IFRS関連書籍 2009年夏のブックガイド
書店にあふれるIFRS関連書籍。読者が必要とする情報によって選ぶべき書籍は異なります。編集部が独断でセレクトした3冊のIFRS関連書籍を紹介。3冊セットのプレゼント(応募受付は終了しました)も行います(編集部)
すべての人に向けたオールマイティな入門書
IFRS 国際会計基準で企業経営はこう変わる
●高浦英夫=監修/PwC Japan IFRS プロジェクト室=編著 ●東洋経済新報社 2009年1月 ●1600円+税 978-4-492-60176-1 ●出版社のWebサイト |
「いま、この企業を測るモノサシが大きく変わろうとしている」。PwC Japan IFRS プロジェクト室が編著した本書はこういう書き出しから始まる。会計基準というモノサシが変わることで企業はどういう影響を受けるのか、経営者はこの変化をどう判断すればいいのか。本書はIFRSが生まれた経緯から、IFRSを受け入れる場合の課題、IFRSの特徴、ビジネスへのメリットやデメリットを概説した入門書である。財務・経理の職にある人だけでなく、一般職やマネジメント層の人にとってもIFRSを学び始めるうえで最適な書籍であるといえるだろう。
経営者やマネジメント層は第1章から第5章までを読み通すことでIFRSが持つ意味を理解できるだろう。IFRSはすでに世界100カ国以上が採用している。欧州連合では2005年から義務化され、米国でも2014年、日本でも2015年か2016年からの義務化が予定されている。本書はIFRSがこれほどまで急激に広がった背景について「経済のグローバル化がある」と指摘する。「企業を世界標準のモノサシで測れるようにしたいという考えが、IFRSがつくられてきた流れの背景にある」のだ。IFRSを導入することで異なる国の企業価値を比較できるようになる。いわゆる比較可能性の向上だ。これによって企業は海外からの資金調達が容易になると同時に、M&Aなど他社を評価することも簡便になるといわれている。
財務・経理の実務に近い人にとっては第5章からの情報が役立つ。実際にIFRSを適用するうえでのロードマップ策定などが分かりやすく解説されているからだ。ロードマップを策定するうえで必要になる作業や情報についても触れられていて、参考になる。IFRSは会計処理だけでなく、業務プロセスやITシステムについても大きな影響を及ぼすといわれている。影響範囲が大きいということは社内で関係する部署や人々もそれだけ多くなるということ。大規模なプロジェクトを回していくためには事前の情報収集やギャップの分析、ゴールの設定などが重要になる。本書はその導入プロジェクトを成功に導くためのヒントを提示しようとしている。
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デスクに置きたい会計処理についてのQ&A集
Q&A/国際財務報告基準(IFRS)
●あらた監査法人・PwCアドバイザリー株式会社=共編 ●税務研究会出版局 2009年3月 ●2800円+税 978-4-7931-1735-0 ●出版社のWebサイト |
IFRSの全体像をある程度つかんだ読者が「では、どのような会計処理が行われるのか?」と疑問を持ったとき、手にするのに適した書籍だ。「IFRSの概要と個別論点」とする第1部と、「IFRSが日本企業に与える影響」の第2部で構成し、それぞれの項目に対してQ&A形式で解説していく。ある程度、会計の知識がある財務・経理担当者向けの書籍で、通読して知識を蓄えることはもちろん、常にデスクに置き、疑問点を調べるような辞書的な使い方もできるだろう。
それぞれの項目について、どのように解説をするのだろうか。例えばQ27の「収益の認識基準」では、最初にIFRSにおける収益認識基準について概論を説明。次いでその根拠となる「IAS18号」について詳しく解説している。本書が特徴的なのは基準書の内容を丁寧(ていねい)に説明していることだろう。これによって読者は大きなテーマごとにIFRSを理解できると同時に、基準書が定める個別テーマについても理解を深めることができる。また、日本基準とIFRSとの差異についての解説も充実している。基準によっては図版を用いて日本基準とIFRSを比較するなどポイントがつかみやすい。
会計処理を説明する第1部と比較して、第2部は簡素な内容。その中で注目したいのは製造業と流通業に絞ったIFRS対応を解説したページだ。IFRS適用のアプローチや影響度は業種によって大きく異なるといわれ、本書の解説は製造業や流通業に属する読者にとってはよい道しるべになるだろう。
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経営者を本気にさせる解説書
経営者と経営管理者のためのIFRSハンドブック
●新日本有限責任監査法人 クライアントサービス本部 アドバイザリーサービス統括部=編 ●税務研究会出版局 2009年7月 ●1600円+税 978-4-7931-1791-6 ●出版社のWebサイト |
書名どおり、経営者と経営管理者がIFRSについて考えるべきことを説明した書籍だ。「やみくもにIFRS導入を積極的に推進するというのではなく、日本企業のあるべき財務報告のあり方を実現する良い機会として、IFRSを考えていただきたい」がコンセプトといい、IFRSがビジネスに与える影響を幅広く解説している。経営者や経営管理者向けの「第1部 IFRSの実務対応上のポイント」と、財務・経理の現場担当者も意識した「第2部 日本基準と国際財務報告基準(IFRS)の比較」で構成する。
コンセプトにもあるように本書は単純にIFRS導入を推進する内容ではない。第1部第2章ではIFRSへの対応を考慮する前提として経営者が考えるべき4つのポイントを挙げている。「自社が属する業界において、自社はどのようなポジションなのか」から始まる4つで、IFRS導入を決断するうえでの下地作りを勧める。同じ第2章の「ビジネスに与える影響」も役立つ情報が多い。「主要財務諸表数値の変更等に伴う企業経営への影響」などを解説していて、IFRSを実際に導入した場合のリアルな企業経営のイメージをつかむことができる。IFRSについて関心がない経営者でも、これらの影響を理解すればIFRSを無視できなくなるだろう。
IFRS導入についてのプロジェクトチームを検討している企業の経営者にとっては第2部第3章の「IFRS導入に備えて」も役立つ。多くの企業が気にする「早期適用のメリット・デメリット」も解説。また、2005年にIFRSを適用した欧州連合の事例を基に、IFRSの影響について業種別に解説している。例えば、「情報・通信」であれば「IAS2号」(棚卸資産)や「IAS18号」(収益)などに「より重要な影響を受けると考えられる」としている。業種別、基準書別に表組みで表示しているので、業種間での比較も可能だ。
また第4章では、実際にIFRS導入プロジェクトを立ち上げた製造業企業の実例を詳しく紹介していて、IFRS導入に関する企業内の意思決定や動きを知ることができる。
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今回のブックガイドで紹介した3冊の書籍「IFRS 国際会計基準で企業経営はこう変わる」「Q&A/国際財務報告基準(IFRS)」「経営者と経営管理者のためのIFRSハンドブック」をセットにして3名の方にプレゼントします。アイティメディアの会員制メディア「TechTargetジャパン」のプレゼントページからお申し込み下さい。
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