前回のアーンドバリュー・マネジメント(EVM:Earned Value Management))を基本に、今回は実際にソフトウェアを使って、EVMを実践する。
今回で、本連載「これから始める進ちょく管理」は最終回となります。4月以降の会計年度から原則適用されることになった工事進行基準とは何か、そして「工事進行基準に対応可能なプロジェクトマネジメントとは?」というテーマで話を進めてきました。そう、工事進行基準に向けた解説ということではなく、「こういう点を意識することで、工事進行基準の波が近くにやって来ても、プロジェクトマネジメントは容易に対応できるのではないか」ということを書いてきたつもりです。
今回は、私自身がマイクロソフトのプロジェクト管理ソフトウェアである「Microsoft Office Project Standard 2007(Project)」を使用して、どのようなマネジメントを行っているかを、実例に近い形で紹介しようと思います。
Projectを随分と使いこなされているマネージャ諸氏には物足りない内容かもしれませんし、ほかのソフトウェアを使っているマネージャには分からない点があるかもしれませんが、「今後、何らかのソフトウェアを使ってみようかな」と検討されているマネージャの皆さんにとって、何かしら参考になる点があれば幸いです。
なお、Projectにはプロジェクトマネジメントのための多くのオプションが用意されています。そのため、利用環境によっては今回の記事で紹介するように操作しても、記事で紹介したようにならないことがあります。その点はご了承ください。
今回の連載を含め、私が毎回、@IT情報マネジメントに記事を掲載していただくまでの流れを、サンプルプロジェクトとして表してみました。実際には、もう少しいろいろとやることはあるのですが、あくまでサンプルとして簡略化しています。開始から終了までの2週間足らずのミニプロジェクトです(画面1)。
このように、必要なタスクを書き出し、(想定の)期間を記入し、タスク間のリンクを設定し……というところは、実際のプロジェクトでもマネージャやリーダーおなじみの作業ではないかと思います。事実、プロジェクトの予定表としての記述はこれでも十分、足りていると思います。
しかし、今回は最終的にEVMによるデータ計測をアウトプットするまでの紹介をする予定ですので、もう少し操作を加えています。
プロジェクトの進行状況を追跡・監視していくために、この時点でのプロジェクト計画を基準値として保存します。これらのタスクの実際の進行状況が、当初予定したスケジュールと比較してどうなっているかを把握するための基準値として保存しておこうというわけです。
そのためには、「ツール」−「進捗管理」−「基準計画の設定」メニューを選択し、「基準計画の設定」画面(画面2)を表示します。
実際のプロジェクトでは、最初に立てたプロジェクト計画が途中で変更されることはよくあります。すると、進行状況を確認する場合に、「一番初めに立てたプロジェクト計画と比較したい」場合があれば、「直前に変更したプロジェクト計画(最新版)と比較したい」場合もあると思います。そのような場合のために、Projectでは、基準計画を複数保存しておくことができるようになっています(画面3)。
今回は説明をシンプルにするために、通常の「基準計画」として保存することにします。
さて、ここに実際の進ちょく状況を入力していくことにします。まずは、進ちょく状況入力前の「ガントチャート(進捗管理)」画面を表示します。すると、各タスクに2本ずつのバーが表示されているのが分かります(画面4)。
いまのところ、実績の進ちょく状況が入力されていないため、すべてのタスクについて2本の線は同じ期間を指しています。
作業期間に加えて作業時間を設定し、基準計画の保存項目に加える作業を行っていきます。そのために、「ガントチャート(進捗管理)」画面を表示したままの状態で、「ウィンドウ」−「分割」メニューを選択します。
すると画面が分割され、上側に「ガントチャート(進捗管理)」画面、下側に「タスクフォームビュー」画面が表示されます。各タスクの「基準作業」欄に、計画の基準とする作業時間を入力していき(画面5)、最後に基準計画として保存し直します。保存すると、「ガントチャート(進捗管理)」画面の「基本作業時間」の欄に、入力した基準作業時間が表示されるようになります(画面6)。
さて、ここまでで基準計画の保存が完了し、プロジェクトスタートのスタンバイが整いました。
最初のタスクは「記事構成を考える」タスクです。ここに実績値を記入してみることにします。予定では1月19日月曜日のスタートのはずが、のっぴきならない事情が発生し、翌日1月20日火曜日の作業着手となってしまいました。なおかつ、遅れを取り戻せるでもなく、初日終了時点で1日分の作業しか終わっていません。プロジェクト的には、早くも1日遅れの状態です。
この状態を、進ちょくの実績値として入力します。
実績値を入力するために、「ツール」−「進捗管理」−「タスクの更新」メニューを選択し、「タスクの更新」画面を表示します。そして、「達成率」や「開始日」など、現実の状況を入力していきます(画面7)。
その後、あらためて「ガントチャート(進捗管理)」画面を表示してみると、実績値を入力するまでは、同じ期間を指していた2本の線にズレが発生していることが分かります(画面6)。
この2本の線の下側(黒い線)は先ほど保存した基準計画です。そして、上側(赤い線)がクリティカルタスク(プロジェクトの余裕がゼロになるところ)を表しています。この状態で分かるのは、このままのペースでいくと2週目の最終日である1月30日の金曜日で終わる予定が、2月2日の月曜日完了になってしまうということです。これだけでも、EVMの一要素である「実際の完成日はいつになるのだろう?」ということが視覚的に分かりますね。
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