事業継続管理のための組織づくりと導入作業事業継続に真剣に取り組む(4)(1/2 ページ)

事業継続計画を実効性のあるものにするには、推進のための組織体制を確立し、実際の導入を進めていかなければならない。今回は組織づくりと導入作業のあり方を紹介する。

» 2006年12月28日 12時00分 公開
[喜入 博,KPMGビジネスアシュアランス株式会社 常勤顧問]

 これまで、企業を取り巻く緊急事態に対応したBCPの策定と、それを組織活動として位置付けて継続的に機能させるための社内の仕組みであるBCM構築に当たっての検討項目、作業などをご紹介しました。これらの作業を目標どおりに推し進めるには、まず、組織体制の確立が重要です。また、策定したBCPの実効性を保ちつつ社内活動として定着させるためには、関係者を巻き込んだ導入作業が必要です。

 今回は、この組織づくりと導入作業に関してご紹介します。

組織体制の確立

 BCPの策定およびBCMの構築においては、それを推進する組織体制を確立することが重要です。適切なBCP/BCMを社内の業務活動として定着させ、事態発生時に事業への影響を最小限にするには、経営者のBCP/BCMに対する理解、支援とともに、有効な組織体制を確立することがカギとなります。

 BCP/BCMの組織づくりには、次の3項目を行います。

1.プロジェクトチームの責任者とリーダーの決定

2.プロジェクトメンバーの選出

3.プロジェクト計画書の作成

1. プロジェクトチームの責任者とリーダーの決定

 BCP/BCMの構築活動は、経営者による構築の方針が出された後に、プロジェクトチームを組織化することから始まります。BCP/BCM構築は社内の各部門に渡るため、また現業をよく熟知した専門家の知識が必要なため、通常、各部門から選出したメンバーによるプロジェクトチームを編成します。

 プロジェクトの編成ではまず、責任者とリーダーを任命します。BCM責任者は、経営層の意見をプロジェクトチームに反映するとともに、逆にチームからの要望などを経営層と調整します。また、部門間の調整事項の最終決定を行います。

 実質的にプロジェクトを推進するのがリーダーです。リーダーは、社内の業務体系の全般の知識とともに、マネジメント力、BCMに関する知識がある専任者が望ましいです。リーダーにはBCM構築のキーパーソンとして、図1のような資質が望まれます。

ALT 図1 BCM構築のリーダーに求められる資質

 通常、リーダーはBCMを主管する部門から選出します。KPMGが国内を対象に2006年に実施した「事業継続マネジメント(BCM)サーベイ2006」の調査において、「BCMや災害・障害対策部門はどの部門か」への回答(重複回答可)では、総務部門が69%、情報システム部門が30%、経営企画/管理部門が27%、リスク管理部門が19%、法務/人事部門が17%となっています。企業の業務内容にもよりますが、リーダーはこれらの部門から選出することが多いと想定します。ちなみに責任者は、同調査では代表取締役/CEOが59%と最も多く、取締役の16%がそれに続いています。

2. プロジェクトメンバーの選出

 責任者とリーダーの選出後は、この2名を中心に、プロジェクトのほかの構成要員を選出します。プロジェクトの構成要員は、事務局と各部門からの代表メンバーです。事務局は、リーダーを補佐し、各部門での作業の取りまとめ、部門間の調整作業を行います。

 事務局には、企業規模にもよりますが、BCM構築において重要となる部門から数名程度を選出します。BCM構築は、施設や設備、情報システム、要員など、企業のリソースに密接に関係するため、これらの担当部門である総務部門、情報システム部門、人事部門から選出を行います。事務局は少なくとも1名の専任者が必要です。また他の事務局メンバーもこの仕事に全体の50%以上が充てられることが望ましいです。

ALT 図2 BCM構築プロジェクト体制の例

 プロジェクトメンバーは、BCM構築の対象となる部門から選出することになります。このメンバーは、図2における「各部門代表メンバー」ですが、適切な人材をメンバーとして選出するには、リーダーを中心に事務局の最初の仕事として、各メンバーの作業内容、必要な知識・経験を整理します。

 プロジェクトメンバーの主な役割は、事業影響度分析(連載第3回を参照)の実施と、それぞれの現場における事態に対応したBCPを策定(あるいは推進)することです。プロジェクトメンバーは、専任である必要は必ずしもありませんが、BCP策定時にはかなりの負荷がかかることも覚悟しておく必要があります。BCMの構築に関して社内にその専門家がいない場合には、外部のコンサルティング会社の活用も考えられます。

3. プロジェクト計画書の作成

 プロジェクトチームの編成後、全社として効果的なBCMを構築するためのプロジェクト計画書(以下、「計画書」といいます)を策定します。計画書は、作業内容や成果物の大枠を示すもので、計画書は最終的に経営者層の承認を得ます。その結果、予算化され、それぞれの部門がBCPの策定と導入作業を行い、さらにBCMとしての全社管理体制を確立することになります。

 計画書に記載する主な項目は次のようになります。

計画書に記載する主な項目

1 BCM構築における基本方針

2 成果物の体系および内容

3 プロジェクト体制と役割分担

4 各フェーズにおける作業内容と工数

5 スケジュール

6 予算

7 リスクとその対処


 図3は、計画書で記載されるスケジュールの例です。実際の計画書では、より詳細に記述することになりますので、大まかな例としてお考えください。バックアップサイトの建設など、実現に2〜3年程度の時間が必要な事項もありますが、多くの場合は、図3の例のとおり、1年間程度でBCMの構築を完了させるケースが多くなってきています。

ALT 図3 BCM構築プロジェクトのスケジュール例
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