UMLを使ったビジネスモデリング(後編):そうだったのか! システムユースケースThe Rational Edge(2/3 ページ)

» 2007年05月24日 12時00分 公開
[Arthur V. English(Unisys Corporation シニア学習開発コンサルタント),@IT]

◆ ビジネスモデリングにはどのUML図を使うべきか?

 ビジネスモデリングで使うUML図について説明する前に、RSAやUML 2.0を使ってビジネスユースケース図を作成する際のヒントをいくつか紹介したい。

 ■ UML 1.xでは、アクターは業務従事者だとすることができる。UML 2.0では、クラスを作成し、それを業務従事者だとする必要がある。UML 2.0では、アクターをビジネスアクターとはするが、アクターを業務従事者とすることはできない

 ■ IUML 2.0では、ビジネスユースケースと業務従事者の関連は操作が可能となっている。だが、ビジネスアクターとビジネスユースケースの間の関連は操作可能ではない

 ■ 最優良事例としては、業務従事者とビジネスアクターとの一貫性を確保するために、ビジネスユースケースと業務従事者の間の操作は無効にしておくよう推奨する。業務従事者とそのユースケースの関連は、ビジネスアクターがビジネスユースケースとコミュニケーションを取るのと同じように記述する必要がある

 ■ プロジェクトの「Properties」ウィンドウから「Profiles」タブを選択し、「Add Profile」ボタンをクリックして、ビジネスモデリングと耐性分析のステレオタイプをプロジェクトに登録する。IBM Rational Roseでは、これが自動的に組み込まれた。UML 2.0では、ステレオタイプのパッケージングとUML拡張タグ付けにプロファイルが使われている。UML 2.0仕様でビジネスモデリングのステレオタイプを使うには、UMLモデリングプロジェクトへのプロファイルの登録が必要となる

 UMLビジネスモデルは、「Use-Case View」のビジネスユースケースモデルと、「Logical View」のビジネス分析モデルの2つで構成されている[注1]。 ビジネスユースケースモデルでメインとなる図がビジネスユースケース図だ。また、「容疑者逮捕」ビジネスユースケースの作業図である図2にあるように、ワークフロープロセスをグラフィカルに表示するため、個々のビジネスユースケースに「UML Activity」図を任意で含めることもできる。


[注1]「Use-Case View」および「Logical Viewは、UML 4+1 View Model Architectureの一部となっている。4+1 View Model Architectureの詳細は「URUP Software Architecture Concept in the Analysis & Design Discipline」を参照


ALT 図2 「ISM容疑者逮捕」ビジネスユースケース作業図 (クリックすると拡大

 ビジネス分析モデルは、業務従事者とビジネス要素とを対話させてビジネスユースケースを描写したものを示している。これは、ビジネスユースケース実行のために業務従事者とビジネス要素をどのように関連付け、コラボレーションさせるかという抽象概念になる。図3のように、ビジネス分析モデルのUML図には3つのタイプがある。クラス、シーケンス、そしてコミュニケーションの各図だ。

ALT 図3 ビジネス分析モデル図

 ビジネス分析モデルの中心になる図がシーケンス図だ。ビジネスユースケース実行のためのビジネスアクター、業務従事者、そしてビジネス要素の対話を示すシーケンス図は手作業で作成する。シーケンス図は、時系列で並んだオブジェクトのやりとりを示す。特に、この対話に参加しているオブジェクトと、やりとりされている一連のメッセージを示す。

 UML 1.xまでコラボレーション図と呼ばれていたコミュニケーション図は、オブジェクト間の対話パターンを示す。相互のリンクや送受信するメッセージごとに対話に参加しているオブジェクトを示す。コミュニケーション図とシーケンス図はいずれも対話を示しているが、これらは強調する側面が異なっている。シーケンス図は明確な時系列を示すが、オブジェクトの関係は明確に示さない。コミュニケーション図はオブジェクトの関係を明確に示すが、時系列情報はシーケンス番号から入手する必要がある。

 いずれの図も同じ動作を異なる手法で示している。読みやすく、目で追いやすいため、個人的にはシーケンス図の方が筆者の好みだ。View of Participating Classes(VOPC)を使い、コラボレーションによってビジネスユースケースを実施するビジネスアクター、業務従事者、そしてビジネス要素の静的な表示を行うこともできる。

 図4は、「ISM容疑者逮捕」ビジネスユースケースを描写するシーケンス図を示している。図5は「ISM容疑者逮捕」ビジネスユースケースを描写するVOPCを、そして図6が「ISM容疑者逮捕」ビジネスユースケースを描写するコミュニケーション図を示している。

ALT 図4 「ISM容疑者逮捕」ビジネスユースケースを描写するシーケンス図 (クリックすると拡大

 図4の方の「ISM容疑者逮捕」ビジネスシーケンス図にはビジネスユースケースモデルから持ってきた3つの業務従事者がある。「警察」「引受人」、そして「刑事司法制度」だ。「刑事司法制度」は、「警察」「裁判所」、そして「検察官」などを一般化したものだ。シーケンス図をシンプルにしておくために、ISMが対応できるすべての刑事司法制度はこの一般化処理をしている。

 図4は、ビジネス分析モデルで新しく登場する2つの業務従事者を示している。Records Management System(RMS)と「ISM Broker」だ。通常、RMSは市販既製ソリューション(COTS)になっていて、地元の捜査当局が刑事事件管理システムとして利用している。ISM Brokerは、自動化の候補もしくはUnisysが開発を計画中のソフトウェアソリューションの代用となっている。

 Unisys ISMソリューションは、ハブ型のSOA技術を使って複数の多様な司法制度を組み合わせ、ミッションクリティカルなデータ、ドキュメント、画像、そしてトランザクションを重要な意思決定ポイントで共有する。ISMは、「Microsoft BizTalk Server」もしくは「IBM WebSphere Business Integration」のどちらにもインプリメントできる。ISM Brokerは司法関係者間でのデータ共有用のチャンネルとして機能し、既存技術を活用して情報のプッシュ、プル、公開、および購読を行い、日常の司法業務をサポートする。

ALT 図5 「ISM容疑者逮捕」ビジネスユースケースを描写するVOPC図

 図5のVOPC図は、「容疑者逮捕」ビジネスユースケースに参加するビジネスアクター、業務従事者、およびビジネス要素の静的な表示を行う。ここでは業務従事者ごとに業務が示されている点に注意したい。これらの業務は担当業務と呼ばれる。VOPC図の名前をもっと正確にいうと「View of Participating Business Actors, Business Workers, and Business Entities」ということになる。この例では、コラボレーションによってビジネスユースケースを実行するのは業務従事者だけとなる。

ALT 図6 「ISM容疑者逮捕」ビジネスユースケースを描写するコミュニケーション図 (クリックすると拡大

 前述のように、コミュニケーション図(図6)もシーケンス図で示される動作を監視する方法の1つだ。RSAは、シーケンス図からコミュニケーション図を作成する、もしくはその逆を行う自動化機能を提供する。

 さて、もう1つ疑問に答えなくてはならない。

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