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連載:コンバージェンス項目解説(2)

工事進行基準は3つの条件で理解できる

山田和延
プライスウォーターハウスクーパース コンサルタント株式会社
2009/10/29

2009年4月から適用されるようになった工事進行基準。ソフトウェア会社などでは大きな影響を受けた。IFRSの動向からも注目される工事進行基準の概要を説明する(→記事要約<Page 3>へ)

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影響が大きいソフトウェア開発

 「工事契約に関する会計基準」が導入される前は、工事進行基準とするか工事完成基準とするかは、企業の実態に合わせて選択することが可能であった。しかし、2009年4月以降に開始する事業年度からは、3つの要件に当てはまる場合、すなわち、前述の3つの項目について信頼性を持って見積もることができる場合には工事進行基準を適用しなければならなくなる。逆に、1つでも当てはまらなければ、工事完成基準を適用する。この判断は工事契約ごとに行う。

 対象となるのは主として建築工事であるが、プラント建設や受注制作のソフトウェアも含まれる。特に影響が大きいのは受注制作のソフトウェアであろう。ここでいうソフトウェアにはプログラム開発そのものだけでなく、開発要件を決定する際に作成するフローチャートや仕様書も含まれる。従ってこれらの文書を作成する契約も適用対象となるため、注意が必要だ。

 なお、契約形態については、成果物の完成義務がある請負契約に限らず、準委任契約であっても対象となる。

原価管理がポイントに

 それでは、工事進行基準を適用する場合には、どのような点に留意しなければならないのであろうか?まず最初に挙げられるのは原価管理であろう。

 原価管理で重要なポイントは適切な総原価の見積もりと発生原価の集計である。総原価の見積もりを適切に行うためには、完成までにどれだけ経営資源を投入しなければならないかという計画が作成されていなければならない。また、発生原価の集計では特に人件費の集計に留意が必要だ。人件費はどの工事にどれだけの時間がかかったかということが、関与したメンバー全員について集計されなければならない。集計の仕組みとともに、工事責任者やプロジェクトマネージャが責任を持って把握し、管理できるようにしておくことが必要となる。

 また、発生原価の集計と工事計画の進捗度を比較し、その結果、総原価が変わる場合は、適時適切に総原価の修正を行う。なお、総原価が契約金額を超え、最終的に赤字が見込まれる場合は、その時点で見込まれる損失に対して引当金を計上しなければならない。これは工事完成基準が適用されている場合でも同様だ。

 原価管理のほかには、契約の形態にも留意が必要となる。たとえば、ソフトウェアの開発などは、ハードウェアの納品や保守契約も含めて1つの契約としている場合がある。この場合は、基本的にそれぞれを分割し、それぞれの収益の認識基準で売り上げを計上する。

内部管理体制の構築が必要

 一方、内部統制の観点からはどのようなことに注目すべきであろうか? 工事進行基準は工事完成基準と比較すると、見積もりや経営判断を要するところが多くなる。従って、総原価の見積もり方法、進捗度の把握、発生原価の集計、総原価の適時適切な修正、さらには損失が見込まれる場合の引当金の計上について、ルールの策定、上長の承認など、内部管理体制を適切に構築しておかなければならない。また、途中段階で成果の確実性が見込まれ、工事進行基準を適用する場合には、その適切性について十分確認できるようなルールや承認体制も準備しておくことが必要である。

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