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マーケティング


CRMに役立つ顧客セグメンテーション方法とは?

Sharpmind Inc.
松尾 順

2007/5/7

CRM施策を実施する際、ポイントとなるのが顧客セグメンテーションだ。CRMをより効果的にするには、顧客セグメンテーション方法とは?

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 今回は、CRMの視点で顧客セグメンテーション(顧客を一定の基準で分類する)を行う方法をご紹介します。

 まずCRMとは何かについて、簡単に定義しておきましょう。ここでいうCRMとは、カスタマ・ロイヤリティの高い人々(=ロイヤル顧客)を増やすための各種施策です。“自社の商品を売り込む”のではなく、“顧客との関係を深め、商品を求められる存在になる”という発想に立って、マーケティング・コミュニケーションを主とした、さまざまな施策を打つのがCRMなのです。

 では、この定義における“ロイヤル顧客”はどんな人たちかというと、

  • 自社商品を繰り返し買ってくれる
  • 自社商品を好きと思ってくれる

です。

 つまり、自社商品のヘビーユーザーで、かつ商品に対する好意が高い人がロイヤル顧客です。こうしたロイヤル顧客が多ければ多いほど、企業収益は安定しますよね。プロ・スポーツや芸能(音楽や演劇)などでは、どれだけ「ファン」や「サポーター」を増やすかが経営上の課題ですが、これと同様に一般の事業会社ながら「自社ファン」を数多く獲得しようという活動だといえば、分かりやすいでしょうか。

分析の前に

CRMセグメンテーション

 さて、ロイヤル顧客を増やすための「CRM施策」を検討するに当たっては、顧客を十把ひとからげに扱うのではなく、適切な基準でセグメンテーションを行い、それぞれの顧客セグメントの違いに対応して施策を最適化することが求められます。

 そこで、先ほど示したロイヤル顧客の2つの視点──すなわち

  • 自社商品を繰り返し買ってくれる
  • 自社商品を好きと思ってくれる

に基づいて、顧客をセグメントするのが今回の目的です。

 上記2つのうち、まず「自社商品を繰り返し買ってくる」という軸は、「マネーファクター」と呼びます。シンボルは「\(エン)マーク」。文字通り、それぞれの顧客が、どれだけの売上・利益をもたらしてくれているかで分類する軸です。

 もう1つの「自社商品を好きと思ってくれる」の基準は、「ハートファクター」と呼びます。シンボルは「♥(ハート)マーク」、これも文字通り、それぞれの顧客が、どれだけ自社商品を好きと思ってくれているかで分類します。

 そして、この2つの軸(マネーファクター、ハートファクター)で顧客をセグメントする方法を便宜上「CRMセグメンテーション」と以下、呼ぶことにしますね。

 この2軸を組み合わせると、顧客を4分類できます。分かりやすいように、下記のようなセグメント名称を付けました。

顧客セグメンテーションマップ
図1 顧客セグメンテーションマップ

●4つのセグメント
♥\
ロイヤル顧客
売上金額、好意度も高い顧客。この人たちをどれだけ増やすかがCRM施策の主眼。
\
気まぐれ客
売上金額は高いが、好意度は低い顧客。「ほかに選択肢がない」「安いから」「近くにあるから」といった理由で買っている可能性が高い。気まぐれにほかの商品に切り替えるリスクがある。
♥
仮想客
好意度が高いのに売上が低い顧客。実際に「買うという行動」に対して何らかの障害がある(販売している場所が少ないなど)。
 
他社客
売上、好意度とも低い。多くの場合、他社のロイヤル顧客。

データの準備

 実際にCRMセグメンテーションを行うには、データが必要です。マネーファクターに当たる、個々の顧客の売上や利益は、通信販売業態やBtoBビジネスでは、おおむね、すでに顧客データベースに格納されていることが多いと思います。小売店などの場合は、メンバーズカードなどと連動させることによって、顧客ごとの売上を捕捉することができますね。自社で直販していないメーカーの場合には、販売チャネルのパートナーにデータの提供をお願いするといった必要があるかもしれません。

