ITIL V3はV2からどこが変わったかITIL V3から知るITサービス管理(2)(2/3 ページ)

» 2008年03月17日 12時00分 公開

ITIL V2におけるサービスサポートとサービスデリバリ

 ITIL V2のサービスサポートとは、日常的に生じるITサービス運用のサポートとして必要なプロセス、機能をまとめたものです。

 ユーザーからの問い合わせは、すべてサービスデスクで受け付け(SPOC:単一窓口)、そこで記録された障害に対する暫定対応や恒久的な対応はインシデント管理と問題管理で行います。本番環境への変更が生じる場合、変更管理で審議(CAB:変更諮問会議)の上、リリース管理のもとで変更を実施することになります。本番環境を構成するソフトウェアやハードウェア(CI:構成アイテム)は構成管理によって記録されます。

 一方、ITIL V2のサービスデリバリとは、ある程度の長期間を視野に入れたITサービスの運用計画についてまとめたものです。

 ITサービスの考え方のベースとなる提供品質をサービスレベル管理で定め、それによって生じる提供コストをITサービス財務管理でモニタリングします。システムを安定的に稼働させるために必要な分析をキャパシティ管理、可用性管理、ITサービス継続性管理で行い、PDCAサイクル(計画→実行→確認→修正)を通じて継続的な改善を実現します。

サービスサポート Service Support

インシデント管理 Insident Management サービスの低下や中断に結び付くすべてのイベントを記録・分類して適切な専門技術者に渡すのが主な役割。実際にはユーザーからのコールやハードウェアやソフトウェアのエラーなど、さまざまなイベントが対象になる。ビジネスへのインパクトや緊急度に応じて優先度を決め、解決行動をとる。
問題管理 Problem Management インシデント管理は、発生したインシデントについて元の状態に戻った時点で終了するのに対し、重要なインシデントに対して原因を調査し、再発防止のための措置をとるのが問題管理だ。発生したインシデントの根本原因を見つけて改善するほか、インフラの弱点を見つけて改善することも含まれる。
構成管理 Configuration Management インシデント管理や問題管理の結果、あるいはサービスの追加などによりシステムに何らかの変更が加わる。それを逐一記録し、変更のプロセスを管理するのが変更管理だ。変更によって新たなインシデントが発生することは日常茶飯の出来事だが、それを追跡可能にし、さらに変更が速やかに、サービス品質への影響を最小限にして実現できるようにする。
変更管理 Change Management エラー修正はじめソフトウェア、ハードウェアのバージョンアップや新規投入などの変更の際、変更CIや新規CIを、テストした上で本番環境に導入するための計画や調整、実行などを行う。
リリース管理 Release Management システムの構成アイテム(CI)を正確に把握するために、構成管理データベース(CMDB)を用いて管理する。CIが変更された場合には即座にCMDBに反映できるようにする。またCIの詳細情報だけでなく、CI間の相互の関係も記録し、CIの変更が及ぼす影響範囲を特定できるようにする。
サービスデスク Service Desk ユーザーから最初の連絡を受け付ける窓口。こうした窓口はヘルプデスクと呼ばれることが多いが、問題の記録・解決・監視ばかりでなく、変更要求の受け付けなど、従来のヘルプデスクよりも広い領域をカバーする。ユーザーコールに対する一次対応は通常、サービスデスクが行う。
表1 ITIL V2のサービスサポートにおける5つのプロセスと1つの機能。サービスデスクのみが機能である(ITIL V2に基づきアクセンチュア作成)

サービスデリバリ Service Delivery

サービスレベル管理 Service Level Management ITサービスの種類と品質に関してユーザーとの合意を図り、実行する。SLA、SLMを行うことといえ、サービスに関して明確に評価できる計測可能な尺度を求めることが前提となる。
ITサービス財務管理 Financial Management ITサービスを提供するのにかかるコストを管理する。システムのコストと効果を算出するのに不可欠。課金や予算の設定・決定の基礎になる。
キャパシティ管理 Capacity Management ITリソース、パフォーマンス、需要などを管理し、適切なキャパシティ計画立案や、負荷の管理などを行う。
変更管理 Change Management エラー修正はじめソフトウェア、ハードウェアのバージョンアップや新規投入などの変更の際、変更CIや新規CIを、テストした上で本番環境に導入するための計画や調整、実行などを行う。
可用性管理 Availablity Management ダウンタイムを少なくし、ダウンした場合にも迅速にサービスを復旧できるようにする。コストとビジネス上の要求とを合わせて考えて、適切なレベルの可用性を設定して管理する。
ITサービス継続性管理 IT Service Continuity Management ビジネスが中断するような災害に対して、復旧対策の準備と計画を行う。ビジネス継続性に直接関連しており、ビジネスの要求に合わせて復旧までの期限を設定して実行できるようにしておく。また、災害の予防や回避、影響の低減なども含む。
表2 ITIL V2のサービスデリバリにおける6つの管理(ITIL V2に基づきアクセンチュア作成)

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