「売れる」市場の見つけ方マーケティング入門〜売れる仕組みの作り方〜(2)(2/3 ページ)

» 2008年04月24日 12時00分 公開
[斉藤孝太,株式会社SIS(ストラテジック インテリジェント システム)]

STEP2 定めた市場を深く調べる

 さて、狙うべき市場をセグメントできたら、次はその市場について詳細に調べる必要があります。その視点となるのが、顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)──の3Cです。

顧客(Customer)

 顧客がどんなターゲット像なのかを考えます。具体的には、どんな基本属性を持っているのか、求めているベネフィットは何なのか、どんな購買アクションをとるのか、といったことです。最近では、ネットリサーチ、顧客プロファイリングがよく行われています。

 ネットリサーチとは、インターネットを利用した市場調査の手法で、インターネットリサーチ、Web調査とも呼ばれています。最も大きな特徴は、従来の調査に比べて、人件費や郵券代がかからずコンピュータへのデータ再入力が不要のため、驚くほど低コスト、短納期で実施できる点です。日本の人口の70%以上がインターネットを利用するようになった今、母集団としての回答モニターの片寄りも緩和されています。

 さらに、「1年以内に首都圏で1戸建てを買った人」、「健康食品を定期的に買い続けている人」などのターゲット設定が可能なこと、「アピール度が競合品に比べて落ちていないか」「店頭で目に留まっているか」など、市場でのポジショニングを確認することができます。また、自由回答に数多く答えてくれるために、グループインタビューでとらえていた個々の消費者の本音を大枠でとらえることもできます。

 一方、顧客プロファイリングとは、顧客の購買履歴を心理的な側面から分析し、行動特性を明らかにすることです。もともとFBIが犯人像の推定に使っている「プロファイリング」を企業のマーケティングに応用したもので、「人」の内面、外面を掘り下げていくことが特徴です。

 事例としてはTSUTAYAが挙げられます。同社はアンケートによるプロファイリングの結果、顧客を「アクション大好き、お気軽ユーザー」「幅広く何でも見るヘビーユーザー」「ドラマ・ラブストーリー大好き」「ハリウッド映画大好き」「ミニシアター大好き」「特に映画に関心はない」「世間の動きに追従型」「怖いものをみたい」という8つのセグメントに分類し、行動特性に応じたマーケティングを展開しています。

競合(Competitor)

 競合となる企業について調べます。市場シェアはどうなっているのか、どの企業が競合になるのか、競合の強み・弱みは何なのかを調べることになります。効率的な調べ方も紹介しておきましょう。

 市場シェアについては業界団体や協会のWebサイトで公開している場合があります。競合企業の動きについては、なかなか分からないとお嘆きの方も多いと思いますが、オープン情報のデータベースが大きく役立ちます。

 業界新聞・業界誌などの情報をデータベース化し、検索できるサービスがあるのです。例えば流通経済研究所、日本能率協会、日経テレコン21などが挙げられます。競合企業が分かりづらい場合は、アンケートで「いつも買っている○○がなかったとします。そのときあなたは○○の代わりに何を買いますか?」と質問すれば容易に分かります。

自社(Company)

 自分の会社がどんな状況なのかを考えます。どんな企業文化なのか、どんな商品・サービスのラインアップを持っているのか、どんな人材がいるのか、マーケティング予算としてどの程度投入できるのか、といったことを考えます。

3Cで俯瞰すると自社の状況がよく見える

 ではここで、あるショッピングセンターを例にとって、簡単に3Cをまとめてみましょう。具体的には以下のように整理していきます。

顧客(Customer)

 ターゲット市場の縮小、顧客のライフスタイルの急激な変化、購買行動の多様化、通販チャネルの一般購買化が進んでいる。

競合(Competitor)

 市場の二極化傾向、床面積の大型化、大手SCの出店攻勢、小売市場の更なる縮小、ネット通販の強化が進んでいる。

自社(Company)

 こうしたなか、自社の状況は、顧客セグメントが不明確、費用対効果の測定が甘い、PDCAの仕組みがない、新規顧客の獲得が伸びない、既存顧客の買い上げの伸び悩み、といった問題が挙げられる。

 3Cで整理すると、自社を取り巻く環境がどういう状況にあるか、とても明確になるのが分かるのではないでしょうか。ただし、3Cで分析する前に実施しておくべきことがあります。セグメンテーションした市場の規模、成長性、収益性について調べるのです。

 小さすぎる市場、利益が薄い市場は、そもそも利益を上げられる可能性が低いわけですから、再考しなければなりません。無理だと判断した場合は、また、STEP1に戻って再度セグメンテーションを行いましょう。

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