第3回 ビジネスブログツールはインストール型がいいビジネスブログはじめの一歩

» 2007年10月23日 12時00分 公開
[中山順司,シックス・アパート株式会社]

 今回はブログ・ツールの選択についてお話しします。ビジネスブログを始めるに当たり、無数に出回っているブログ・ツールの中から予算的にも機能的にも自社に過不足のないモノを見つけ出す作業は、実は結構面倒だったりします。高価過ぎるツールを買って使いこなせないのは宝の持ち腐れですし、かといって貧弱過ぎるツールでは満足のいく機能が備わっていないのでは意味がありません。

 「ブログの価値は中身(コンテンツ)で決まるのであり、ツール選びにあまりエネルギーを掛ける必要はないのでは」という考え方には一理あります。コンテンツの良しあしがブログの評価を左右する一番の要素であることに間違いはなく、ツールの影響力は二次的なものにすぎません。

 とはいえ、表面的なスペックだけで判断できないブログの良しあし、評価ポイントというものもやはり存在しますので、それを踏まえて自分に最適なブログ・ツールで快適に運用したいものです。

ホスティング型か、インストール型か

 なぜツール選びが重要であるかというと、いったん1つのツールで運用を開始してしまうと、後戻りが難しいからなのです。例えば、プロバイダやポータルサイトが提供するホスティング型は、無料であることが多く、気軽に開設できるので個人ブロガーに人気です。

 しかし、独自ドメインが使えない、拡張性が乏しい(もしくはない)、広告が表示される、などの制限があり、企業の公式ブログとしては見栄えがどうしても素人っぽくなってしまい、あまり積極的にオススメできません。

 また、不都合なのは見栄えだけではありません。無料ブログはいわばサービス提供者の場所を間借りしていることなので、サービス提供者から一方的に規約変更やサービスを停止されてしまうリスクもあります。さらに、規約変更によりいつの間にかブログ記事の内容が規約違反してしまうこともあり得ますし、バックアップが取れない場合が多いため、もしサービス停止になれば積み上げたコンテンツはコメントやトラックバックを含め文字通り消えてなくなります。

 それ以外にも、ブログが軌道に乗ってくると、「デザインやレイアウトを見直したい」「オリジナルなサイトを作りたい」という欲が出てくるものです。そのときになってカスタマイズ性に乏しいツールを採用したがために思ったような修正が施せないことに気付き、「最初から先のことを考えたツールを導入すればよかった」と後悔しないためにも、無料サービスに頼るのは避けた方が賢明です。

 ビジネスブログにオススメなのは、やはりインストール型のブログ・ソフトウェアです。ソフトウェアをダウンロードし、サーバにインストールする手間があるものの、ホスティング型とは比べものにならないほどカスタマイズ性に富み、思い通りにデザインできるメリットがあります。

 しかも記事や画像の容量にも制限がないので、容量を気にせず記事を増やすことができます。

 専用のドメイン、柔軟性の高い拡張性、安心できるバックアップ体制はビジネス用途には欠かせません。そうなると、自ずとプロフェッショナル用のツールに選択肢は絞られます。将来的にブログが手狭になったときの引っ越しも自由ですし、HTTP301のレスポンスを返させることで引っ越し後のアクセス減を食い止めることも可能です。

部分導入か、全面導入か

 ここで「ツール選び」の話から少し離れ、「選んだツールをどう使うか」という話をします。大きく分けて部分導入と全面導入の2つの方法があります。

<1> 部分導入 〜別サイトとして〜

 自社のこれまでのWeb サイトはそのまま運営しつつ、別サイトをブログで立ち上げるイメージです。既存Webサイトは触れないけれどもビジネスブログは始めたいときなど、部分的な導入で試したい場合に採用されるケースで、マーケティングや広報の対外的な目的を持つブログが最も多く当てはまります。

 この場合、ブログとWebサイトは別管理になるため、双方でのコンテンツ連携ができないという不都合はあります。しかし、いい換えれば会社のWebサイトのことを気にせず身軽に自由に運営できることでもあるので、思い切ったチャレンジがしやすい側面もあります。

 ニュースの発信など更新頻度の高い役割をブログに任せ、それ以外の部分は従来のサイトで賄うという分業で管理を徹底しているのが劇団四季です。いくつもの演目を持ち、それぞれの最新ニュースを1日に何度も発信せねばならない中で、HTMLをその都度修正するのは現実的ではないと判断し、シックス・アパートのMovable Type(ムーバブル・タイプ)を導入され、作業労力と費やす時間を一気に解消しています。

 Webサイト上の役割を明確に分けるという意味では非常に割り切っておられ、あえてコメントやトラックバックを非公開にし、「劇団からの情報発信を正確に、タイムラグなく伝達すること」のみに集中活用されています。意図と目的を持ちつつ、ブログの一番得意な機能を引き出した使い方をされているといえます。

