ラックに供給される電源は、許された容量の範囲内で利用する必要がある。正しく利用しないとブレーカーが落ちることがあるほか、発熱の問題を助長する可能性がある。今回はラックにおける電源の利用方法を紹介する。
この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。
前回は、データセンターにおいて各ラックに電源が供給される仕組みについてお話ししました。このようにして各ラックに供給された電源は、決められた範囲内で正しく利用しなければ、電源容量のオーバーでブレーカーが落ちてしまい、せっかくデータセンターが緻密(ちみつ)に計算して無停電で電源を供給してくれていても、無意味なものになってしまいます。次回以降で詳しく触れますが、機器が発する熱の問題もこの電源と直接関連します。電源を各ラックで適切に利用するということは、データセンターを利用する側の大きな責任ということもできます。
そこで今回は、適切に電源を利用するということに主眼を置いて、電源容量の計算や実際に利用する場合の考え方について解説していきます。
日本のデータセンターでは、一般的に各ラックに交流100Vという家庭用電源が供給されているのは前回までにお話ししたとおりです。そして各データセンターでは、各ラックでどのくらいまで電源容量を使ってよいかという値も決められています。
電源容量は、多くの場合「A」(アンペア)で示されますが、まれに「W」(ワット)や「VA」(ブイエー)で示される場合もあります。VAは、Aと供給電圧の「V」(ボルト)を掛け合わせたもので、100V30Aであれば、300VAとなります。
また、WはVAに「力率」(りきりつ)を掛けたもので、力率60%であれば、W=VA×0.6という式で導き出されます。
ここで、力率という値が新しく登場します。この力率というのは、見かけ上の電力と有効電力の割合を示します。見かけ上の電力はVAの値に相当し、これを皮相電力と呼びます。一方、実際に交流を利用する場合には位相ずれというものが起こるため、実際の電力は皮相電力と異なります。この実際の電力を有効電力と呼びます。
ここでは、力率について詳しく説明しませんが、ラック全体の電力の計算をする場合、本来はこの力率を考慮する必要があります。
力率は、機器が交流の電力をどれだけ効率的に利用できるかという値であるため、使用する機器ごとに力率は異なります。しかし、多くの場合、力率を表示した機器がないために正確に計算ができないのが実情です。最近の機器では、力率が60〜80%というのが多いようです。
さて、これらの値を駆使して、ラックで必要な電力量を計算することになります。具体的な例を使って計算してみましょう。
入力電圧 | 定格電力 | |
---|---|---|
機器A | 100V | 500W |
機器B | 100V | 10A |
機器C | 100V | 200VA |
上の例ではまず、すべての単位を合わせる必要があります。一般的にデータセンターの1ラック当たりの電源容量はAで与えられる場合が多いので、ここでは、Aに単位を揃えます。また、力率は70%であると仮定します。すると
機器A:500/(100×0.7) =7.1A
機器B:機器B:10A
機器C:機器C:200/100=2A
で、合計19.1Aが定格電力上の必要な電力となります。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.