「売れる」市場の見つけ方マーケティング入門〜売れる仕組みの作り方〜(2)(1/3 ページ)

前回はマーケティング戦略の4P(Product/Price/Place/Promotion)を紹介した。だが、いくら4Pを入念に考えたところで、市場に顧客がいなければ意味がない。今回は「売れる」市場やターゲットを明確化する方法──セグメンテーションとポジショニングを紹介する。

» 2008年04月24日 12時00分 公開
[斉藤孝太,株式会社SIS(ストラテジック インテリジェント システム)]

4つのステップで、「売れる」市場を探し出そう

 前回は「そもそもマーケティングとは何か」をテーマに、時代の流れの中における「マーケティング」という言葉の定義や変遷を考えました。

 また、経営理念、ビジョンに対する「マーケティング」の位置付けや、合理的にマーケティング戦略を考えるための4P──商品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、販売促進(Promotion)の観点についてお話ししました。

 ただ販売の現場では、いきなりマーケティングの4Pから考え始めるわけではありません。4Pは「実際に顧客がいる、市場がある」ことを前提とするマーケティング手段です。

 「そもそも顧客がいない、市場がない」となれば、いくら4Pの精度を高めたところで売り上げにはつながりません。4Pを考える前に、まずは「狙うべき市場とターゲット」、「市場における自社(商品・サービス)の立ち位置」を明確にしておく必要があるのです。

 専門用語でいうと、前者が「セグメンテーション」、後者が「ポジショニング」となります。例えば無印良品では、「セグメンテーション=1人〜2人暮らしの20〜30歳代」、「ポジショニング=シンプルでおしゃれな生活の実現」と考えています。まずは売れる市場を明確化し、それを前提にして4Pを検討していくわけです。

 売れる市場を明確にするには、効率的な順序があります。それが以下のSTEP1〜4です。

・STEP1 狙う市場を考える

・STEP2 定めた市場を深く調べる

・STEP3 調べた事実を整理する

・STEP4 打ち出し方を決定する

 ではさっそく4つのステップに沿って、セグメンテーションとポジショニングを考えていきましょう。

STEP1 狙う市場を考える

 消費者の価値観が多様化し、商品力も拮抗している現在、売るための仕組みづくり=マーケティングを考えるうえでは、狙うべき市場をあらゆる角度から検討する、高度なセグメンテーションが不可欠です。

 しかし、少数アイテムの大量流通を狙うマスマーケティングの時代には、セグメンテーションも比較的簡単なもので済みました。この手法は、現在までに以下のような変遷をたどっています。

人口動態変数を活用したセグメンテーション

 かつては「年齢」「性別」「世帯規模」「ファミリースタイル」「年収」「職業」といった視点でセグメントをしていました。これらの視点は専門用語で人口動態変数(=デモグラフィック変数)と呼びます。市場がまだ細分化されていなかった時代にはこれらで十分でした。例えば「30歳代のファミリー層」「年収1000万円以上のキャリアウーマン」「1人暮らしの大学生」といった具合です。

 ちなみに、顧客の購入意向を調べたい場合は、決定木というデータマイニング手法を用いて、セグメンテーションを行うことができます。

 例えば、高額宝石・ジュエリー(30万円以上)を中心商品にしている企業が、ターゲットとなる女性に購入意向についてアンケートを行ったとします。その結果を決定木で分析すると、「50歳代以降の女性で、子供が独立していて、夫の年収が800万円以上の女性がもっとも購入意向が高い」という結果が得られる、といった具合です。

 このセグメンテーションは大変分かりやすい反面、大きな落とし穴があります。それは同じグループでも同じ購買行動をとるとは限らないことです。

サイコグラフィックを活用したセグメンテーション

 そこで考えられたのが、人の生活様式や、パーソナリティーを基本にしたセグメンテーションです。アンケート調査で生活や嗜好に関するさまざまな質問を投げかけ、その結果を分析してセグメンテーションを行います。ただ、この手法は一見万能に見えますが、人のライフスタイルと購買行動にどの程度の相関関係があるのか、疑問が残ります。

購買行動を活用したセグメンテーション

 さらに現在では、ライフスタイルより具体的な「アクション」を基準に考えるセグメンテーションも行われています。アクションには3つの代表的な考え方があります。

・購入時の判断基準

例えば自動車メーカーの場合、「加速時の感覚と、スポーティーなデザインを重視して自動車を購入する人」「とにかく燃費を重視して自動車を購入する人」などが考えられます。

・購買行動

例えばスーパーマーケットの場合、「1週間に3回以上スーパーに通う専業主婦」「最近1年間で、50万円以上、来店が52回(1週間に1回)以上の人」などが考えられます。

・購入経緯

家電メーカーの場合で考えると、「店頭で商品を見て、店員に相談して購入を判断する人」「TVで商品を見て、ネットの口コミを見て購入を判断する人」などが挙げられます。

 以上のようにセグメンテーションには人口動態変数、サイコグラフィック、購買行動という3つの基準があります。マーケティングの現場では、重点の置き方は違うものの、3つの基準を併用する企業が多く見受けられます。

 例えば、紳士服の製造・小売り業の場合、人口動態変数から「20〜30歳代の年収400万〜800万円」、サイコグラフィックから「日ごろからおしゃれに気を使い、仕事場でトレンドリーダー的な役割を担う人たち」、購買行動から「年間3着以上、1着当たり3万5000円以上お金を使う人」といった具合です。

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