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連載:IFRS基準書テーマ別解説(6)

IFRSの「連結」基準、その実務ポイントは

長谷川卓昭
仰星監査法人
2010/2/26

連結決算に関連する会計基準であるIAS27号(連結及び個別財務諸表)とIAS28号(関連会社に対する投資)、IAS31号(ジョイント・ベンチャーに対する持分)を2回連載で解説する。今回は連結範囲、決算日の統一などIAS27号を中心に実務ポイントを説明しよう。

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非支配持分に対する会計処理

日本基準との違い

 IFRSでは、連結財政状態計算書を経済的単一説の立場で作成するため、非支配持分は連結財務財政状態計算書において親会社株主持分とは区別して株主資本に表示する。

 損益及びその他包括利益の各構成要素(および包括利益の総額)は、親会社の所有者および非支配持分に帰属する。そのため、子会社に欠損がある場合に、少数株主持分の残高が借方(マイナス)になるとしても、親会社株主だけではなく非支配持分株主(少数株主)にも欠損を負担させる。

 これは、IFRSが経済的単一体説をとることにより、親会社株主も、非支配持分株主(少数株主)も、等しく連結グループに対する資本拠出者として扱われるためである。

 これに対して、日本基準では、親会社説に基づいて連結財務諸表を作成するため、少数株主の負担は基本的にゼロまでであり、マイナス(借方)になるケースは、契約などにより非支配株主(少数株主)にも債務超過部分を負担してもらえる場合等に限られる。

 ここで、経済的単一体説とは、少数株主も連結グループに対する出資者と位置付け、親会社株主および少数株主の双方の立場から連結財務諸表を作成すべきという考え方である。また、親会社説とは親会社株主の立場から連結財務諸表を作成すべきという考え方である。

実務上のポイント

  1. IFRS適用に当たり、上記の日本基準に基づき子会社の欠損を少数株主に負担させていない場合は、修正仕訳が必要となる

今後の改訂の方向性

 IASB(国際会計基準審議会)は、FASB(米国財務会計基準審議会)と連結財務諸表に関する会計基準の見直しを共同で行っており、公開草案第10号「連結財務諸表」(ED10)を2008年12月に公表している。ED10はIAS27号とSIC12「連結−特別目的会社」の連結に関する規定を置き換えるものとして検討している。

 現行のIFRSにおける連結に関する規定は、IAS27号とSIC12に規定されているが、この両者について定められている「支配」の考え方には差異があり、どちらを適用すべきかの判断が困難な場合があるなどの指摘がなされていた。こうした指摘を受けて、2008年12月に公表されたED10では、すべての企業に適用される原則的な支配の定義と関連するガイダンスを定めることにより、連結企業および非連結企業に関する開示情報を改善することが目的とされている(現在、国際会計基準では、一般事業体には支配力基準《IAS27号》が、SPEにはリスク・便益基準《SIC12》が適用されている)。

 IASBが2009年8月に公表した作業計画によれば、新しい連結財務諸表の会計基準は近日中(2010年上期)の公表が予定されている。

 なお、ED10では、一般事業体と特別目的事業体を力(power)とリターン(returns)という要素を考慮して、同一の支配力基準により連結範囲を決定することが提案されている。また、支配の定義として、「ある企業が自らのためにリターンを生み出すように、他の企業の活動を左右する力(power)を有していること」という定義が提案されている。

筆者プロフィール

長谷川 卓昭(はせがわ たかあき)
仰星(ぎょうせい)監査法人

2001年3月早稲田大学政治経済学部卒。2007年11月公認会計士試験合格。大学卒業後、モルガン・スタンレー証券株式会社 債券統括本部(セールス&トレーディング)入社。その後、大手監査法人、大手税理士法人を経て、2008年9月に仰星監査法人東京事務所入所。部分執筆書に「会社経理実務辞典」(日本実業出版社)がある。

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