業務の可視化で、多くの関係者を巻き込め!ユーザーサイド・プロジェクト推進ガイド(19)(1/2 ページ)

さまざまな分野で効果が語られている「可視化」は、企業システムの要求仕様の策定には必須ともいえるものだ。そして業務を可視化することは、要求定義以外に数々のメリットがある。

» 2007年06月08日 12時00分 公開
[山村秀樹,@IT]

プロジェクトに必須な業務プロセスの可視化

 ユーザーサイドのプロジェクトチームは、システムを使ってやるべきことを慎重に検討し、それをベンダに的確に伝えなければなりません。

 そのために、業務プロセスの分かりやすいドキュメントを作成すること──すなわち、業務プロセスを可視化することが必要です。いい方を変えると、ユーザーサイドのプロジェクトチームの仕事は、業務プロセスを可視化しないと始まらないといっても過言ではない、ということになります。

 数多くの分野で可視化の効用や利点が語られています。さまざまな可視化がありますが、業務の可視化とは「どのようになっているのか」「何をしているのか」「何が起きているのか」といった、口頭や文章では説明しにくく伝えづらい“業務”の全体像や詳細、状態などを図やグラフを使って、分かりやすく表現することです。

 可視化によって、業務の実態が目に見えるようになれば、

  • 関係者が情報を共有すること
  • 多くの関係者によるさまざまな視点から問題を探り当てること
  • 多くの関係者による多様な知恵や知識を集め、問題解決を図ること
  • 状況が分かるので精度の高い管理や制御を行うこと
  • 異常時に正しい対応を取ること

が可能になります。

 これは、企業として望ましい業務プロセスを検討し、チェックするために必要な活動であり、「業務と密接に関係したコンピュータ・システム」を開発するプロジェクトにおいては「業務の可視化」は必須の作業といえます。

衆知を結集するには、関係者の共通理解が不可欠

 業務と密接に関係したコンピュータ・システムを開発するに当たり、業務を過不足なく、かつ誤りなく知ることは大変重要なことです。業務を理解しないまま作ったシステムは、必要のない無駄な機能を実装した“無駄遣いシステム”であったり、機能に不備があってビジネスに貢献しない“役立たずシステム”になったりします。

 業務を知ること──。それはプロジェクトチームの担当者が業務を調査し整理することから始まります。特に部門横断的な大規模な業務システムの開発にあっては、その成果はプロジェクト担当者だけのものとして独り占めしてよいわけがありません。関係者で共有するのです。

 多額の費用、多大なエネルギーをつぎ込んでシステムを導入するからには、それに見合う効果を出さなければなりません。そのためには、業務の問題点や改善すべき点を丁寧に探り、対策を慎重に検討しなければならず、多くの関係者に働き掛けて、その知識と知恵を集めることが必要です。

 ある問題を解決するに当たり、その業務を直接に担当している当事者のみで解決を図ることが最善だとは限りません。当該業務部門だけの力では解答が出せずにあきらめることになる場合もあれば、勝手に実施した対策のために他所に悪影響が出現する場合もあります。

 それを防ぐため、直接携わる業務部門以外からも多くの関係者の知識や知恵を求めればいいのですが、すべての関係者が一様に検討中の業務の流れやその背景に精通しているわけではありません。その業務全体のうち、自らがかかわっている部分を知っているにしかすぎない──という場合が多いのです。

 自社が行っている業務において、そこで扱われているモノやサービス、そしてそれらに関係する情報が、自社のどの部門・システムを通って顧客や取引先とやりとりされ、それぞれにどのような価値や意味があるのか、に関してすべてを知っているという人は、どんな会社でもごく少数でしょう。

 関係者が一致協力してベストの業務プロセスを生み出すためには、業務プロセスを誰にでも分かりやすい形に表現したものを用意し、関係者の認識を擦り合わせる作業が必要です。そもそも、検討作業に参加してもらう「関係者」を把握するためにも、各業務の関係が分かるドキュメントの存在が必要です。

 業務プロセスの分かりやすいドキュメントは、機能要求の承認を上級職に求めたりする際にも便利です。上級職といえども、大まかな業務の流れは知っていても、詳細となると不明なケースもあり、仕様の根拠も含めて説明する必要があります。

 当然、ベンダに機能要求仕様を説明したりする場合にも、システム化する業務プロセスの分かりやすいドキュメントは、大いに役に立ちます。これは質の高い機能要求仕様書(RFP)とすることができ、ベンダへの説明に費やす時間を最小限にし、かつベンダから的確で有益な情報を引き出すことができます。

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