前回に引き続き、情報システム企画やプロジェクト計画の段階における問題を中心に、仲間同士や上司と部下の間で行うディスカッションのテーマを集めてみた。今回は、プロジェクト管理(特にその基礎になる進ちょく管理)に関する問題を取り上げた。
前回から少し間が空いてしまったので、少し「なぜディスカッションなのか?」というおさらいをしておく。
昨今、多くの企業において、IT要員の企画力やプロジェクト管理力の能力開発が大きな課題になっている。しかし、企画や管理といった「概念構成力の占めるウエイトが大きい」これらの能力分野では、系統的に知識を覚える・理解するといった勉強では、なかなか実践に結び付く能力レベルには至らない。
また、「漫然と経験を積む」という方法で能力が向上するという問題でもない。意識と知識と行動を結び付け、脳を活性化させる方法が求められる。この観点から、OJTと併せ、オフJTとして、ディスカッションが能力育成に極めて有効であることをいままでに何度か述べてきた。
こんな目的での、仲間同士の、あるいは上司と部下の間におけるディスカッションのテーマをいくつか挙げてみた。子供がおもちゃ箱の中から好きなおもちゃを取り出して遊ぶように、その時々の必要に応じてテーマを選び、討議をしていただければと思う。
大切なのは結論を出すことや問題項目を整理することではなく、ディスカッションを通じた相互啓発、脳の活性化といったディスカッションの過程そのものである点に注意していただきたい。
まず、こんな問題を考えてみてはどうだろうか。
100日で仕上げる予定のプロジェクトがあったとする。そのプロジェクトの50日たった時点での全体の進ちょく度は、予定の50%に対して40%であった。まだ期間は半分残っている。全体から見れば1割の遅れである。これぐらいは、頑張れば何とか挽回(ばんかい)可能と考えてよいだろうか?
答えは“NO”である。
40%をこなすのに50日を要したわけであるから、いままでのペース(速度)は、
40/50=0.8(%/日)である。
もし、残りの60%の仕事を、残りの50日間で仕上げようとするなら、
60/50=1.2(%/日)のペースで進めなくてはならない。
つまり、1.2/0.8=1.5となり、いままでの1.5倍のペースあるいは生産性で進めなければ、予定日での完成は望めないわけである。現実問題として、一般的に考えてまず無理なペースだろう。
しかし、こんなことを「なるほど」と知っているだけでは仕方がない。「だから、こうしなければならない」までを、ここから考えておくことだ。これが本当の力の源になってゆくのだ。
そこで、もう1つの問題が出てくる。テーマ(1)のケースで、遅れの原因やそのときのプロジェクトの状況が、どのような場合なら、挽回(ばんかい)の可能性があるのだろうか。
自らの経験や、見聞きしたことなど、できるだけ具体的な内容で議論してみてください。
プロジェクト管理の会議などに出ると、よく「この作業は現在○日遅れている。こちらは予定どおり」などと、ある時点の状態についての報告が多いようである。
しかし、本来は「○日遅れているが、現在、日に△にまでペースが上がってきているので、最終的な遅れは◇日にできそう」などといった見方が大切なのだ。
「何日遅れ」というのは、予定の速度が出ていなかった結果だ。進ちょく管理のポイントは「速度の把握とそのコントロール」である。ポイントは兆候を早くとらえ、早く手を打つことにあるのだ!
プロジェクトにスピードメーターを付けるには、どんな方法があるだろうか。できるだけ、数多く考えてみてください。それらの具体化について議論してみてください。
自動車でも、速度を上げるときには、アクセルを踏んでエンジンへの燃料供給を増やし、エンジンの馬力や回転数を上げて車の速度を上げる。急坂になれば、さらにアクセルを踏み込まないと速度は落ちてくる。つまり、車の速度は直接コントロールできているわけではないのだ。
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