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■企業改革
 
Oracle BPMで知る業務改善手法――統合ツールが変化に強い改善サイクルをサポート
●日本電気株式会社=著/日本オラクル株式会社=監修
●技術評論社 2008年11月
●2900円+税 978-4-7741-3654-7
 ビジネス(人)とシステムを柔軟に融合するソリューションとして期待されるBPM。本書はBPMの必要性や役割について、BPMツールの1つである「Oracle BPM Suite」(前身は「BEA AquaLogic BPM Suite」)を踏まえて解説する。
これまでBPMを支援するツールは、PDCAサイクルの1つのフェイズに特化した製品が多かったが、「BPMS」(Business Process Management System)と呼ばれるスイート製品が登場し、注目されてきている。なかでもOracle BPMは、PDCAサイクルを支援するツール要件を備え、ビジネスプロセス管理におけるモデリングやシミュレーションから実行および最適化までのPDCAサイクルを統合的にサポートするところにメリットがある。
Part2では、そのOracle BPMを利用したビジネスプロセスの設計から評価までを紹介する。PlanフェイズとDoフェイズの中間に位置する「実装フェイズ」では、プロセス実行エンジンとビジネスプロセスとを結び付ける。業務責任者の負担増への対応という課題にはビジネスプロセスの標準化を、部門連携の問題対応にはビジネスプロセスの管理化を、作業効率の問題対応にはプロセスの自動化を行い、改善を図る。このときに実装されたビジネスプロセスは、ビジネスアナリストが設計したとおりに動作しなければならず、アクティビティにロジックを定義しても、それが期待する動きでなければ意味がないと警鐘を鳴らす。
本書は、演習を行いながらOracle BPMを学ぶリファレンスではなく、BPMの必要性とサイクルの回し方を中心に構成。そのため、Oracle BPM導入の有無にかかわらず、業務の最適化を目指す組織であれば活用できる。(ライター・生井俊)
 
知識デザイン企業
●紺野 登=著
●日本経済新聞出版社 2008年2月
●1900円+税 978-4-532-31386-9
 近年、創造性が「組織のイノベーションと長期的な存続のために不可欠」という認識が広まりつつある。本書では、創造経営の時代にふさわしい組織「アート・カンパニー」の概念と、方法論としての「知識デザイン」についてまとめる。
創造経営の先頭集団にいる企業やリーダーの「デザイン」とは、見た目のデザイン(色や形)や単にモノを調整して組み合わせる作業ではなく、また単なる抽象的思考法や手法でもない。それは彼らの人生をかけて、自らの身体と感情を参加させて形作る、あるいは複雑な要素を“綜合”して価値を視覚化、具現化する、リーダー自身による身体的な営みそのものなのだ。
デザインは、「媒介」(meditation)、「結合」(connection)、「形成」(formation)の3つの役割を同時に成立させるものだ。その新たな綜合的能力としてのデザインを「知識デザイン」と呼び、知識デザインの方法論を経営の中核に据え、20世紀的な品質経営から脱却するのが「アート・カンパニー」だ、と説明する。
本書の後半では、経営や戦略構築における「真・善・美」の追求する方法としてデザインの力をどう生かしていくべきかや、アート・カンパニーであるための条件を記す。事例が豊富で、イノベーションがどう生み出されてきたかを振り返るのにも役立つ。(ライター・生井俊)
 
社員力──ITに何が足りなかったか
●浜口 友一=著/鈴木 貴博=編
●ダイヤモンド社 2007年3月
●1500円+税 978-4-478-37526-6
 1990年代を代表する経営手法のBPRは、社員の要素を見落としていて、変革の代償としての痛みだけでなく、企業経営へ影を落とす結果となった──。本書では、NTTデータ社長の浜口友一氏が、企業に変革をもたらす有力な武器となるITと、そこにモチベーションあふれる社員がのってこそ、初めて変革に向けたドライブが始まると説く。
 第1章で、浜口氏が副社長(CIO)時代に手がけた新基幹システムでの失敗を振り返る。その原因として、ビジネスモデルと技術的なチャレンジを広げすぎたこと、変革リーダーとしてのコミット不足、事業優先の難しい判断の4点を挙げる。それらをリカバリーするために、ITマネジメント室を再編しCIOの直轄部隊としたこと、開発部門と業務主管部門、ユーザー部門の3者が合意を形成する場を再定義したこと、そしてプロジェクトにおけるチャレンジ項目を再度取捨選択し、絞り込んだことで状況は好転し、カットオーバーを迎えている。
 第6章では「社員力」(社内の意識改革)について触れる。連結売上高が8500億円だった当時、売上高1兆円を中期計画の目標にし、評価を変えることから変革への意思表示をしつつ、お客様と真のパートナーとなるために、お客様の思いついた機能や要求をただ受け入れるのではなく、明確に状況を把握し、意思決定をせまる「たたかい」を営業に仕掛けさせた。そして、どんなに忙しくとも年に3日はOFF-JTを取り入れ、改革のための評価だけでなく、トレーニングによる能力向上とのバランスを保っていると説く。
 舞台はIT企業で、システム構築にまつわるエピソードだが、実体験に基づいた内容は示唆に富んでおり、変革に向けて動き出すために現場をどう導いて行くべきか迷っている経営者、プロジェクトマネージャに響く言葉が多いだろう。(ライター・生井俊)
 
