坂口に恋のライバル出現〜相手は電車男!?(第5話)目指せ!シスアドの達人−第2部 飛躍編(5)(1/4 ページ)

» 2007年03月27日 12時00分 公開
[那須結城, 山中吉明,@IT]

第4回までのあらすじ

配送センターや営業企画部のヒアリングを実施し、現場の声を集めた坂口。予想以上の反響にやりがいを感じたものの、上司の名間瀬から「プロジェクトのリリースは1年後にしろ」という無茶な要求を突き付けられてしまう。納得できないまま臨んだ第1回進ちょく会議では、他部署からもリリース時期について不安が噴出するのだった……。



名間瀬プロジェクトマネージャの意地と焦り

名間瀬 「だから、何度いったらお前は分かるんだよ!」

坂口 「ですから、何度も申し上げているように、これだけ大規模なプロジェクトを1年で仕上げるなんて、かなり無茶だと私はいっているんです!業務プロセスが大きく変わるというのに、まだ何も整理できていないじゃないですか!」

 苦虫をかみつぶしたように顔をしかめる名間瀬の傍らで、伊東が不安そうに2人のやりとりを見つめている。名間瀬は、先週実施した第1回進ちょく会議で、佐藤専務から「名間瀬くん、いったいどうなっているんだ!? 君がプロジェクトマネージャだろ!」と指摘されたことにすっかり動揺していた。

(何としても1年で完成させなければ……。俺の立場が危うくなる一方だ)

 名間瀬は、プロジェクトの立て直しを図ろうと、いつもは坂口に任せ切りのプロジェクト会議を自ら主催し、早速関係者を招集した。

 しかし、会議の開始直前に坂口から「やはり1年では無理なので、リリース時期を見直すべきです」と痛いところを蒸し返され、ひとしきり憤っていた。そんな、重苦しいムードのまま、招集された会議メンバーの八島、岸谷、藤木らが席に着き、定時にプロジェクト会議はスタートしたのだった。

名間瀬 「みんなも承知しているように、この新生産管理システム開発プロジェクトは、1年以内の完成が必達条件だ。それを前提に、今日はシステムの基本計画を練り直したい。まず、八島くん、先週頼んだ件を報告してくれないか」

八島 「はい。まずは、C/Sシステムにするか、Webシステムにするかという観点で比較検討をしてみましたので、簡単に説明します」

 八島が慣れた手つきでPCを操作し、スクリーンに映し出されたスライドを見せながら説明を始めると、メンバーはスクリーンに注目した。

伊東 「す、す、すいません……。ちょ、ちょっと質問してもいいですか?」

八島 「どうぞ」

伊東 「あのぉ……。C/Sシステムって何ですか?」

 隣にいる坂口が、やれやれといった顔で伊東を見る。

八島 「え?? クライアントサーバシステムも知らないっての?」

伊東 「名前くらいは聞いたことあるんですけど、C/Sシステムがいいか、Webシステムがいいかといわれてもぉ……」

坂口 「分かった、分かった! 後でちゃんと教えてやるから。一言でいえば、システムの基盤設計の話だ」

伊東 「す、す、すいません……」

坂口 「システム基盤をどうするかの前に、まず『システムで何をするのか?』を明確にしないと話が進まないですよね」

八島 「まぁそうだけど、1年で仕上げるためには、C/SシステムとWebシステムのどちらがいいか、それからRFIDをどう活用するかを事前に調査してほしいって、名間瀬さんにいわれたから説明してるんだけどね。でも、何をするかは、坂口くんや藤木くん、岸谷さんに考えてもらわないと……」

藤木 「製造部としては、先日のヒアリングで現状の問題点、改善要望は出しているので、それを早期に実現してくれれば、それでいいですよ」

岸谷 「配送センターも同じです。先日のヒアリングは何のためにやったんですか?」

坂口 「ヒアリングに協力していただいて、とても感謝しています。ただ、ヒアリングをしただけでは、具体的な要求仕様はすぐに決まりません。しっかり、あるべき姿と現状を分析した『フィットギャップ分析』を行って課題を明確にし、それから『優先順位』を付けなければなりません。それに、肝心なのは、業務プロセスの見直しなんです。まずはそこを整理しなければ……」

 名間瀬がキッと坂口をにらみ、話を遮った。

名間瀬 「確かに正論だが、そんな悠長なことをいっていては、とても1年じゃできないだろ! それに、前回の進ちょく会議の時点で、課題の整理は終わっていたはずじゃないのか!?」

坂口 「いえ、前回は今回のヒアリング結果を速報レベルで分析し、課題シートにまとめて報告しただけですし、ごく一部の課題が明確になっただけです」

名間瀬 「それだけでも課題が多過ぎて対応できないといっているのだから、いま、抽出できている課題から取り組めばいいだろう」

坂口 「いえ、それではまだ不十分です。業務プロセスを見直すうえで重要な、営業企画部へのヒアリングが思うようにできていませんので」

名間瀬 「営業企画部か……。天海部長は苦手なんだよな、俺。坂口、お前に任せるから早く何とかしろよ!」

坂口 「ヒアリングだけでなく、他社のベンチマークも必要です。くどいようですが、現状のシステムを分析して課題が明確になったら、優先順位付けをして業務プロセスの見直しを行う必要があります。そのうえで、ようやく今回のシステム開発の範囲が明確になるんです。このように、まだまだやるべきことは山ほどあるんです。だから、1年以内のリリースは難しいと、先日の進ちょく会議でも発言したはずです」

名間瀬 「またその話か!あんな勝手な発言をしやがって。1年以内のリリースは、プロジェクトオーナーである役員のご意向だといっただろう。それを無視するような発言は、許さんぞ!あれもできない、これもできてないと、そんなことはいわれなくても分かってるんだ。できないことばかり並べてないで、もっと前向きに話ができないのか、お前は!!」

 2人のやりとりを黙って聞いている八島、岸谷、藤木は、プロジェクトが迷走していることを確信し、そもそものプロジェクトの意義が何だったのかさえ、分からない気分になっていた。

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