80年代PCから類推するスマホ活用のポイント企業のためのスマホ徹底“活用”術(2)(1/2 ページ)

スマートフォンを導入するにしても、どうすれば自社の業務に効果的に使えるのか。第一回に続き、有効活用のツボをさらに掘り下げてゆく。

» 2011年07月15日 12時00分 公開
[井上実,モバイルインターネットテクノロジー]

80年代PCとの類似点と共通点から浮かび上がるスマホ活用

 前回は、「現在のスマートフォンと80年代PCとの類似点と相違点」として、以下を挙げた。

類似点

  • プロプライエタリOSとオープンOSの戦い
  • 限られたコンピュータ資源
  • パッケージソフト流通

相違点

  • 企業先行導入型だった80年代PCと、個人先行導入型のスマートフォン
  • キャラクター業務端末代替えとして導入された80年代PCと、ユーザーインタフェイスの良さで浸透するスマートフォン
  • 社内接続が前提だった80年代PCと、インターネット利用が前提のスマートフォン
  • スマートフォン独特の機能

 今回は、これらの類似点と相違点から企業におけるスマートフォンの活用環境と活用パターンを検討してみる。

類似点から考えるスマートフォンの活用環境

 まずは「80年代PCとの類似点」から、企業におけるスマートフォンの活用環境を推測してみる。

iOS vs Android――オープンOSの勝利

 スマートフォンにおけるプロプライエタリOSであるアップル社のiOSと、オープンOSであるAndroidの戦いは、80年代PCから類推すると、オープンOSであるMS-DOSが勝利したように、Androidの勝利に終わる可能性が高い。

 なぜなら、オープンOSは複数のハードウェアメーカーが採用するため、対応機種数がプロプライエタリOSに比較すると非常に多くなり、市場規模が拡大し、対応パッケージソフトも増加する。企業が使っている/使ってみたいスマートフォンとして、アップル社のiPhoneが28%と抜群の強さを発揮しているが、OS別に比較してみると、Android勢が66%と大きく上回っている。(図1参照)

ALT 図1 「企業が使っている/使ってみたいスマートフォン」80年代PCから類推すると、オープンOSであるMS-DOSが勝利したように、Androidの勝利に終わる可能性が高い(COMPUTERWORLD 「Deep Dive」「スマートフォンのビジネス利用、4割の企業が前向き」 2011年、P4より)

 また、iOSの場合には、アップル社のMacでしか開発できないというソフトウェア開発環境もネックとなる。一般企業でMacを導入している企業は少ないため、iOS向けにソフトウェアを開発するためには、新たなシステム導入が必要になる。Androidの場合にはWindows PCでの開発が可能であるため、新たなシステムを必要としない企業が多い。

 現在のAndroidの安定性、複数バージョンの併存、機種依存の問題は、MS-DOS、Windowsが時間とともに解決したように、Androidにおいても次第に解決されると思われる。現状から考えるとiPhoneに偏りがちになるが、今後のことも考慮すると、オープンOSであるAndroidを外すことはできない。当面は、両者併存で考えざるを得ない状況にある。

「コンピュータ資源不足」は時間が解決するが……

 80年代PCのコンピュータ資源不足は、技術革新により時間の経過とともに解決が図られてきた。スマートフォンも同様に、時間の経過とともに資源不足問題は解消されると思われる。例えば、回線スピードもサービス地域は限定されるが、ドコモLTEサービスでは最大受信時37.5Mbpsという高速なサービスが提供されている。

 しかし、今、スマートフォンの導入・活用を考える際には、現存する資源不足を解消するための方策がアプリ側で必要になる。スマートフォンの処理能力が低いからと言って、全ての処理をサーバ側に置き、スマートフォンをシンクライアントにすると、携帯回線のスピードの遅さがネックとなり、レスポンスタイムの低下を招くことになるためだ。回線スピードとスマートフォンの処理能力を考慮した上で、最適なサーバ/スマートフォン間の処理バランスを取る必要がある。

 また、PCと同様のWebページを見ることができるのもスマートフォンの魅力だが、解像度の違いから、スマートフォンにPC用画面を表示させると縮小表示され、拡大しなければ使えないようでは操作性が悪くなる。スマートフォンの特徴である操作性の良さを生かすためには、スマートフォン対応ページを準備したり、スマートフォン・アプリを開発したりする必要がある。

 スマートフォンは、資源豊富な現在のPC環境に慣れ親しんだ技術者には難しい環境かもしれない。

パッケージソフトは企業内活用では浸透しない

 80年代PCでは、多くのパッケージソフトが流通したが、パッケージソフトの企業への本格導入としては、90年代以降の電子メールソフト、グループウェア、ワープロソフトなどのオフィスソフトパッケージ導入が挙げられる。

 スマートフォンにおいても同様の傾向が見られ、業務におけるスマートフォンの利用用途としては、「電子メール/スケジュール管理」「通話」「Webブラウジング」「Microsoft office Word/Excel/Powerpointなどの編集・閲覧」などが上位に挙げられており、オフィスソフトパッケージが利用される可能性が高い(図2参照)。

ALT 図2 「業務におけるスマートフォンの利用用途」(COMPUTERWORLD 「Deep Dive」「スマートフォンのビジネス利用、4割の企業が前向き」 2011年、P4より)。

 今、流通しているパッケージソフトの多くは個人で利用されるものが多く、現状のパッケージソフトで、企業内で活用されるものは限られた範囲になると類推できる。

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