プロジェクト管理技法はなぜ徒労に終わるのか?やる気を引き出すプロジェクト管理(1)(1/2 ページ)

昨今PMBOK、EVMSといったプロジェクトマネジメント技法が注目されている一方、それらを自社のプロジェクトに適用しても効果が上がらなかったという声も多い。これらの技法を有効活用するには、まずプロジェクトマネジメントの“本質”を理解する必要があるのだ

» 2008年02月25日 12時00分 公開
[安達裕哉,トーマツ イノベーション]

危機に瀕(ひん)するプロジェクト管理

 ひと昔前に比べ、最近は“プロジェクト”という言葉を頻繁に耳にするようになりました。

 会社は新プロジェクトを次々と立ち上げ、一定期間内で成果を挙げることをプロジェクトの管理者に求めています。システム開発をはじめとして新規商品・事業の立ち上げなど、プロジェクトはどのような組織にあってもとても重要な活動を担うようになりました。

 その一方で、プロジェクトを成功させるための方法、すなわち“プロジェクトマネジメント”の方法についてはまだ万能薬といえるものがなく、年々複雑化するプロジェクトの内容に対応できていないのが実情です。つい先日も、大規模な金融系システム開発プロジェクトに失敗し、大きな赤字を出した企業の事例が新聞に掲載されました。プロジェクトマネジメントに苦慮している会社にとっては、他人事ではありません。事は一刻を争うのです。

 本連載記事ではこれからプロジェクトマネジメントについて、どのような規模のプロジェクトでも使うことのできる手法を皆さんにお伝えしていこうと考えています。

 「果たしてそんな方法があるのか?」

 「いい加減なことをいうな!」

とおしかりを受けそうですが、本連載でこれからご紹介する方法は、これまで100社以上のIT企業に提供され、現場の100人以上のプロジェクトマネージャへのインタビューやコンサルティングを通じて着実に成果を上げている方法です。最初から順を追って読んでもらえれば、納得していただけると思います。どうか最後までお付き合いください。

応用の利かないメソドロジーは意味がない

 本連載では、大きく4つのパートに分けて話を進めていきます。

1.「プロジェクトマネジメントとは何かを考える」

2.「プロジェクトマネジメントがなぜ難しいのかを考える」

3.「プロジェクトマネジメントにおける課題」

4.「プロジェクトマネジメントの手法」

 まずは今回と次回で、1番目の「プロジェクトマネジメントとは何かを考える」について述べていきたいと思います。

 あらかじめ注意していただきたいのは、本連載は「プロジェクトマネジメントの詳細な手法や技術についての解説」に主眼を置いたものではないということです。

 「それが一番知りたいんだよ」、という方もいらっしゃると思います。もちろん、4つ目のパート「プロジェクト管理の手法」ではプロジェクト管理の詳細な手法についてもきちんとご紹介しますので、ご安心ください。

 それでは、なぜあえてこんなことをいうのか、と皆さんは疑問に思うかもしれません。理由はこうです。優れたプロジェクトマネジメントの手法や技術はとても役に立ちます。しかし、プロジェクトは1つ1つ異なる目的を持って編成されたものです。従って、そのマネジメント手法もプロジェクトの規模・目的やリーダーの個性など、さまざまな要因によって異なってきます。

 ですので、あるプロジェクトでうまくいった手法が、必ずしも別のプロジェクトで役に立つとは限りません。手法や技術は、応用できなければ役に立たないのです。本連載でご紹介する方法では、応用が利くように、まずプロジェクトマネジメントの本質について皆さんに深く考えていただくことが最も大切なことだと考えます。

 例を挙げましょう。皆さんは、PMBOKをご存じかもしれません。 “Project Management Body of Knowledge”(プロジェクトマネジメント知識体系)の頭文字をとったもので、米国プロジェクトマネジメント協会(PMI)が発行しているプロジェクトマネジメントの詳細な手法に関する標準ガイドです。

 PMBOKの中には品質管理やスケジュール管理の技術などが事細かに書かれており、網羅的にプロジェクトマネジメントの技術を学ぶ際には確かに役立ちます。特にプロジェクトマネージャを志す方は、ぜひ一度ご覧になることをお勧めします。

 しかし皆さんもご存じのとおり、プロジェクトマネジメントの技術を学んだプロジェクトマネージャがプロジェクトをうまく運営できるとは限りません。プロジェクトマネジメントの技術習得とプロジェクトマネジメントの実践は、別の問題なのです。学んだプロジェクトマネジメント技術をそのままプロジェクト現場に適用しても、最悪のケースでは無駄な書類と手間が増えるだけで、プロジェクトをマネジメントするどころか逆に足かせになりかねません。緻密なスケジュールを立て、標準化されたさまざまなツールを用いたとしても、それだけではプロジェクトはうまくいかないのです。

 逆に、プロジェクトマネジメントの本質がしっかり理解できていれば、PMBOKをはじめとしたプロジェクトマネジメントの手法を臨機応変に応用し、自分たちの事情に合わせて使いこなすことができますから、きっとプロジェクトはうまくいくことでしょう。

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