中国ベンダには“嫌いだ”とはっきりいおう現地からお届け!中国オフショア最新事情(5)(2/3 ページ)

» 2006年11月21日 12時00分 公開
[幸地司,アイコーチ有限会社]

人件費の高騰で中国以外に目を向け始めた日本企業

 このような中国における人件費高騰を背景に、中国以外でオフショア発注先を探す動きが活発になってきました。地政学的な理由からも、中国一辺倒のリスクを避けたいためです。そこで、インドを外した地域における有力候補として注目を集めているのがベトナムです

ALT 中国トップの大学である「清華大学」

 ベトナムでは、昨年あたりから大手企業を中心にパイロット発注が相次いでおり、日本に留学するベトナム人技術者も増加の一途をたどっています。ベトナム企業はインドや中国と比べて規模が小さいこともあり、一気にブームが広がることはないでしょう。ですが、これからも徐々にベトナム発注が増加するのは間違いなさそうです。

 オフショア発注の経験が浅い日本人に「中国人技術者のイメージ」を質問してみたところ、肯定的な意見と、否定的な意見がそれぞれ半分ずつ挙がってきました。1度でも中国を訪問したことのある人は、中国人に対して肯定的なイメージを持っているようです。

  • まじめ
  • 上昇志向が強い
  • 会社への帰属意識が弱い、ある程度勤めると会社を辞めてしまう
  • せっかち。見切り発車する
  • できる人が育たない
  • 頑固、気が利かない
  • 返事が適当

 一方で、ほとんどの日本人は、ベトナムに対しておおむね良好な印象を持っています。昨今、お茶の間を賑わしている日中の政治ネタが、オフショア開発関係者の心理に多少なりとも影響しているようです。そして、ベトナムに次いで話題に上る機会が多いのがフィリピンです。

 オフショアリングの歴史をひもとくと、フィリピンはベトナムよりもずっと先輩格です。しかし、日本での知名度ではベトナムに及びません。そのため、中国、ベトナム、フィリピンの得意分野や法務的な違い、各国の知財保護への取り組みについての質問を受けることがあります。

 一般的な貿易業務についてはJETROなど公的機関が頼りになります。ですが、オフショアリング業務に特化した専門性の高い質問に対してはなかなか満足いく回答は得られません。そんなときには、オフショア開発フォーラムに問い合わせるといいでしょう。

 オフショア開発フォーラムは、専門家登録された約40名のボランティアスタッフで運営されている任意団体です。国籍もさまざまで、現場の開発者から企画部門・PMOまで幅広い人員で構成されており、オフショア開発の発展と開発者コミュニティによる情報交換を目的としています。そのほか、海外パートナーの開拓や、中国発注ガイドラインの整備などで培ったノウハウの共有化にも力を注いでいます。

 オフショア開発フォーラムでは、外国人にも分かりやすい仕様書の書き方や、相手が正確に理解しているかどうかを判定する方法、リスク所在の判定基準などの質問に答えてくれます。

オフショア開発トラブル対策(日本人の主張編)

 ここまではオフショア開発初心者の声を紹介しました。ここからは、オフショア開発経験者の声に耳を傾けてみましょう。筆者はこれまで無数の失敗談を見聞きしてきました。その中でも、日本人が主張するオフショア開発における代表的な失敗原因を以下に列挙します。

  • 事前の計画が甘かった
  • 開発プロセスの微妙な違い
  • 中国の意識「その場しのぎの対策」「プロセス定義の甘さ」
  • 会話がかみ合っていない
  • 品質意識の共有がなされていないこと
  • 中国側の単体テストが甘い
  • ソースレビューの概念自体がよく分かっていない
  • 中国は目に見える画面に頼り過ぎて、裏の動きへの意識が弱い
  • 「日本形式でお任せください」と威勢よく請けるが、中国には伝わっていなかった

 個々の失敗原因については、いまさら解説するまでもありません。ですが、物理的に離れた場所で作業するオフショア開発では、“問題が発生したときの責任の切り分けが、極めて困難だ”ということを念頭に置いておいてください。

 後から「計画が甘かった」と分析できたとしても、一概に「中国側が悪い」や「日本側が悪い」と断言できない場合がほとんどです。製造業では「問題が発生したら、Whyを5回繰り返して真の原因を追究せよ」といわれますが、オフショア開発ではそこまでしつこくやらないのではないでしょうか。その結果、発注側は問題発生の原因を、一方的に中国側に求めてしまいます。

  • 中国は「動けばいい」といってテストを軽視しがちである
  • 中国は不具合が見つかってもあいまいにして流す傾向がある
  • 中国は上流工程でバグをつぶすことに消極的だ

 日本と中国とで「品質保証の見解の差がある」といえば、聞こえは良いですが、改善案を示す際に「良い/悪い」の議論を展開するとらちが明きません。逆説的に思えるかもしれませんが、オフショア開発では相手を「良い/悪い」で評価するよりも、「好き/嫌い」で論じる方が、健全な精神状態を保ちやすいことがあります。

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