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IFRS最前線(19)

IFRS導入準備の“中だるみ”にご用心!

小尾拓也
ダイヤモンド・オンライン
2011/6/23

ここにきて、IFRSの導入準備に取り組む企業の姿勢に“中だるみ”の傾向が見られるようになったという。だが、「インパクト調査」の結果を見ると、決してうかうかしてはいられない現状が浮かび上がってくる(ダイヤモンド・オンライン記事を転載、初出2010年10月28日)。

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インパクト調査結果に一喜一憂
各社に見られる課題とは

 そのインパクト調査の結果が、各社の判断に少なからず影響を及ぼしたようだ。「かかるおカネや労力が意外に多いことがわかり、本格対応を行なうフェーズ2への移行を躊躇する企業、逆に思ったよりも影響が小さいことがわかったため、『本格対応はもっと後でもいい』と安心する企業が散見されるようになった」と、ある専門家は打ち明ける。

 以前からIFRS対応に積極的だった大企業と比べ、主に中小企業や事業構造がシンプルな企業にこのような傾向が見られるという。事情はまちまちだが、彼らは導入準備の第一段階に過ぎないインパクト調査をやっただけで、満足してしまったと言えるだろう。

 もちろん、2015年または2016年3月期に間に合うように対応すればいいわけだから、取り組みのスピードは各社が独自に判断すればよい。

 しかし、うかうかしてもいられない。巷のインパクト調査で露わになった各社の現状を複数のコンサルタントに聞くと、「今から本格的に準備を始めても間に合うかどうか微妙」と思われるケースも少なくないからだ。多くの企業が直面していることがわかった「一般的な課題」を列挙してみよう。

 まず、多くの企業にとって課題となるのが、会計基準そのものの変更にうまく対応できるかだ。これについては、やはりおぼつかない側面が見られるという。

 とりわけ、現場にとって不安のタネになると見られるのが、固定資産の会計処理である。有形固定資産の減価償却については、IFRSと日本基準の間にそれほど大きな差はない。ただし、日本では会計上、税法に基づく減価償却が認められているのに対して、IFRSでは税法に基づく減価償却だけでは認められない。そのため、IFRSに移行した際には、全てのグループ会社について、会計用と税務用に「二重帳簿」を作成しなければならない可能性がある。

 またIFRSでは、有形固定資産の取得原価を構成要素ごとに分けて、それぞれに残存価額、耐用年数、減価償却を適用しなければならない。財政状態計算書(現在のB/S)へのインパクトもさることながら、多くの固定資産を保有する企業が新たな評価のノウハウを習得するのは、それほど簡単なことではなかろう。

 もう1つ不安が大きいのが、収益認識。収益が発生する条件として、「リスクと便益が買い手に移ること」を掲げるIFRSの適用が始まると、商品が取引き先に無事搬入された時点で収益計上する「着荷基準」や、検品が終わった時点で収益計上する「検収基準」が主流になる可能性が高い。

 そうなると、ちゃんと着荷・検収の確認を行なう習慣がなく、取引き先に向けて商品を出荷した時点で収益を計上していた日本企業は、売り上げの目算を立てずらくなる。出荷基準から着荷基準への会計上の組み換えはそれほど難しくないようだが、面倒なオペレーションの変更に難色を示す企業関係者も多いという。

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