IT部員を利用部門に転出させることは、利用部門のニーズをくむのに有効な手段であり、多くのマネージャもそれを認める。しかし、実際に有力部員を放出するとなると、猛反発するのも事実だ。IT部門と利用部門の間でうまくローテーションを回すためにはどうすればよいのか。
ローテーションがうまくいきません。どうすればよいのでしょうか?
IT部門と利用部門との間でローテーションが必要なことは理解できます。しかし、IT部員を転出させればIT部門の戦力ダウンになりますし、転出先でも有効活用されていないのが現実です。どのような対策を講じるべきでしょうか。
IT部門と利用部門との間のローテーションに関しては、これまでにも本連載で何回か取り上げてきました。
しかし、そこでの趣旨は、ローテーションが企業、IT部門、利用部門、当人にとって必要であること。そのローテーションを行うときに留意すべきことが中心でした。今回は、「なぜローテーションが不活発なのか?」と「それに伴う戦力ダウンをどう防ぐか?」について検討します。
IT部門の課長(グループリーダー)は、他部門とのローテーションが効果的であることは十分に認識していますし、定期的なローテーションに賛成だと思っています。ところが、実際に「部下の誰々を出せ」といわれると頑強に抵抗します。総論賛成・各論反対なわけですね。
誰でも優秀な部下を出すのには反対するものですが、特にIT部門では「彼がいなくなると○○のシステムが維持できなくなる」という点が大きな理由でしょう。それをいわれると、IT部長も人事部もその理由を覆すだけの論拠を持っていません。
受け入れ側としては、すぐ戦力になる人を希望します。それが無理なときは、若い人を希望します。しかも、他部門から見るとIT技術者は、「狭い分野での高度な知識はあるが、他部門にはなじまない」ように思いがちです(本質的には、このIT技術者に関する誤解を解消することが重要なのですが、ここでは割愛します)。そこで、IT部門のベテランには、他部門からお呼びが掛からないことになります。
ベテラン当人も、いまさら他部門に転出するよりもIT部門の方が自分に適しているし、これまでの経験を生かせるし、高い評価も得られます。自己申告でも、IT部門にとどまりたいと書くでしょう。
このような理由が重なることにより、ベテランのIT部員はなかなか転出されません。
それでもある程度の定期異動は暗黙の了解事項になっており、数名を転出させる必要があります。すると、当面のシステム運営に影響の出ない初心者が候補になります。受け入れ側としては、むしろその方を歓迎するし、当人も異動に特に強く反対はしないでしょう。
そこで、IT部門には、長年この部門だけで過ごしてきたベテランと、腰掛け的にIT部門に来ている初心者に二極化してしまいます。
すると、ベテランは初心者に業務を振ることができないので、1人で多くの業務を背負い込むことになり多忙になります。初心者は大した手助けができないので、多忙なベテランを傍観しているだけになります。そして、ますます業務がベテラン個人に依存するようになって異動させることが困難になります。2007年問題は、この典型的な現象だといえます。
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