ビジネスソフト ヒント×テクニック
マーケティング


購買額以外の指標も加味して優良顧客を絞り込むには?

Sharpmind Inc.
松尾 順

2007/1/23

ひと口に“優良顧客”といっても、「たくさん買ってくれたから良いお客さま」とは必ずしもいえない。複数の指標を総合して、優良顧客をセグメントする方法はないだろうか?

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 「顧客リストから簡単に優良顧客だけを絞り込むには?」でご紹介した「デシル分析」は、売上貢献度に基づいて顧客をセグメントし、優良顧客を取り出す方法でした。一定期間(半年や1年間など)における累積売上金額の高い順に顧客を並べて、10等分するだけですので非常に簡便な方法です。

 しかし、優良顧客のセグメント条件として、「累積売上高」だけしか使っていないため、セグメントの有効性(精度)は必ずしも高いものではありません。

 そこで今回は応用編として、デシル分析よりもセグメントの有効性の高い「RFM分析」のやり方をご紹介します。「RFM」とは、次の3つの英単語の頭文字です。

  • Recency:直近購入日(最後に購入した日)
  • Frequency:累積購入頻度(一定期間内の購買回数合計)
  • Monetary:累積購入金額(一定期間内の購入金額合計)

 つまり、RFM分析では、デシル分析で使用した「Monetary」(累積購入金額)に加えて、「Recency」(直近購買日)、「Frequency」(累積購入金額)の3つの軸で、優良顧客をセグメントするわけです。

分析手順

[ステップ1] 顧客データと評価基準を用意する

 では、具体的な分析方法を説明しましょう。

 RFM分析のために必要な顧客データの項目は、いうまでもないかもしれませんが、

  • 直近購入日
  • 累積購入頻度
  • 累積購入金額

です。上記データがまだ項目として存在していない場合は、顧客個々の購買データに基づいて算出しておきましょう。例えば、直近購入日は、購入年月日を基に、分析時点から何日前に購入したかという「経過日数」に変換します。

 さてRFM分析では、まずこの基本データに対して、基本的に5段階の評価を設定します。下表をご覧ください。

5段階評価 Recency
(直近購入日から、分析時点までの経過日数)
Frequency
(累積購入頻度)
Monetary
(累積購入金額)
5 30日以内 10回以上 3万円以上
4 90日以内 8回以上 2万円以上
3 120日以内 6回以上 1万円以上
2 180日以内 4回以上 5万円以上
1 300日以内 3回以下 5000円未満
表1 RFM分析を行うための5段階の評価の例

 RFM分析では、それぞれの項目の評価が「5」に近い顧客ほど自社にとってありがたいお客さんであり、ダイレクトメールへの反応率や再購入する確率が高くなると考えます。つまり、直近購入日が近ければ近いほど、また累積購入頻度が多ければ多いほど、累積購入金額が大きければ大きいほど優良顧客であるということを5段階で評価していくわけです。

 なお、この5段階評価の分け方は、商品の特性によって異なってきます。標準的な分け方があるわけではありません。自社商品の場合、R/F/Mはそれぞれどのくらいの水準で1〜5までの評価を与えるのが妥当なのか、社内で十分に検討して決めてください。

 表1では、直近購入日は30日以内、1年間の累積購入頻度が10回以上、累積購入金額が3万円以上にそれぞれ「5」を与えていますので、比較的購入頻度が高く、単価が低めの商品(群)の場合の評価表ということになります。

[ステップ2] 評価基準で顧客データを評価する

 この評価設定に基づき、各顧客のRFM分析を行っていきますが、Excelに顧客データを展開して、関数を組むことで5段階評価を簡単に行うことができます。

 画面1の分析例は、2006年1月1日から12月31日までの10人の顧客データ(ダミーデータ、顧客名はすべて仮名)です。

 左3列(B,C,D列)に入力された実データに基づいてRFMそれぞれの5段階評価を右の3列(E, F, G列)に入力していきます。このとき、関数を使えば自動的に評価値に変換できます。

画面1 実データを5段階評価に変換する(※R:直近購入日の値は、計算日=2007年1月1日から購入日までの日数に変換したもの)

 評価を行うための関数は「論理」を使います。つまり、「IF(もし)Xなら、Yを与える」という形で条件を設定します。例えばE列、RFM分析の「R」のE3の関数は次のとおりです。

=IF(B3<=30,5,IF(B3<=90,4,IF(B3<=120,3,IF(B3<=180,2,IF(B3<=300,1)))))

 左から右に見ていくと、まず、もしB3が30以内(<=30)なら5を与える、次にもしB3が90以内(<=90)なら4を与える──というように、分析のための計算日(ここでは2007年1月1日)から直近購入日までの経過日数に応じて、5段階評価のどの数字を与えるかを設定していきます。FとMについても同様に、先に示した評価表を基に論理式を組みます。

 R/F/Mの数値が算出できたら、H列の「RFM合計値」を入力します。R/F/Mを単純に合計した数値です。

画面2 RFM合計値を導き出す

[ステップ3] 各グループの全体に占める売上構成比を算出する

 RFM合計値が導き出せたら、値の高いものから並べ替えます。つまり、R/F/Mの3つの軸に基づく優良度の高い顧客から順番に並べるわけです。

画面3 RFM合計値順に降順ソートする

 渋谷公夫さんは、R/F/Mとも最高評価の「5」であり、RFM合計値は15点でトップに来ていますね。2位の表参道子さんは、R=4、F=2、M=5で合計11点。彼女は「F」、つまり購入頻度が少ないですね。

 このようにRFM分析の結果が出たら、あとは適切な基準(例えば、RFM合計値が10以上など)で優良顧客を抽出し、ダイレクトメールの発送対象とするなど、実務への応用は自由にできますね。

 今回は説明しやすいよう、RFM合計値は単純合計としてあります。しかし、R/F/Mを同等に扱うのではなく、「R」がM/Fよりも優良顧客選別のために重要な軸と判断したら、重み付けをした加重計算を行うこともあります。また、合計値ではなく、RFMの3つの数字の「組み合わせ」で顧客をセグメントすることもあります。ご興味があればいろいろと研究してみてください。

筆者プロフィール
松尾 順(まつお じゅん)
1964年福岡県生まれ。早稲田大学商学部出身。市場調査会社、IT系シンクタンク、広告会社、ネットサービスベンチャー、ネット関連ソフト開発・販売会社を経て、2001年より有限会社シャープマインド代表。マーケティングリサーチ、広告プロモーション企画&プロデュース、Webサイト開発企画&プロデュースを多数手掛ける。
顧客心理の理解向上を目指す「マインドリーディング・ブログ」主宰。「シナプスマーケティングカレッジ」講師。

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