ストレージ・ネットワークの管理上司のためのストレージ・ネットワーキング (4)(1/2 ページ)

ストレージ・ネットワークの導入・構築の後には、運用・管理という作業が待っている。今回はストレージ・ネットワークの管理手法と、管理の内容について説明する

» 2006年08月26日 12時00分 公開
[辻 哲也,ブロケードコミュニケーションズシステムズ]

 前回は「ストレージ・ネットワークの導入」と題して、データの定義を中心に、ストレージ・ネットワーク導入に際して考慮すべき事項を解説した。今回は「ストレージ・ネットワークの管理」と題して、ストレージ・ネットワークのさまざまな管理手法を紹介していく。具体例を挙げて説明した方が読者にとっての理解が深まると考え、当社(ブロケード・コミュニケーションズ)製品を例とした説明がたびたび登場するが、多くの場合は他社製品でも同様である。あらかじめご了承いただきたい。

ストレージ・ネットワークの管理手法

 ストレージ・ネットワークの管理手法にはさまざまなものがあるが、図1に示したようにSNMP、Syslog、機器のAPIを使う手法が代表的である。

ALT 図1 ストレージ・ネットワークの管理手法

 この中で、SNMP (Simple Network Management Protocol)による管理は最もよく使用されているものだ。SNMPはIPネットワークにおける代表的な管理手法だが、ファイバチャネル(FC)をベースにしたSAN環境でも数多く利用されており、FCスイッチやストレージ装置などSANベースの機器のほとんどが対応している(図2)。

ALT 図2 FCスイッチとSNMP (ブロケードのスイッチの場合)

 SNMPを用いてストレージ・ネットワークを管理するうえで注意すべきなのが、RFC 1213で規定され、すべてのSNMP製品が対応するMIB-? (RFC 1213-MIB)は、TCP/IPネットワークを前提にしており、FC-SANには対応していないということだ。つまり、MIB-?でIPネットワークレベルでのトラフィック監視や統計情報の収集などを行うことはできるが、ファイバチャネル・ネットワークのそれらを監視することはできない。そこで、ファイバチャネル製品を取り扱うベンダ各社で構成されているFibreAllianceからFibreAlliance MIB (FC mgmt Integration MIB)が提供されており、これによりファイバチャネル・ネットワークで、各ポートのさまざまな情報を取得することができる。

 さらに機器それぞれの独自機能を管理するために、ベンダごとにプライベートMIBも提供されている。ちなみにブロケードの場合、Brocade ConnectというWebサイトにアクセスして、これらを入手することができる。「SNMPでどの項目を監視するのがいいか」という質問を受けることも多いが、各FCポートのスループットやリンクアップ/ダウンなど、パフォーマンスやエラーに関する項目を監視することを推奨している。これらに関しては、本稿後半でより詳しく解説したい。

 UNIXサーバやネットワーク機器の管理手法として一般的なSyslogも、FC-SANの管理手法としてよく用いられている。SNMPの場合と同様に、FCスイッチなどの機器が「クライアント」となり、Syslogサーバに各種ログを送信する形態である。スイッチのようなネットワーク機器の場合、通常はログが機器内に保存されるため、それぞれのスイッチに個別にログインしなければ、ログを確認することができない。また一定数のログが保存されると、古いものから順に上書きされてしまうこともある。そこでSyslogサーバ (Syslogd)を用意し、そこに各機器からログを送信して一元管理する方法が一般的に取られている。Syslogd (Syslogデーモン)はUNIX系のOSでは標準で提供されており、フリーで使用できるWindowsベースのSyslogdも存在するため(図3)、比較的容易に利用することができる手法である。

ALT 図3 WindowsベースのSyslogd(Kiwi Syslog Daemon)

 アプリケーションソフトウェアからストレージ・ネットワーク全体を管理するために、ストレージやスイッチベンダが提供するAPI (Application Programming Interface)を用いるのも、これまで一般的に採用されてきた手法である。ただこの場合は、管理アプリケーション(ソフトウェア)側でそれぞれの機器ベンダが提供するAPIに合わせてソフトウェア開発を行う必要があり、より多くの機器をサポートしようとすればするほど対応するAPIが増えることになるため、開発効率が悪い。

ALT 図4 SMI-Sのモデル

 このような問題を解決するため、いい換えれば「ストレージ管理の標準として高機能でオープンなインタフェースを提供」するために、ストレージ関連製品の業界団体であるSNIA(Storage Network Industry Association)が作成した仕様が、SMI-S(Storage Management Initiative Specification)である。SMI-SはDTMF(Distributed Management Task Force)のCIM (Common Information Model)とWBEM (Web Based Enterprise Management)規格をベースにしており、ストレージ装置やスイッチなどのデバイスとストレージ管理アプリケーションの間の通信を標準化するものである(図4)。SMI-Sの詳細については、SNIA JapanのWebサイトなどを参考にしていただきたい。

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