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連載:EBS、HyperionユーザーのIFRSガイド(2)

E-Business Suiteを使ったIFRS対応の実際とは

村川洋介、西垣智裕
IBM ビジネスコンサルティング サービス株式会社
2009/12/10

Oracle E-Business SuiteはIFRSで対応が求められる各要件をどのように処理できるのだろうか。用意されている機能を説明し、対応例と課題を挙げよう(→記事要約<Page 3 >へ)

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(3)無形固定資産(開発費)

 開発費を資産計上するためには、開発プロジェクトでかかるコストを一元的に管理・集計する仕組みが必要となる。EBSの場合、Project Management(プロジェクト管理モジュール、以下PM)とFAを以下のように連携することで実現が可能である。

  1. <資産登録>資産計上を予定する開発プロジェクトをPMに登録して費用管理し、PMからFAへの一括追加インターフェースを利用して、IFRS基準の台帳(前述のB)に資産登録する。
  2. <追加計上>以後開発が継続している間は、毎月もしくは四半期ごとに、PMからFAへ一括追加し、登録済み資産にマージする。
  3. <他台帳への反映>IFRS基準の台帳には無形固定資産として登録されるが、法人税台帳、償却資産税台帳(前述のC、D)には登録しない。
  4. <中断>開発プロジェクト着手時には資産計上する予定であったが、何らかの理由で実現化をあきらめた場合、資産計上済分についてはFAで全額償却し費用計上。当期の未計上分についてはPMから総勘定元帳(GL)に費用計上の仕訳をインターフェースする。

 PMはプロジェクト管理全般にわたる豊富な機能を持っているため、導入を計画する場合には、コスト管理のみに利用するか、実際のプロジェクト進捗管理にも活用するかなど、現場の作業負担とのバランスを図り適用方針を検討することが望ましいと考える。

まとめ

 以上、個別の会計処理において業務プロセスやシステムへ影響を及ぼすと考えられる3つの主要論点について、EBSでの対応例と課題について述べてきた。

 次回は経営管理の観点から、IFRSアドプションをきっかけとした管理会計と財務会計の統合など、本質的な変化への対応と、連結会計、予算管理、各種分析やシミュレーションなどのHyperionの機能の活用について述べることにする。

 なお、連載第1回において「SLA機能についても、12.0からバックポートする形で11i10でも使用できるようになっている」と記述した。正確にはバックポートではなく 別ライセンスのFinancial Accounting Hubモジュールを使用することにより、同等の機能が実現できることになる。この点につき注意が必要であるため追記する。

筆者プロフィール

村川 洋介 (むらかわ ようすけ)
IBM ビジネスコンサルティング サービス株式会社
エンタープライズ・アプリケーション-Oracle
マネージング・コンサルタント

1990年、日本IBM入社。システム設計・開発を担当後、流通業、金融業などの業務アプリケーション開発とパッケージ導入を多数手掛ける。IBMビジネスコンサルティングサービスに異動し、ERP導入プロジェクト、J-SOX対応プロジェクトなどを担当。

 

西垣 智裕(にしがき ともひろ)
IBM ビジネスコンサルティング サービス株式会社
フィナンシャル・マネジメント
マネージングコンサルタント
公認会計士

1998年より監査法人において国内企業の法定監査、株式公開支援、企業再編時の財務デューディリジェンス、外資系企業の会計監査、米国SOX法にもとづく内部統制監査、内部統制導入コンサルティング、国内外企業のシステム監査等に従事。2006年9月よりアイ・ビー・エムビジネスコンサルティングサービスに入社し、SOX、経理業務BPR、会計システム再構築構想策定、IFRSなど会計領域のコンサルティングを実施している。

要約

 今回は日本の会計基準を採用する企業が、IFRSに移行する際に、業務プロセスやシステムに影響を及ぼすと考えられる主要論点について解説する。特にOracle E-Business Suite(EBS)において各論点となっている処理を実現する場合には、どのような機能が用意されているのであろうか。また工夫・検討が必要となる課題は何であろうか。

 解説するのは収益認識、有形固定資産、無形固定資産(開発費)など。EBSではそれぞれについてモジュールの機能が用意されている。例えば、収益を認識するタイミングのコントロールは、Receivablesで「イベント基準の収益管理」機能を使用することにより実現できる。

 また、有形固定資産はEBSの固定資産管理モジュールが管理する会計用資産台帳と税務台帳の2種類を利用。それぞれの台帳で異なる償却計算を設定できるようになっていてIFRS基準の償却台帳を別途保持することも可能だ。

 開発費を資産計上するためには、開発プロジェクトでかかるコストを一元的に管理・集計する仕組みが必要。EBSの場合、Project Managementと固定資産管理モジュールを連携させることで実現が可能である。

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