 一方、ハートファクターについては、顧客の気持ちを外から知ることは難しいので、アンケート調査などによって、自社商品に対してどの程度好意を持っているかを聞くことになります。顧客満足度調査を実施しているならそのデータが使えるでしょう。なお、アンケートの設問としては、「弊社商品のことが好きですか?」とダイレクトな聞き方でもいいのですが、「好き」という気持ちの結果として行われたと判断できる他者への推奨意向、つまり「弊社商品を友人に勧めたいと思いますか?」という設問の方が正直な好意度が測定できます。

分析手順

[ステップ1] サンプル

 さて、分析手順を見ていきましょう。今回の分析例では、顧客ごとのマネーファクターとして「売上金額(年間累積)」、ハートファクターとして「自社商品に対する好意度」のアンケート結果がすでに手元にあるという前提で話を進めます。

 以下、分析の元データとなるサンプルです。

顧客ID 年間累積売上(万円) 商品に対する好意度
1 15 3
2 31 5
3 14 4
4 48 2
5 26 5
6 2 2
7 44 1
8 17 3
9 25 5
10 10 4
11 14 4
12 38 2
13 18 4
14 2 2
15 47 4
16 22 1
17 34 2
サンプルデータ

 年間累積売上は、万円単位の実数です。一方、商品に対する好意度は、アンケート調査の5段階評価(5=好き、4=まあ好き、3=どちらともいえない、2=あまり好きではない、1=好きではない)の数字が入っています。

[ステップ1] セグメントの実行

 このデータをExcelに取り込みます。表の右隣に「マネーファクター」「ハートファクター」の列を作成し、元データを「高・低」の2つに分けていきましょう。IF関数を使えば簡単ですね。この例では、年間累積売上金額は、今回は25万円以上=高、25万円未満=低、また商品に対する好意度は、4以上=高、4未満=低と設定しています。

画面1 IF関数で、年間累積売上金額からマネーファクター、商品に対する好意度からハートファクターの高・低を振り分ける

[ステップ2] セグメントの分析

 次にマネーファクター、ハートファクターの2つで昇順ソートを掛けます。

画面2 [データ]−[並び替え」でデータをソートする

 その結果に対して、右隣に「セグメント名称」の列を設けて、4つのセグメントの名称を与えてあげましょう(IF関数で振り分けることもできますが、ソート後であれば簡単な操作なので手作業で行っています)。

画面3 「高・高→ロイヤル顧客」というように名称を与えていく

 さあ、これで1人1人の顧客をCRM視点でセグメントすることができました。このCRMセグメンテーションのデータに基づいて、現在の顧客全体のうち、ロイヤル顧客は何割を占めているのか、といった現状分析も可能になります。

 最後に、4つのセグメントそれぞれに対して、おおむねどのような施策を打つべきかの基本方向を示しておきましょう。

●4つの施策
♥\
ロイヤル顧客向け施策
愛顧に対する感謝を丁寧な手紙やサプライズプレゼントなどによって示す。友人・知人の紹介キャンペーンを行ってもよい。
\
気まぐれ客施策
自社商品に対する好意度を高めてもらうコミュニケーション。ブランドイメージ向上を重視する。
♥
仮想客施策
無料サンプルや割引クーポンなどによって、購買行動を刺激する。
 
他社客施策
反応しにくい客なので、ほかのセグメントを優先して基本的に何もしないか、限定的な予算でコミュニケーションを行う。

筆者プロフィール
松尾 順(まつお じゅん)
1964年福岡県生まれ。早稲田大学商学部出身。市場調査会社、IT系シンクタンク、広告会社、ネットサービスベンチャー、ネット関連ソフト開発・販売会社を経て、2001年より有限会社シャープマインド代表。マーケティングリサーチ、広告プロモーション企画&プロデュース、Webサイト開発企画&プロデュースを多数手掛ける。
顧客心理の理解向上を目指す「マインドリーディング・ブログ」主宰。「シナプスマーケティングカレッジ」講師。

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