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連載:アプリケーションベンダが語るIFRS(2)

オラクル「IFRS対応は金銀銅メダルで考えよう」

垣内郁栄
IFRS 国際会計基準フォーラム
2009/11/20

怒とうの勢いで買収を続けるオラクルは複数の業務アプリケーションを展開する。企業はIFRSをどうとらえ、ITシステムの対応を進めるべきなのか。日本オラクルの担当者にIFRS対応、そしてIFRSを生かした経営管理について聞いた

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 ERPパッケージ「Oracle E-Business Suite」を開発・販売するオラクルはここ数年、怒とうの勢いで企業買収を仕掛けてきた。BEAシステムズなどのテクノロジ企業の買収も多いが、目立つのは業務アプリケーションベンダの買収だ。大きな所だけでも2005年のピープルソフト(JDエドワーズ含む)、2006年のシーベル、2007年のハイペリオンと買収を続け、業界地図を塗り替えてきた。その他にも産業特化型のアプリケーションを持つ多くのベンダを買収。膨大な数のアプリケーションを「Oracle Applications」のブランドの下で提供し、ERP最大手SAPを追撃する。

 日本オラクルのアプリケーション事業統括本部 担当ディレクター 桜本利幸氏(日本CFO協会主任研究員、公認システム監査人)にOracle ApplicationsのIFRS対応と、IFRSを基盤にした経営管理について聞いた。

――IFRSが日本企業に適用されようとしています。このことは何を意味するのでしょうか。

桜本氏 これまで日本企業は日本で部品を作り、製品に組み立てて、世界で売るというモデルを取ってきました。取り組む通貨も単純だし、部品や製品の在庫管理も容易でした。しかし、経済のグローバル化で、一番安いところで作り、一番安い船で運び、一番安い国で組み立てて、一番売れるところで売るというモデルが生まれました。企業のビジネスモデルが変化しつつあるのです。大きな背景としてはこのようなことを考えないといけないでしょう。

日本オラクルの桜本利幸氏

 このように企業経営の環境が変わりつつあることで、企業はグループ会社が増え、グループ経営を適切に行わないと経営状態が見えないようになってきました。投資家も同じで、企業が何を作り、どこで利益を上げているのか、どういうキャッシュフローを生み出しそうなのかが、分からなくなってしまいました。しかも、各国で会計基準が異なるので、売り上げの基準、償却方法が異なり、利益といっても内容がまちまちになってしまいました。

 投資家から見ると、どこの企業グループに投資をすればいいのか分からないということです。そのため投資家からするとIFRSは必須といえるでしょう。企業自体も自分のグループの中身が分からなくなっています。企業経営者からしてもグループ経営基盤の評価指標としてIFRSは利用できます。

――オラクルとしてはIFRSをどう考えていますか。

桜本氏 オラクルがポイントして考えているのは、単なる制度変更への対応ではなく、グループ経営管理基盤としてどう対応するのかということです。このようなグローバル経営が求められる時代には、新しいグループ経営管理が必要です。その新グループ経営管理を支える会計システムとして、IFRS対応が求められます。

 これまでのERPは個社ごとに使っていました。2007年に登場した「Oracle E-Business Suite Release 12」ではERPをグループで使うことを非常に意識しています。R11からR12への一番大きな設計上のコンセプトとの違いは、R11が単体で使うことを想定していたのに対して、R12はグループ全体で使うことを想定していることです。また、グループ全体で使えるということは集中管理できるということです。せっかく集中管理をするなら、同じモノサシ、つまりIFRSで集中管理するのが自然でしょう。

 IFRSでは、過去の財務データだけではなく、自社の将来的なキャッシュフローであったり、計画などを説明することを求められるケースが多くなります。企業の会計システムには攻めの側面と守りの側面の両方を持つ仕組みが必要といえるでしょう。オラクルではこの攻めと守りをERPとEPM(Enterprise Performance Management:企業業績管理)で担えると考えています。Oracle Applications全体で攻めと守りの仕組みを提供するのです。ただ、Oracle Applicationsだけで固めるのではなく、ERPとEPMをつなぐ製品を提供し、SAPなど他社ERPともつなげるようにしています。

オラクルが考えるEBSとHyperionの担当エリア。青い楕円は企業が直面する会計上の課題


――IFRSを考えると企業は何をすべきでしょうか

桜本氏 大事なのはグループ全体で最適化することです。業務アプリケーションの視点ではオラクルは3つのポイントがあると考えています。1つは業務プロセスの視点。MoU(参考記事)で議論しているように収益認識が変われば企業の販売管理プロセスが変わり、金融商品が変われば財務・資金管理プロセスが変わります。これらは業務を遂行して会計データを作る業務プロセスであり、まずは押さえる必要があるでしょう。

 2つ目のポイントは業務プロセスで作られた仕訳をどうするのかという総勘定元帳や仕訳、勘定科目の視点です。簿記レベルのIFRS対応です。まずは連結ベースでの勘定体系を整理する必要があるでしょう。IFRSに対応しても、単体で日本の基準は残ります。そのため総勘定元帳は一番少ないパターンでも日本基準とIFRSの2つが必要です。また、2つ以上の帳簿を持つ場合は、複数会計基準対応が求められるでしょう。

 3つ目の視点はレポーティングです。XBRL対応や四半期決算開示を含め、IFRSベースの連結財務諸表をいかに作成するかという視点です。連結に必要な会計データをいかに収集し、通貨換算し、IFRS基準に変換するかがテーマです。

 オラクルは、業務プロセスと総勘定元帳、勘定科目の対応はERPが担い、レポーティングでのIFRS対応はEPMが担当すると考えています。お客様としてはこの3つの分野をどう実装するかが問題になると思います。IFRS対応として、レポーティングだけで済ますのか、総勘定元帳や勘定科目まで手を入れるのか。それとも業務プロセスまで対応させないといけないのか。

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