本だけではなく仕事の問題も“積ん読”状態のあなたへ情報マネージャとSEのための「今週の1冊」(42)

日ごろから情報収集に励んでも、自分の仕事や人生に生かせなければ意味がない。だがクラウド時代の今、デバイスやサービスを活用すれば、情報をもっと上手に役立てられる。

» 2011年05月17日 12時00分 公開
[@IT情報マネジメント編集部,@IT]

リーディング3.0 少ない労力で大きな成果をあげるクラウド時代の読書術

ALT ・著=本田直之
・発行=東洋経済新報社
・2011年4月
・ISBN-10:4492044167
・ISBN-13:978-4492044162
・1500円+税
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 ビジネスやプライベートの充実のために効率良く読書をし、日々有用な情報を抽出している。だが思うように整理できず、結局活用し切れないまま死蔵してしまう。場合によっては、気になる本を入手しても、結局読めないまま“積ん読”状態にしてしまう――こうしたことに心当たりがある人は多いのではないだろうか。

 そんな悩みを解消してくれるのが本書「リーディング3.0」である。既存の読書術とは異なり、抽出した情報を確実に生かすために、スマートフォン、クラウドサービス、そしてソーシャルメディアという、近年を代表する3つの情報アイテムを使いこなす方法を伝授してくれる作品だ。

  タイトルの「リーディング3.0」とは、筆者の考える「読書」の定義に由来している。「リーディング1.0」は「単に本を読むこと」であり、インプットを主な目的としたもの。「リーディング2.0」は「本を読む」という行為を効率的にし、さらに読書で得た情報を活用するという「インプットとアウトプットがセットに」なったものを指す。筆者はこの1.0と2.0の違いについて、読書の在り方が「パッシブな読書から、アクティブな自己投資へ」進化したものだと解説する。

 では「リーディング 3.0」とは何か。それは「インプット、ストック、サーチ、シェア、フィードバック」という5つのステップで構成するものだという。具体的には、インプットした情報を、テクノロジを使ってエバーノートやグーグルの各種サービス、また電子書籍といったクラウドサービス上にデータベースとしてストックする。さらにストックした情報を随時サーチし、「人とシェアして、フィードバックをもらい、より質を高める」というものだ。

 というのも、クラウドサービスによって、いつ、どこにいても、必要な情報にアクセス可能となった。これが働き方に変革をもたらし、オフィスに限らずカフェや自宅などでも仕事をする「ノマドワーカー」も現れ始めた。筆者は、こうしたクラウドサービスが生み出した「制約のない働き方」は「制約のない読書」も可能にしたと述べ、これを存分に生かした効率的かつ発展性のある上記のような読み方が、読書という行為を一層価値あるものにしてくれると解説するのである。

 では、読書で得た情報に「レバレッジをかけて」、より自分にとって価値あるものとするためには具体的に何を心掛ければ良いのだろう? 本書では、そのためのデバイスやサービスの使い方を詳しく解説しているのだが、ここではその本質を整理した「レバレッジ・リーディング 6つのポイント」の中からいくつかを紹介しよう。

 まず大切なのが「読書は投資である」という認識を持つことだという。「ビジネス書には先人の知識やノウハウが詰まって」いる。よって、「自分でゼロからスタートして試行錯誤するより、先人のノウハウを工夫して使った方が「より早く、より少ない努力で」成功にたどり着ける。これを受けて「忙しいから本を読む時間がない」のではなく、「本を読まないから時間がない」のだと述べている点が印象深い。

 2つ目は「速読ではなく多読」。これは読書の目的が「素早くインプットすること」ではなく、「仕事に生かし、書籍代と自分の時間という投資に見合う結果を確実に出すこと」にあるためだ。そして3つ目は「本のスクリーニングにこそ時間をかけよ」。これは「なんでもたくさん読めばいい」わけではなく、貴重な時間を投資する以上、「人生の目標、現状の課題に合致するテーマでなければ、どんなに良い本でもためにはならない」ためである。

 また、「分厚くて立派な本だと、挫折してしまう危険」があるため、「最初はすらすら読めるようなとっつきやすい本を」と勧めていることや、「理論が中心となる教養型」より、「すぐに応用できるノウハウが書かれた経験型の本がおすすめ」としている点も興味深い。この辺りは、読書もそうだが、ビジネスの進め方、さらにはITシステムの選択の在り方としても、そのまま当てはまりそうである。

 実際、著者は「ビジョンなき読書は、理念なき経営者がいくらテクニックを学んでも効果を発揮しないのと同じ」だと指摘する。従って、「何のために本を読むのか」「得た知識や情報をどのように役立てたいのか」「知識や情報を役立てた自分は、どう進化したいのか?」「自分だけではなく、周りの人にコントリビューションすることはできるのか?」をしっかりと考えておくことが大切なのだという。これらはまさしくビジネス遂行のポイント、いや、ビジネスに限らず人生を充実させるためのポイントとも言えるだろう。突き詰めて考えていくと、“成功のための本質的な条件”は何事も変わらないのかもしれない。

 何かと忙しい上、厳しい社会状況にあり、ともすれば本に限らず、日々の仕事や人生の問題も“積ん読”状態になりがちな昨今、本書は読書ノウハウを通じて、仕事や人生にレバレッジをかける上でも有益な指南書になってくれるのではないだろうか。


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