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連載:EBS、HyperionユーザーのIFRSガイド(3)

経営管理の高度化はIFRS対応システムとともに

村川洋介、海上和幸
IBM ビジネスコンサルティング サービス株式会社
2010/1/15

IFRSが話題となっている要因は経営管理の在り方に大きな影響を及ぼす可能性があるからだ。IFRSにより影響を受ける経営管理の分野は多岐にわたるが、ここでは情報システムと関連がある領域を中心に検討しよう(→記事要約<Page 3 >へ)

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IFRSに伴う経営管理への影響

 IFRSがこれほどまでに大きな話題となっている要因は、単に「会計基準」の大幅な変更と、それに伴うプロセス/情報システムの変更に多大な手間とコストを要するからだけではなく、経営管理の在り方に大きな影響を及ぼす可能性があるからである。IFRSにより影響を受ける経営管理の分野は多岐にわたるが、ここでは情報システムと関連がある領域を中心に検討する。

(1) 経営管理レベルを反映するマネジメント・アプローチ

 IFRSと日本会計基準とのコンバージェンス・プログラムの中期項目の1つである「セグメント情報」について、企業会計基準委員会は2008年3月、企業会計基準第17号「セグメント情報等の開示に関する会計基準」(以下17号という)及び企業会計基準適用指針第20号「セグメント情報等の開示に関する会計基準の適用指針」を公表した。 17号ではIFRSに倣い、経営上の意思決定を行い、業績を評価するために経営者が企業を事業の構成単位に分別した方法を基礎とする「マネジメント・アプローチ」が導入されている。つまり、「管理会計」を基礎としてセグメント情報を作成する必要があり、もし両者の間に重要な差異がある場合には、その内容を個別に開示しなければならない。

 

「EBS、HyperionユーザーのIFRSガイド」連載インデックス

 

 そのためには、いわゆる「制管一致」、あるいは「制管不一致」の場合にはその差異の調整が可能となるような会計記録が必要となる。また、管理会計における「管理単位」は、現行のセグメント情報の「事業別」「地域別」「海外売上」に限定されるわけではなく、通常、多階層かつ多次元で行われている。一方、それらは全勘定科目ではなく、損益計算書の売上高や営業利益など部分的なものであることが多い。基本的にはこれらの情報を基礎としてセグメント情報を作成することになるため、結果としての投資家をはじめとする利害関係者からは数値のみならず、「管理会計」が経営上の意思決定に当たって必要かつ十分なものであるかどうかの評価も行われるといっても過言ではない。

(2) 決算・開示プロセスの改革――精度と効率の向上

 日本の会計基準とIFRSとの間には個々の会計処理の違いに留まらず、財務諸表に対する注記事項およびその詳細度にも大きな差異がある。詳細な注記が要請されることがIFRSの特徴の1つでもある。当然、各業界・企業ごとにその程度は異なると思われるが、欧州の例では、注記の量が従来の2〜3倍になった企業が多いとの報告もある。加えて決算開示の早期化への要求は強まる一方である。

 財務諸表に加え、詳細な注記に必要な情報を全連結会社が作成し、収集し、開示情報に取りまとめていく作業をこれまでと同等以上のスピードで遂行するためには、各連結会社の単体決算も含めた決算・開示プロセスを根本的に見直すことが必要になってくる。

 決算・開示プロセスを分析すると、当然高度な会計的知識や経営判断を要する部分はあるが、単純作業や規則的な手順からなるプロセスが含まれていることが多い。また、連結グループでルールやプロセスを統一することによって、パターン化できるケースもある。これらは可能な限り情報システムを活用することによって、決算・開示プロセスを効率化するとともに、精度の確保及びコントロールレベルの向上を図ることが有効である。

(3) 経理機能の改革――会計システムの共通化とシェアード化

 現在でも、各連結会社における経理スタッフの確保に苦労している企業は少なくないと思われる。IFRS移行に向けてこの傾向はさらに高まることになる。このことは、各連結会社の会計情報の精度に影響する深刻な事態を招きかねない。

 しかし、これまで述べてきたようにIFRSに従って連結会社の会計処理を統一し、マネジメント・アプローチに基づき経営管理の観点から「管理会計」の軸を連結ベースで明確に定義したうえで、決算・開示プロセスから自動化可能なプロセスを切り出すことができれば、各連結会社で経理機能を保持する必然性は低下してくる。すなわち、各連結会社ごとに経理スタッフを確保し、個別の会計システムを保持・運用することが極めて非経済的になってくるのである。

 少数のエキスパート・スタッフからなる経理部門において、共通の会計システムで各連結会社の決算を集中処理することにより、決算精度の向上、決算作業の効率性向上、内部統制レベルの向上などが期待できるようになる。

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