最強企業が最強であり続けるための組織デザイン
●ゲイリー・L・ネイルソン、ブルース・A・パスターナック=著/鬼澤 忍 =訳
●日本経済新聞社 2006年6月
●2200円+税 4-532-31275-2
 組織改革は、常に企業経営の大きなテーマの1つだ。市場変化が激しい業界では、毎年のように組織変更を行っている企業も多い。そうした変更が功を奏することもあるが、何の効果もない場合が少なくない。
 本書では、組織を特徴付ける4つの要素として「意志決定権」「情報活用」「動機づけ」「組織構造」を挙げ、そのバランス(アンバランス)という視点から組織の改善を考察していく。世の中の組織を「パッシブ−アグレッシブ型組織」「フィット・アンド・スタート型組織」「過剰成長組織」「管理過剰組織」「ジャストインタイム組織」「軍隊型組織」「レリジェント型組織」の7つのプロフィールに分類し、問題点や治療法を個別に解説する。具体事例が挙げられているので、自社に似た組織がどのような手を打ったのかを参考にできる。
 組織改革は、第1章に「ミドル・マネジャーのコミットメントと実行がなければ重要な変革はいっさいできない」とあるとおり、トップマネジメントだけではなく、現場のキーパーソンの理解と協力が重要だ。そうした共通理解を得るためにも本書や役立ちそうだ。また、4要素の1つである「情報活用」に関しても、自社がどのタイプを把握することで、どうあるべきかを知ることができるだろう。
 
BPMがビジネスを変える──BPRを超える「業務プロセスの継続的改革」
●日沖 博道=著
●日経BP企画 2006年8月
●1800円+税 4-86130-183-1
 企業改革に活用するに当たっては、BPMはほかの選択肢に比べより効果的なマネジメント手法である。本書は、企業経営者らが、企業改革とその実現のためのIT化を進める際に、何をどう考える必要があるかの骨子を示し、BPMの活用を提案している。
 大規模な情報システム構築プロジェクトが終了した後には、往々にして役員クラスから利用者部門まで「関係者全員が不満足」の構図が存在する。その原因の1つには、「戦略意図が不明確なままのシステム化」という出発点でのボタンの掛け違いがある。もう1つには、要件定義を進めていく手法が旧態依然としたもので、あるべきビジネスプロセスを関係者で共有するなどの視点に欠けていることが挙げられる。
 改革プロジェクトで現れる典型的障害を克服する視点の多くは、BPMアプローチに含まれる。システムの要件定義に一気に突入するのではなく、まず「構想策定」というフェイズにおいて改革の全体像を描いてから、次の具現化フェイズでビジネスプロセス/組織・制度/情報システムの詳細を設計することを推奨する。このフェイズの実施により、「重点志向の欠如」と「目的意識の希薄化」を克服できる可能性が高まる、と説く。
 ほかにもBPMアプローチによる改革実践について、ソリューション領域別に解説を加えている。企業改革、業務改革の旗手となる経営層、プロジェクトマネージャ向け。(ライター・生井俊)
 
