SEがお金とやりがいを手に入れるために必要なこと情報マネージャとSEのための「今週の1冊」(1)

SEや情報マネージャにお勧めの書籍を幅広い視点からセレクトし、毎週1冊ずつ紹介してきた@IT情報マネジメント ブックガイドコーナー。今回からリニューアルして情報量を拡充させました。今後も役立つ本、興味深い本をより詳しく紹介していきますのでお楽しみに。

» 2010年07月06日 12時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

SEの勉強法――成功するスキルとキャリアの磨き方

ALT ・著=克元亮
・日本実業出版社
・2010年6月
・ISBN-10:4534047126
・ISBN-13:978-4534047120
・1500円+税
※注文ページ

 SaaSをはじめとするクラウドサービスの進展により、企業はビジネスに必要な機能を、必要なときに、迅速に入手できる環境が整いつつある。だが「迅速に入手」できるだけでは意味がない。それを収益向上につなげられるか否かは、経営戦略に基づいて設計・構築したIT基盤と、そこに適切にサービスを組み込むノウハウを持っていることが前提条件となる。当然と言えば当然のことだが、多くの企業がより手軽にサービスを入手できる環境が整うだけに、今後はそうしたIT活用の“基礎体力”が、従来以上に企業の競争力を左右するポイントになると言えるだろう。

 そんな背景もある中で、本書は“経営戦略をITに落とし込む”ための人材ニーズが、企業の間で年々高まっている点を指摘。一部ではIT関連職が “3K”などと評されている中、上流工程に携わる人材は総じて年収が高く、やりがいもあることをあらためて述べたうえで、「“川下”から“川上”に上るには何を、どう勉強すればよいのか」、SEとしてキャリアアップするための道筋を具体的に解説している。

 印象的なのは、コンサルタントやITスペシャリスト、アプリケーションスペシャリストなど、SEのキャリアパスが多様化している中で、目指すべきキャリアを3つに絞っていることである。ITを使った戦略実行・業務改革を支援する「コンサルタント」、システム化ニーズに基づいてアプリケーションの選定やシステムの設計を行う「ITアーキテクト」、システム開発の実行責任を担う「プロジェクトマネージャ」の3つだ。

 これは、この3つが多様化したポストの中でも柱となる存在であり、 例えば「ITスペシャリストがマネジメントスキルを高めれば、プロジェクトマネージャになれる」といった具合に、「スキルさえあれば相互に行き来することは可能」という見解に基づいたものである。

 また、3つのポストを“専門職”とはとらえず「役割」と定義している。これも業務の現場では、場合によっては「1人で何役もこなさなくてはならない」ケースもあるほか、そうでなくても、互いの役割の内容を知っていなければ、上流工程における連携作業は難しいためである。このように、あくまで現実的な視点から“身のあるキャリアアップ”を促している点が本書の大きな特徴といえる。

 「SEが身に付けるべき知識」として、モデリング手法などを解説する以前に、まず「コミュニケーションスキル」から紹介している点も印象的だ。それも、業務上の問題や要件を把握する「ヒアリング」、関係者間で意思統一を図る「ファシリテーション」、対立事項に妥協点を見いだすべく導く「ネゴシエーション」、情報を文書化する「ドキュメンテーション」、課題の分析などを説明する「プレゼンテーション」の5つにスキルを分類し、各スキルを高める方法を極めて具体的に解説している。これも結局、ユーザー層との意思疎通が実は一番難しく、企業のIT活用を阻んでいる最大の要因であるという“現実”を反映したものなのだろう。このほか、「勉強を楽しみ習慣化する方法」など「確実に成果を出すための勉強フレームワーク」も収めている。

 中長期的な視点が必要なこともあり、キャリアパスの問題は、忙しい日々の中でつい後回しにしてしまいがちなものだ。その点、本書では「いま何をすべきか」「その行為が何につながっているのか」が分かる。“上流”を目指している人は、ぜひ本書を手に取ってみてはいかがだろう。本書に沿って身に付けたスキルは、将来と言わず明日からでも、仕事の“やりがい”と“成果”を高めてくれるはずである。


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