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連載:SAPで実現するIFRS対応(4)

公開! SAPを使った業界別IFRS対応事例

鈴木大仁
アクセンチュア株式会社
2010/1/29

日本企業がIFRS対応を検討するに当たり、いくつかの参考となる海外事例を紹介する。各事例の分析から分かった共通した特徴も指摘したい。いかに二重投資を避けるかがポイントだ (→記事要約<Page 3 >へ)

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国内先行企業の動向

 日本のIFRS元年である2009年が過ぎ、新しい年を迎えた。まずは、2009年の日本におけるIFRS動向を振り返ると同時に、今年の見通しを共有させていただきたい。

 現在、私の所属するアクセンチュアでは、IFRSイニティアティブというグローバル横断のチームを組織化し、クライアント企業のハイパフォーマンス革新をお手伝いさせていただいているが、この動きは2008年秋にFASB(米国財務会計基準審議会)がIFRSロードマップ案を公表した頃から始まった。アクセンチュアでは、ヘッドクオーターからIFRSに関する先行事例や、SAPシステムを活用したソリューションを各グローバル・リージョンで共有し、各国のクライアント企業に最高のサービスを提供するために、より一層の連携強化の声がかかったのだ。そして、2009年1月には日本法人でもIFRSチームを結成。2月からは講演や執筆活動などを通し、日本企業の皆様に、グローバル共通のビジネス言語であり、グローバル経営管理そのものともいえるIFRSに関する考え方の紹介を開始した。

「SAPで実現するIFRS対応」連載インデックス
  第3回 ERPのIFRS対応 成功へのシンプルな必須条件
第4回 公開! SAPを使った業界別IFRS対応事例


 特に、SAPという切り口から紹介させていただいた最も重要なソリューションである「ERP Harmonization」、もしくは「ERP Consolidation」と呼ばれるSAP ERPの標準化・集約導入思想については、欧米ではかなり浸透しているものの、ERPを事業単位や地域・グループ個社単位で導入してきた日本企業にとってはなじみの薄いものであった。標準化や集約をかける際に最も重要なのは、情報や管理の物指しを統一することであり、それが会計の歴史上でも今回始めて統一されるIFRSなのである。以前ご紹介したIFRS対応の松竹梅コースにおける松コースは、まさしくIFRSを契機としたERP Harmonization/Consolidationにほかならず、日本企業のグローバル化においても、欧米及び新興国のハイパフォーマンス企業と肩を並べて競争するために、次の数年先、10年後を見据えた必須の事業基盤と断言できる。

 話を戻そう。2009年6月の金融庁によるロードマップの公表以降、IFRSの流れは変わってきた。それまでは学習モードだった日本企業の中に、IFRS導入による影響分析やIFRSベースのオペレーション戦略、ITシステム刷新構想、ERPバージョンアップに合わせたIFRS対応計画などの検討を始めた企業が年末にかけて急増した。

 これらのIFRS導入先行企業に共通する動きとして、まず2009年末から2010年初にかけてプロジェクト計画を立てて2010年度予算に盛り込み、そして2010年度(この4月)から本格的なIFRS対応プロジェクトを開始する、ということが挙げられる。もちろん、外国上場や外国資本の関係上、すでにIFRS対応済の日本企業もあるが、IASB主導の「これまでのIFRS」と、FASBやASBJ(企業会計基準委員会)も加わった「これからのIFRS」とを切り分けると、すでにIFRS対応済の企業は「これまでのIFRS」対応であり、「これからのIFRS」対応という面では、2010年度から本格的なIFRS対応プロジェクトを開始する企業が国内IFRS対応の第一陣となる。

 第一陣に含まれる企業は、大手グローバル企業、もしくはグローバル戦略を加速する製造業・流通業であり、また意外かもしれないが、内需型企業でも大量の固定資産を持つ電力・ガス・輸送などの設備産業の一部もこの第一陣に含まれる。第二陣は2010年度下期、第三陣は2011年度以降と想定している。だが、多くの企業がIFRS対応を開始すると見込まれる2011年、2012年まで対応方針を決めずに待ちの姿勢を続けると、グローバル競争力向上の機会損失のみならず、その時期には強制適用までの残期間の制約上、IFRS対応を支援する監査法人やコンサルティング会社、システム・インテグレータなどの外部リソースも手一杯となり、結果的に不十分な対応に留まる可能性も否めない。

 以上が2009年から考えられる今後1〜2年の動向となるが、IFRSへの取り組みは会計制度のみならず、業務オペレーションや、担当組織、ITシステムなどの多くの経営要素が絡むため、まだ対応を開始されていない企業も、施策間の依存関係や効率的な施策の実施順序を整理し、しっかりと中長期計画に盛り込むことを進言したい。IFRS強制適用時期はまだ確定していない、などとはいってはいられない。先行事例や方法論から学ぶことで、Moving Targetを狙うアプローチがあることに気付いていただきたい。

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