<2> 全面導入 〜企業サイトをすべてブログ化〜

 企業サイト全体をブログでCMSとして構築する動きも活発です。ビジネスブログが始まったばかりのころは、「Webサイトの1つのコーナー」的な位置付けで実施されることが多く、企業サイト全部をブログで構築するという発送は希薄でした。巨大化するにつれて更新手順が増え、作業が複雑化・煩雑化する企業サイトの運営をもっと簡単、効率よく、スピーディに行うために、ブログをCMSとして採用するケースが増えています。

 時系列に記事が並んだいわゆるブログ然とした見栄えではなく、普通のWebサイトと見分けがつかないようカスタマイズすることも可能です。社内の誰でも更新が可能で、コンテンツをすぐに公開できるメリットがあります。

 これまで外部の制作会社に頼んでいた修正・更新作業が自分でできてしまう便利さ・快適さは、一度体験してしまうと後戻りできないほどです。ただ、サイトの前面的な改修になるため、ビジネスブログの構築に慣れた制作会社に相談するのがよいでしょう

 プロフェッショナル向けのツールなら、ユーザー管理機能で複数のユーザーの権限を規定でき、更新スケジュールも備えているので、柔軟性を持たせたWebサイトの運営が可能です。コメント、トラックバックといったコミュニケーションを取りやすい仕組みを持っていますし、RSS配信、メールとの連携、ポッドキャスティングにも対応しているので、CMSとしても必要十分な機能を装備しているといえます。

 こちらもMovable Typesでの制作事例ですが、全国7都市に26の学校を展開し美容師・介護福祉士・インストラクターを育成する専門学校の三幸学園は22校分のサイトを一元管理しています。

 各校で4、5個のブログ、合計100ものブログを運営しているのですが、Movable Type をCMS的に使うことにより、作業を各校の担当者に分担することができるようになり、作業時間とコストの大幅な削減に成功しました。

そのほかのチェック項目

 ビジネスでブログを立ち上げる以上、ツール選びの失敗による後戻りやトラブルは避けたいものです。見落としがちなのが「サポート」と「ドキュメント」についてです。

<1> サポートの有無とその内容

 ブログに限らずソフトウェアを購入したり、サービスの契約をする場合、サポート体制が整っているかどうかは日々のスムーズな運営のために欠かせない重要なポイントです。どんなに使いやすいソフトウェアでも使っていれば疑問もわいてくるでしょうし、自分の手に負えないトラブルが発生することも十分にあり得ます。

 無料のツールだと、サポートがなきに等しい(あるいは全くない)場合もあります。そのときになって慌ててサポート内容を確認するのではなく、自社の望む内容が整っているか事前に調べておくべきでしょう。

<2> マニュアル・ドキュメントの充実

 <1>に関連しますが、困ったときに参照できるドキュメントが豊富かどうかもツール選びのポイントです。例えば初めて買ったデジタルビデオを、マニュアルを読まずに使いこなすことができないように、ブログ・ツールがいくら「カンタン」をうたっていても、情報源なしでは限界があります。そんなときに参照できる書籍があると助かります。さらに、広く普及しているソフトウェアであれば、ユーザー同士のネットコミュニティといった書籍以外のソースも存在します。

 リアルタイムでアップデートされ続けるコンテンツなので、書籍では追いかけられない最新情報や、双方向での情報のやりとりも可能になり、高い鮮度と充実した情報を得ることができます。

 使いやすいツールの条件は、そのツール自体の良しあしだけでなく、必要なサポートと求める情報が得やすい環境が整っているかを含めた総合的な実力で判断すべきです。

道具にもこだわろう

 「良いネタ(コンテンツ)さえあれば、よいブログが書ける」

 これはある意味正しくはあるのですが、やはり良い道具を使うに越したことはありません。

 料理に例えれば、包丁やまな板の調理器具がツールに当たり、食材や調味料がコンテンツに当たります。道具(ツール)だけでおいしい料理が作れるわけではなく、あくまで食材の質(コンテンツ)と調理人(ブログ執筆者)の腕に依存する部分が大きいのは当然なのですが、調理する人にとって気持ちよく、ストレスなく仕事に集中させてくれる道具があれば、さらに味を引き立ててくれることでしょう。

筆者プロフィール

中山 順司(なかやま じゅんじ)

シックス・アパート株式会社 マーケティング シニアマネジャー

愛知県出身。携帯電話キャリア、ITベンチャーを経て、現在はブログ・ソフトウェアベンダーのシックス・アパートでマーケティングに従事。これまで一貫してマーケティング業務に携わっている。


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