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連載:EBS、HyperionユーザーのIFRSガイド(1)

OracleアプリケーションのIFRS対応を読み解く

村川洋介、海上和幸
IBM ビジネスコンサルティング サービス株式会社
2009/11/9

オラクルの業務アプリケーションである「Oracle E-Business Suite」と「Oracle Hyperion」を対象に、各アプリケーションの特徴とIFRS対応プロジェクトを検討する上での課題を概観する(→記事要約<Page 3 >へ)

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(1) EBSの会計システム機能

 前述のように、連結財務報告にIFRSが適用された後も、税務上の対応などで日本基準による帳簿が必要になることも想定される。その場合会計システムには、複数帳簿を保持し、それぞれ異なる会計基準に基づいた記帳ができる機能が必要となる。

 EBSでは11iから、異なる会計基準・通貨に基づく複数の帳簿を同時に保持することが可能となっていた。またR12からは、それら複数の帳簿をグループ化して管理できる「Ledger Sets」と呼ばれる機能や、1つの会計事象から複数通貨や異なる会計ルールに従った仕訳を同時に生成し、複数の帳簿に計上できる「Sub Ledger Accounting(SLA)」と呼ばれる機能も実装されている。これらの機能により、日本基準の元帳とIFRS基準の元帳をそれぞれ保持し、同時に更新することも可能となっている。

 また固定資産管理では、IFRS基準財務会計台帳、法人税台帳、償却資産申請台帳などの償却基準の異なる複数の台帳を保持・管理することも、比較的容易にできるようになっている。

 マネジメントアプローチによるグループ会計の開示のためには、財務会計と管理会計の整合が取れた、いわゆる財管一致の勘定科目体系を持つことが望ましい。

 EBSにおいては、勘定科目に「会計フレックスフィールド(AFF)」と呼ばれるフィールドが用意されており、会社、部門、地域、製品などのセグメント情報を、任意の階層構造で定義できるようになっている。このセグメント情報を必要なレベルの階層で集計することにより、管理セグメント別の集計・開示が整合性を持って実現可能となる。また各セグメントのツリー構造の組み替えや、有効日付の活用により、廃止事業の区分表示などにも対応できるようになっている。

 これらの会計システム機能により、基本的なIFRS対応の前提条件は満たしていると考えられるが、実際の業務設計を含めた対応を考えた場合、個別業務プロセスの検討がより重要になる。次に個別業務プロセス機能の概要を見ていくことにする。

(2) EBSの個別業務機能

 IFRS要件をEBS、Hyperionの個別業務機能にマッピングすると、下図のようになる。これらすべての機能要件について、自社の業務へのIFRS適用方針を検討しながら、確定していく作業が必要になる。

ERPとEPMによるIFRSの要件に対する網羅性 (オラクル資料から作成、クリックで拡大します)


  例えば固定資産管理については、税制や各社固有の複雑な管理要件対応の必要性から、国産の固定資産管理専用パッケージを導入し、EBSの会計モジュールと連携して使用しているケースが多く見られる。EBS R12から、償却資産税申告書などの税務帳票出力を標準機能に取り込むなど、日本ローカル要件への対応を強化しているが、IFRS対応をにらんでどのように今後のシステム構成を考えるか、十分に検討する必要がある。

 また将来何らかの会計方針を変更した場合には、過年度遡及修正が求められるが、そのために過去の業務データをどこまで保存しておく必要があるかについても、検討課題となる。

 従来のシステム設計では、個別業務のトランザクションデータは、例えば3年など一定期間を経過した時点でテープなどにアーカイブし、削除する運用となっていることが多い。また、会計期間を永久クローズすると、その期間以前は二度とオープンできない仕様となっている。今後、遡及修正で使用する可能性がある業務データについては、オンライン保管またはアーカイブからの戻しによって、財務報告資料の再計算が可能になるようなシステム設計を検討する必要がある。

 その際には、どのデータが会計方針の変更による再計算で必要となる可能性があるか、何年分まで遡及すれば十分と認められるか、EPMでの修正仕訳のみで対応できないかなど、効率的なリソース配置のための検討が欠かせない。

 ここでは例として2つの検討課題を挙げたが、これらを含む個別業務課題と対応については、第2回以降で詳細を議論する。

(3) Hyperionの機能

 Hyperionは、連結会計システムの「Hyperion Financial Management」、予算管理システムの「Hyperion Planning」、バランスドスコアカード分析システムの「Hyperion Performance Scorecard」やデータ収集「Hyperion Finacial Data Quality Management」など複数のアプリケーションから構成される。

 IFRS対応の観点からはFinancial Managementが主な対象となり、EBSに限らず各種ERPなどの会計システムから収集したデータをマッピングし、連結処理、分析、レポートする機能を持っている。

 前述のようにIFRS対応へのアプローチとしては、子会社から、各国ローカル基準とIFRS基準による単体決算データそれぞれ収集して、連結処理を行う方式と、ローカル基準の単体決算データとIFRS対応の調整仕訳データを受けて連結処理を行う方式の、2通りが考えられる。Hyperionでは、いずれの方式も実装可能となっている。

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