十分なまま要求定義を行い、その結果から有効なシステムの姿を想像するしかありません。このように、「たぶん」有効に機能する、「きっと」ユーザーの役に立つ、などといった憶測のもとで進められたプロジェクトが、「使えないシステム」を生む結果となります。

戦略マップによるビジネスモデリング

 こんなずさんな状態から脱却するための方法論が、今回ご紹介する「戦略マップによるビジネスモデリング」です。企業のビジョンや戦略にマッチしたシステム、ビジネスにとって本当に有効なシステムを見極めるための方法論です。

 では、「戦略マップによるビジネスモデリング」とは具体的にどのようなものなのでしょうか? ここではそのすべてについて述べることはできません。詳細については、下記書籍や@IT情報マネジメントの連載記事をご覧ください。

参考書籍
『戦略マップによるビジネスモデリング』内田 功志、羽生田 栄一=著/翔泳社/2007年)

参考記事
実践! UMLビジネスモデリング(@IT情報マネジメント)

 ここでは、この方法論がどのような方々に、どのようなメリットをもたらすかを簡単に説明したいと思います。

ビジネスモデリングを学ぶ意義

ユーザーにとっての意義

 システムのユーザーや発注担当者がこの方法論を学ぶメリットの一例を挙げてみましょう。例えば、昨今J-SOX法対応に伴うシステム導入に苦戦している企業も多いかと思います。こうした企業のシステム担当者は、この方法論に触れることにより、システム化の本当の意味を知ることができるかもしれません。本来はJ-SOX法がなくても 私たちはビジネスに有効なシステムを見いだして開発すべきなのです。法律があるからやるのではなく、そうすることで他社との差別化を図り、ビジネスの健全化を実現していくことができるのです。

開発者にとっての意義

 開発者にとっては、ビジネスが理解でき、さらにそのビジネスにとって有効なシステムが作れるのなら、鬼に金棒です。しかし、これはあと5年以内にはビジネス系のシステム開発者にとっては当たり前のことになると考えています。つまり、今から学ばなければ手遅れになってしまうかもしれないということです。

 なぜそのようにいえるかというと、今後はこのような方法論がビジネス寄りの方々に、特にシステム発注の際の有効な方法論として普及していくと考えているからです。

「ウチは現在こんなビジネスモデルなんですが、来年度からはこのようなビジネスモデルに改善しようと思っているんですよ。そこでこのようなシステムが必要だと思うんですが、プロとしてのご意見をお聞かせ願えませんか?」

 こういって、顧客がビジネスモデルから導いたユースケース図を目の前で広げたとしたら、あなたはそれに対して的確なコメントを出せますか? 「こんなものは初めて見た」というような顔をしたら、大口の顧客を失ってしまうことにもなりかねません。そこで主導権を握りたければ、たった今からでも大切な顧客とタッグを組んで、この新しい方法論を勉強することをお勧めします。

「戦略マップによるビジネスモデリング勉強会」の開催

 そこでこのたび、@IT情報マネジメント読者の方々により身近にこの方法論を知っていただくために、@IT情報マネジメント編集部の主催により「戦略マップによるビジネスモデリング勉強会」が開催されることになりました。講師は私が務めさせていただきます。

 今回開催される勉強会の内容は、少しシステム寄りになっています。いずれは、システムとは無関係な方々向けの内容も検討したいと思っていますが、今回はビジネス系のシステムやUMLのクラス図などをある程度理解していないと、達成感を得ることはできないかもしれません。

 参加をご希望される方は、下記のリンク「第1回『戦略マップによるビジネスモデリング勉強会』のご案内」をクリックして、勉強会の詳細ページをご覧ください。多くの方々からのご応募をお待ちしております。

第1回「戦略マップによるビジネスモデリング勉強会」のご案内 >>

筆者プロフィール

内田 功志(うちだ いさし)

システムビューロ 代表。日立系のシステムハウスで筑波博に出展した空気圧ロボットのメインプログラマを務め、富士ゼロックス情報システムにてオブジェクト指向の風に触れ、C++を駆使して印刷業界向けのシステムを中心に多数のシステムを開発。現在、ITコンサルタントとして、システムの最適化や開発の効率化などの技術面、特にオブジェクト指向開発に関するコンサルティングやセミナーを実施してきた。最近ではビジネスに即したシステム化のコンサルティングを中心に活動している。


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