チーフ・パフォーマンス・オフィサー──ビジネスの性能を最大化せよ
●アンソニー・L・ポリターノ=著/栗原 潔=翻訳・監修
●キューフォー 2005年10月
●1000円+税 4-9902079-1-2
 企業がパフォーマンス管理の各要素を一貫した視点の下で行っていることはまれだ。いま、パフォーマンス管理の責務を全社的に統括するチーフ・パフォーマンス・オフィサー(CPO)の存在が求められている。その役割を定義し、必要とされるスキル、利用する手法、責任の範囲などを述べたのが本書だ。
 戦闘機のパイロットは計器の情報を頼りに、ゼロコンマ数秒で意思決定をしなければならない。すべての情報を見ているわけにいかないため、重要な情報だけ映し出すヘッドアップ・ディスプレイを必要とする。CEOにもそのような何かが必要であり、CPOがヘッドアップ・ディスプレイ的な機能を担う。そして、CEOはその情報に基づき意志決定を行うため、CPOはデータに対してビジネス面から解釈を加えられるスキルを有していなければならない(第1章)。
 いま、多くの先進的企業が企業パフォーマンス管理(CPM)を採用し始めている。これは、財務的指標および非財務的指標の両方の観点から、総合的に企業を見た評価を提供するもの。同時に、仮説検証型のシナリオ分析に基づいた計画を組み合わせることで、企業は競合他社と比較してより素早く環境変化に対応でき、競争力を強化できるようになる、と説く。(第2章)
 ほかに、変化の管理やベンチマークの必要性に言及している。図やケーススタディ(コラム)が充実し、さらっと読める新書。(ライター・生井俊)
 
営業変革──しくみを変えるとこんなに売れる
●渡部 弘毅=著
●メディアセレクト 2005年11月
●1333円+税 4-86147-010-2
 CRMコンサルタントの著者が、「売れる仕組み」のノウハウを物語仕立てで紹介する。大手企業のコンサルタント「田辺裕三」が主人公。田辺が中堅ベンチャー企業の営業変革プロジェクトを担当し、紆余曲折する中から活路を見いだし、第二創業期を迎えるまでのストーリー。
 田辺とベンチャー企業とのやりとりに、マイケル・ポーター教授が説く事業領域の魅力度を判断するフレームワーク「5 Forces」や、トップのコミットメントの重要性、意識改革を行うための合宿研修など、キーワードや重要なイベントを織り込む。
 また、優秀な営業マンの知恵を標準化する取り組みでは、「ノウハウを全部さらけ出したら、これからもトップ成績を続けるのは無理」と反発をくらった上に、その幹部社員が辞めるという、改革に伴う痛みを体感する。しかし、意識改革への負の精算が済んだことで、一匹狼的営業マンのノウハウにスポットがあたり、その窮地を救う。
 途中、状況別の戦略を解説したコラムを挿入し、売れる仕組みの理解を深める工夫をしている。難しい用語を極力排除して、読みやすさを優先させている点に好感が持てる。営業マネージャだけではなく、情シス部門の若手が読んでも参考になりそうだ。(ライター・生井俊)
 
