売れ行きは、商品・価格の「演出」で決まるマーケティング入門〜売れる仕組みの作り方〜(3)(1/2 ページ)

「マーケティングの4P」のうち、最も重要なのはやはり商品。しかし、魅力ある商品を用意すれば必ず売れる、というわけではない。市場動向に合わせて商品をどう打ち出すか、どう見せるか、どう感じさせるか──商品と価格の演出次第で、売れ行きは大きく変化する。

» 2008年06月09日 12時00分 公開
[斉藤孝太,株式会社SIS(ストラテジック インテリジェント システム)]

4Pの基本は、やはり商品

 「マーケティング」という言葉の定義や、マーケティングの4Pについてお話しした第1回に続いて、第2回は「どのマーケットを狙うか」「消費者の心理の中で、どんなイメージを持ってほしいのか」を決める、セグメンテーションとポジショニングについて解説しました。

 それでは、いよいよマーケティングの本番というべき、マーケティングの4Pの具体的な中身に入っていこうと思います。今回は4Pのうち、商品(Product)と価格(Price)についてお話ししましょう。

 まず「4Pのうち、最も重要なものを挙げてください」と問われたら、あなたは何と答えますか? やはり商品ではないでしょうか。企業は活動を継続しなければなりません。そのためには自社の商品を購入し続けてもらうことが最も重要になります。

 価格、流通、販売促進という商品以外の3Pにおいて、いくら精度の高い展開を行ったとしても、商品そのものが継続して購入してもらえるような価値を持っていない限り、どのような施策にも効果を期待することはできません。

 商品戦略において、重要な視点は大きく2つあります。1つ目は「どのように新商品を開発していくのか」、2つ目は「商品を継続して販売していくために、どうすれば良いのか」という視点です。ではさっそく、それぞれについて詳しく説明しましょう。

魅力的な商品を開発する4つのステップ

 新商品の開発プロセスは、一般に、以下の4つのステップで行います。

 ざっと流れを説明すると、まず企業内、消費者、取引先、外部調査機関などから、新商品に対するアイデアをとにかくたくさん集めます。続いて 1つ1つのアイデアについて、販売の可能性をはじめとする市場性や、商品開発が実現可能かといった技術的側面から評価を行います。

 さらに、候補にのぼった商品のテスト・マーケティングを行い、市場適合性、販売可能性などを見極めたうえで、 生産体制や市場導入体制を本格的に整備します。

 ここで注目したいのは、「STEP1 アイデア創出」において、ITツールが有効に活用されていることです。例えばテキストマイニングツールです。商品アンケートの自由回答をはじめ、コンタクトセンターやWebサイトへの問い合わせなど、顧客からテキストデータを収集、分析し、それを商品開発のヒントとして生かすわけです。

 例えば、自動車会社が新車の開発を考えているとします。ファミリーカー、スーパーカー、4WD、軽自動車など、各カテゴリの購入者に、「なぜ、その車を購入したのか?」「その車で最も気に入っている所はどこか?」といった質問を自由回答で答えてもらいます。

 そこで出てきたテキストをテキストマイニングツールで分析すると、安全、信頼、燃費、高性能など、カテゴリごとのキーワードが浮かんできます。そのキーワードをベースに、「キーワードとは違う価値を提供するのか」あるいは「キーワードの発展形、複合形を目指すのか」といった具合に、商品コンセプトの方向性を考えることができるわけです。

状況に応じて、売り方を変えるのがコツ

 商品開発の次に問われるのが、「商品を継続して販売していくために、どうすれば良いのか」という視点です。そのときに押さえておかなければならないのが、商品ライフサイクルです。

 商品ライフサイクルは、販売スタートから終了まで、商品の生涯を、導入期、成長期、成熟期、衰退期という時間軸に沿って表したもので、各段階における市場の様子とマーケティングの基本方向を示してくれます。順に説明すると以下のようになります。

ALT 商品の生涯を4つのフェイズでとらえ、その時々で売り出し方を変える

導入期

 この時期の売上規模は低水準で、利益もあまり多くを期待できません。企業には商品認知の拡大と、ブランド力の向上が求められます。現在、このフェイズにある製品としては、エコライフ商品やICタグなどが挙げられます。特にエコライフ商品は、店頭での販売面積はまだまだ小規模ですが、今後は環境意識の高まりに伴い、どんどん広がっていくでしょう。ICタグはコスト面の問題から、未だ世間に浸透しているとはいえない状況ですが、産学官が連携して、認知度向上に取り組んでいます。

成長期

 売り上げが一気に拡大し、利益が最も多く出るフェイズです。競合企業も現れるため、商品シェア拡大 を狙って、大衆相手に大量に売りさばくマス・マーケティング戦略が求められます。現在、このフェイズにあるジェネリック医薬品は、医療に詳しい層だけではなく、一般消費者にも認知してもらえるよう、積極的に広告展開を行っています。モバイル通販も10〜20歳代だけではなく、30〜40歳代への広がりを通じて、市場が一気に拡大しています。

成熟期

 売上規模の拡大もひと息つき、低成長に突入し始めるフェイズです。価格が下がっていくため、利益はあまり出ません。パッケージ戦略プロモーション戦略など商品力とは直接関係のない副次的な対策が求められます。

例えば、携帯電話や薄型(液晶・プラズマ)テレビなどが当てはまります。携帯電話は機能よりもデザインが重要になっており、薄型テレビは家電量販店におけるスペースシェア(どのくらい陳列されているか)が重要になっています。

衰退期

 このフェイズに入ると売り上げ高は大きく低下し、もはや一部の企業でしか利益を出せません。そのために、多くの企業がどんどん撤退していきます。ここまで来ると、もはや撤退か、製品や市場設定の一部を修正してライフサイクルを延長するライフサイクル・エクステンションを図るしか方法がないのです。例えば、カメラのフィルムや呉服など、消費者のニーズがごく限られたものになってしまった商品です。

 ただ、こうした商品ライフサイクルはあくまで基本形であり、すべての商品、業界に当てはまるわけではありません。例えば、ごく一時期だけの流行モノのような商品は、導入してすぐに衰退期を迎えてしまいます。一方で何十年経っても、いっこうに衰退の兆しを見せない商品もあります。例えば、インスタントラーメンはその好例です。

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