企業のデータ保護におけるさまざまな技術トレンド情報資産管理とバックアップポリシー(6)(2/2 ページ)

» 2006年03月11日 12時00分 公開
[藤巻 敬久,日本ヒューレット・パッカード]
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事業継続・災害対策への取り組み

 本連載でも何度か触れてきましたが、現在企業ではさまざまな変化や要求に対して、柔軟に対応できる体制を持っておく必要があります。その中でデータ保護として重要項目とされているものに、事業継続・災害対策が挙げられます。特に地震が多い日本においては最重要課題の1つといえるでしょう。また、企業の集まる大都市を狙ったテロという新たな脅威も生まれています。

 万が一、災害に遭遇してしまってITシステムに多大なダメージを受けた場合、最悪のケースとしてシステムダウンによる業務停止が発生し、膨大な経済的損失ばかりでなく、社会的な信用も失うことになります。場合によっては、ビジネスの継続が困難になったり、最悪、倒産という事態にもつながります。現在、事業継続・災害対策に関するソリューションは数多く存在していますが、過剰な投資や無駄を防ぐためにも、計画策定から構築・運用を含めて、経営的な観点も視野に入れたシステム構築をする必要があります(図5)。

ALT 図5:事業継続・災害対策における投資コストと損失

 災害発生時には、ハードウェアやソフトウェアを新しい物と入れ替えることによって復旧は可能です。しかしながら、データはいったん破壊されてしまえばと復旧は非常に難しく、顧客情報や製品情報、業務履歴など企業の資産ともいえる貴重なデータを失うことになります。この貴重なデータを、企業として適正な投資でいかに守るかは災害対策システムを構築するうえで重要なポイントです。

 図6は、データの重要度、復旧までにかかる期間および、コストからそれぞれのニーズに合った災害対策システムの実装例を挙げたものです。低コストのソリューションから大陸間でのデータコピーによるシステムまで、さまざまなニーズに対応することが可能になっています。この中から、大規模遠距離の災害対策システムを例に解説します。

ALT 図6:ニーズに合わせた災害対策の実装例(クリックで拡大)

 遠距離災害対策システムを構築する場合、遠距離間でのデータリプリケーションを提供する「HP StorageWorks Continuous Access XP」(図7)を利用し、遠隔地へのリアルタイムなバックアップを提供します。HP StorageWorks Continuous Access XPは、高負荷環境で高性能のリモートミラーリングを提供し、すべての重要なデータの継続的な可用性と致命的なエラーの保護を提供し広範囲のオープンシステム環境向けにホストに依存しないアレイベースのリモート復旧を提供します。

ALT 図7:HP StorageWorks Continuous Accessの概要

 また、FICON、ESCONまたはファイバチャネル経由で使用できるため、高性能、管理の単純化および低コストを実現します。共有ミラーリングおよびホスト接続インターフェイスを使用して、アレイリソースの利用効率を向上させることも可能です。また、あらゆるリモートミラーリングベースのソリューションと緊密に統合できるため、データ移行から高可用性サーバクラスタリングまで広範な作業に向けて配備できます。

 クラスタ構成でデータのミラーリングをする場合は、「HP StorageWorks Cluster Extension XP」を使用します(図8)。HP StorageWorks Cluster Extension XPはさまざまな障害や故障、および災害によるシステムダウンに対する保護を提供し、SunSolaris、AIX、Linux、およびMicrosoftオペレーティングシステムを使用する都市間距離でのクラスタなどの高可用性サーバクラスタリングソリューションに、XPディスクアレイのリモートミラーリング機能を緊密に統合することを可能にします。この長距離ソリューションにより、災害復旧トポロジの堅牢性が向上し、また、ミラーペアのフェールオーバ、フェールバック、リダイレクションを自動的に行うことにより、復旧を高速化することができます。

ALT 図8:HP StorageWorks Extensionの概要

 今回、ご紹介したHP StorageWorks Continuous AccessとHP StorageWorks Extensionは、事業継続・災害対策ソリューションのごく一部でしかありません。事業継続・災害対策のシステムを構築する際には、上記で解説したとおり、データの重要度、復旧までにかかる期間および、コストを分析し要求に合ったシステムを構築する必要があります。

 今回ご紹介した大規模遠距離の災害対策ソリューションのほかにも、NASによる低コストのファイルバックアップ、テープバックアップによるテープのオフサイト管理、低価格のディスク装置構成で行うミラーリングなど、さまざまなストレージソリューションがあり、図5に示すようにバランスの取れた計画、手法を選択することが重要であることを忘れてはいけません。

著者紹介

▼著者名 藤巻 敬久(ふじまき ひろひさ)

日本ヒューレット・パッカード株式会社 ストレージワークス製品本部ビジネス開発部リーダ

1982年横河ヒューレット・パッカード入社?計測器、コンピュータ製品の品質管理に従事

1991年?オプティカル、テープ、ILM製品の製品マーケティング担当として従事

2005年7月?ビジネス開発部リーダとしてストレージビジネス開拓、拡大に悪戦苦闘中


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