適性検査で分かった中国人技術者採用の傾向と対策現地からお届け!中国オフショア最新事情(4)(1/3 ページ)

中国オフショア開発を手掛けている多くのベンダは、離職率の高さに悩まされているだろう。今回は、中国人プログラマやブリッジSEの適性を採用段階でいち早く検査する方法などを紹介する。

» 2006年09月23日 12時00分 公開
[幸地司,アイコーチ有限会社]

 今回は、中国人プログラマやブリッジSEの適性を採用段階でいち早く検査する手法について考えます。

ALT 大連の町並み。名物である霧の中に超高層マンションが海辺に立ち並ぶ。上層階には芸能人が多数住んでいるという

 オフショア開発に携わってきたものの、これまで中国人と接触したことがない日本人は意外に多いと思います。ただし、今日の話題は、そんな方にも役立つ内容です。なぜなら、日本にいながら、しかもオフショア開発とはまったく無縁の職場であったとしても、ある日突然、外国人従業員があなたの隣に座ってあなたと肩を並べて仕事をするようになるかもしれないからです。

 しかも、その外国人従業員は、あなたと同じプロジェクトであなたの直属の部下として一緒に仕事するかもしれません。場合によっては、ある日突然あなたの上司が中国人になるかもしれません。そんな思いで今日の話題をお届けします。

中国人プログラマが会社にとどまる理由は?

 中国ベンダに勤める幹部社員の話を聞くと、中国人若手プログラマが会社を辞める最大の理由は「報酬への不満」です。次に「転職によるキャリア機会の獲得」。そして、「いまの職場ではスキル向上できない」「福利厚生への不満」「将来性の不安」と続きます。

 中国人が会社を辞める最大の理由は「報酬」ですが、中国人プログラマが会社にとどまる理由も、果たして「報酬」でしょうか。米系コンサルティングファームが調査した中国人従業員の意識調査によると、「報酬に満足」という理由でいまの会社にとどまっている割合は、たった15%で、上位3位にすら入っていませんでした。

 それでは、一体中国人IT技術者(特に優秀な人材)を動機付ける最大の要因は何だと思いますか? 筆者が発行するオフショア開発メールマガジンの読者からいただいたご意見の一部を紹介します。

  • 会社にとどまるというより、チームにとどまるといった方が妥当ではないかと考えております。

(中国人読者A)

  • フィリピン人の場合、職場の良好な人間関係(特に労使の人間関係)があると、定着率が高いです。

(日本人読者A)


・「中国ベンダは発注者との間に心理的な上下関係は持っていない」


一般にはそうかもしれませんが、弊社が発注する中国ベンダはちょっと違います。サービス精神など、日本にはまだ遠く及びませんが、中国では「お客さまは神様」だと考える会社が増えてきています。


日本企業ほどではありませんが、発注者との間に心理的な上下関係を持って当然だと思っている中国ベンダも少しずつ増えていると思います。

(日本人読者B)



 一般に、中国企業に勤める従業員は会社への忠誠心は弱いといわれますが、実際には部課レベルの身近な組織への帰属意識は思いのほか強いようです。その求心力の源は、強いリーダーシップと「和気あいあい」が共存する雰囲気にあります。

 国際ビジネスの多様性に不慣れな日本人技術者にとって、中国的な「上下関係」や「なれ合い」の世界は奇妙に感じるかもしれません。しかし、これからのオフショアリング全盛時代を生き抜く技術者には、あいまい性や不確実性を許容する度量がますます要求されてくるでしょう。

中国人は集団で辞表を提出する!?

 筆者が「中国人プログラマが会社を辞める理由」を研究し続けた結果、「会社を辞める」理由と「会社に定着する」理由とでは、明確な違いがあることが分かってきました。

 そして、ある中国人読者が、中国人プログラマと直属上司との関係の例を見事に説明してくれました。

 中国では、従業員と会社や上司とのそりが合わないとき、従業員が集団で辞表を提出することは珍しくありません。自分が頑張ったことをリーダーがちゃんと見ているか、リーダーが自分をどう評価しているか、中国のプログラマたちはとても強い関心を持っています。

 

 リーダーに認められたら、昇進や給料アップに直接つながります。同時に、自分のリーダーが昇進したら、自分も一緒に連れて行ってくれるかもしれないと考えている人は少なくないと思います。

 

(中国人読者C)



 このように、私たちが思っている以上に、中国人の部下とリーダーの関係は深いようです。また、職種や会社での地位・権限によっても、中国人が動機付けられる要因は異なります。一般的な中国人プログラマが会社にとどまる最大の要因は、「職務能力が高まり、職場で十分に発揮され、そして正当に評価される」と実感することです。

「なんだ、それじゃあ日本人と同じじゃないか!」

 と思われる方がいるかもしれません。そうです。基本的には日本人と同じなのですが、平均的な日本人IT技術者と比べて中国人IT技術者は、「報酬」への執着が強いと評されています。私の経験からも、これは紛れもない事実です。実際、彼らは能力次第でいくらでも給料が上がります。

 ですが、その一方で、あるレベルの給料や地位に達すると、今度は職場での裁量権(非公式なリーダーシップを含む)や人間関係がより重視されます。筆者らの最近の研究で、中国では外資系企業よりも国内企業での出世を好む傾向があることが分かってきました。これは、外資系企業における、本国からの細かな指示や面倒な規律規範に縛られず、自分の裁量で自由に仕事を進めたいという欲求の表れだと分析しています。

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