サーバ仮想化技術の過去・現在・未来サーバ仮想化技術の可能性と限界(1)(1/3 ページ)

CPUリソースの利用を最適化する手法として注目されるサーバの仮想化技術。連載の第1回目として、サーバ仮想化技術の背景と全般的な動向を紹介する。

» 2006年03月07日 12時00分 公開
[古明地 正俊(野村総合研究所 情報技術本部情報調査室 上級研究員),@IT]

 サーバ統合やシステムリソースの有効活用を目的とした仮想化技術の利用が拡大している。従来、仮想化技術はハイエンド・サーバでの利用が中心であり、その利用シーンも限定的であった。しかし、IAサーバ向けの仮想化ソフトの性能および品質向上により、利用促進に弾みがついている。

 今後、仮想化技術を支援するプロセッサの普及や、多数の仮想サーバを一元的に運用運理するツールとの連携により、仮想化技術は急速に普及すると予想される。本連載では、サーバ仮想化技術に関して、動向、活用例、評価ポイントの3つに分けて解説する。

サーバ仮想化が求められる背景

サーバ統合によるコスト削減およびガバナンスの強化

 仮想化技術が注目されている背景の1つに、ユーザー企業のサーバ統合に対する期待の高まりがある。サーバ統合の主目的は、情報システムの複雑化に伴い増え過ぎてしまったサーバを、より高性能な1台のサーバに集約し、運用コストや管理負荷を軽減することである。しかし、最近では仮想化技術を利用したサーバ統合により、コスト削減のみならず、俊敏なITシステム構築やITガバナンス強化を実現しようとする機運が高まっている。

 事業環境の変化に伴って新しい業務ソフトウェアの追加や既存の業務ソフトウェアへの変更が必要になった場合、従来は、その都度新しいサーバの構築や既存サーバの組み替えを行っていた。しかし、仮想化技術を利用してITリソースのプールを構築することにより、即座にITシステム構成をシステムニーズに合わせて増減することが可能となる。

 また、分散したシステムを1つにまとめることにより、セキュリティ上の問題や個人情報の管理などコンプライアンス上の問題点をきちんとコントロールできるようにすることも重要視されている。日本版SOX法の素案にITの利用が明文化されるなど、もはやビジネスとITは不可分なものであり、企業ガバナンス強化はサーバ統合を行う際には重要目的の1つとなっていくと予想される。

システムリソースの有効活用

 通常のシステムでは、CPUやネットワークなどのリソースは、ピーク負荷での応答性能などを保証するよう、余裕を持ってサイジングされている。そのため、負荷が低い通常の運用時にはリソースがほとんど使われていない。通常時に比べて3倍のピーク負荷を想定したシステムでは通常時のリソース使用率は30%となってしまう。

 システムの処理のピークは、業務、業態によって異なる。例えば、1カ月間の業務で発生した物品や金銭の集計を行うような月締め時、半月や季節ごとなど年に2〜4回程度の棚卸し時、あるいは1日の中でも始業時刻や終業時刻に、1日に必要なデータの参照や登録などが集中するなどのさまざまなケースがある。

 現在、企業で使われているアプリケーションの大部分は、特定のハードウェアリソースが固定的に割り当てられており、負荷変動に対して企業内にある余剰リソースを柔軟に割り当てるといったことは行われていない。そのため、複数の業務システムを処理している企業では、定常的に負荷(リソースの使用率)が低いシステムと、負荷が高いシステムが存在することになる。

 しかし、リソースを仮想化し、業務量に応じて必要なシステムへ動的にリソースを割り当てることができれば、システムリソースの有効活用が可能になる。

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