会社のしくみは変えられますか?──あなたの仕事の構造改革をITとともに
●鈴木 貴博=著、浜口 友一=監修
●ダイヤモンド社 2005年10月
●1500円+税 4-478-37497-X
 本書は、経営者の情報リテラシーを上げるための論点をまとめた『誰も語らなかったIT9つの秘密』の続編で、会社の構造改革論をまとめる。
 「大企業であることは有利である」という構造を変えてしまった要因は、ITによる「取引コストの構造変化」と、「働く人々の構成や意識」にある。より優位な構造に企業構造自体を変えていくためには、ビジネスプロセスの一部をアウトソースしていく必要がある。現代の経営では「持たざる経営」は少し進化を遂げて、「持つ部分と持たない部分の集中と選択」が、構造改革につながるキーワードになっている(第1章)。
 ITや携帯電話などを駆使することで、幹部が劇的に忙しくなっている。ITは確かに生産性を高める武器だが、デジタル情報を大量に生み出すという副作用もある。多くのビジネスマンが、1日のうちに目を通さなければならない情報量が幾何級数的に増え続けている。そのことで、時間が奪われ、何が重要か見えにくくなるだけでなく、ビジネスプロセスのボトルネックが頻繁に変わるという大問題を抱えていることを認識しなければならない(第5章)。
 やや難解なIT用語や経営用語にはページ下に注釈があり、章ごとにポイントをまとめたフローチャートもあって分かりやすい。(ライター・生井俊)
椅子とパソコンをなくせば会社は伸びる!
●酒巻久=著
●祥伝社 2005年8月
●1400円+税 4-396-61248-6
 業績の悪化した会社は、徹底して「会社の垢すり」をすることで黒字化し、利益がぐんぐん伸びる。「会社の垢すり」とは、長い間に組織や社員に染み付いてしまった、非効率な動き、ムダを徹底的にそぎ落とすことだ。キヤノン電子社長の筆者が同社で「売上は横ばいでも、利益を5年で10倍」にした方法をまとめたもの。
 新しい部署や会社を任されたとき、人事に手を付けず、1年は何もしないで観察に徹する。すぐに人事に手を付けると、適材適所の人材登用が難しくなる、赤字の根本原因が見えなくなる、あしき側近政治を招く、という3つの問題点があるからだ。そして、1年たちうみを出すときは、素早く、徹底的に、上からやることが肝要だと説く(1章)。
 キヤノン電子では、すべての会議室からいすを撤去、テーブルには30センチの「ゲタ」を履かせ、立って使うのにちょうどいい1メートルほどに。また、会議の効率化と創造性の発揮のため、自分の意思のない意見を厳禁とし、「〜だろう」式の表現を5回使うと退場、とした。自分の意見を促すための資料の持ち込みも厳禁で、大切なことは必要に応じてメモを取ればいいというスタンス。この結果、会議時間が最大75%短縮できたという(2章)。
 パソコンに向かっていても仕事をやっているとは限らない(同社ではツールを使って実測した)、「メールには即レス」の愚かさ、ベンチマークは異業種に対してやらないと意味がない、などムダをそぎ落とすテーマが並ぶ。経営改革を徹底したい経営者、マネージャにお奨めする。(ライター・生井俊)
 
マニュアルの活かし方──業務改善からリスクマネジメントまで、経営課題を解決する活用事例
●福山穣/梶川達也/渡辺季幸/吉田薫=著
●実務教育出版 2005年6月
●2000円+税 4-7889-0726-7
 1995年に発売、5万部を販売した『マニュアルのつくり方・使い方』の続編で、経営の効率化・活性化・創造化支援のための手法・技法を紹介する。前作は日常業務を主力としていたが、今回は異常管理や危機管理マニュアルを含めた。
 マニュアル作りの前提になるのは業務の適正化で、人を生かすためのマニュアル作りやその使い方を提案している。マニュアルは、自分の担当部分をそのまま文書化するのではなく、体系化し、どの程度まで業務水準を高めるかなど職場の中で検討することが大切だ。そして、その内容が期待する水準で実施されるためには、教育・訓練が欠かせない(第1章)。
 実効あるマニュアルにするためには、PDCAに尽きる。チェックの本質は、複数の目、多角性にある。チェックし忘れることは本当に問題で、その目的を口に出せばチェックミスは防げる。また、苦情や不満は発生することを前提にマニュアル作りや教育・訓練を行う。表現は「〜しない」ではなく、「○○する」と書いて、対応の手順やポイント・コツ、レベルをまとめるといいという(第3章)。
 ほかに、情報セキュリティ、医療リスク対策、環境負荷低減のためにマニュアルをどう生かすかを扱う。目次が使いやすく、内容も見開きで1トピックになっていて探しやすい。ISOや危機管理マニュアルの担当者には大いに役立つだろう。(ライター・生井俊)
情報技術を活かす組織能力──ITケイパビリティの事例研究
●岸眞理子、相原憲一=編著
●中央経済社 2004年7月
●3200円+税 ISBN4-502-37460-1
 情報技術の組織的活用能力(=ITケイパビリティ)に着目し、その概念と分析フレームワークから、企業によるIT導入効果をまとめている。
 企業が競争優位を獲得するには、ヒト・モノ・カネの3資源に加え、情報、技術力、ブランド、専門能力、組織能力などを開発し、これらを組み合わせて企業のケイパビリティを生成することが重要だ。ITケイパビリティは、情報技術資産とそれを扱う人的資産、情報技術を活用する企業コンテクストにかかわる資源に分類できるという。
 ここに登場する7社は、長野県の別所温泉にある上松屋旅館、靴下の専門店を展開するダンなど、ほとんどが衰退業界とされる世界で勝負を挑む中小企業である。
 上松屋旅館は、料理長の采配次第でブレのあった食材の調達コストを、情報システムを導入することで低く抑えることに成功した。また、ダンは、小売店に設置したPOSシステムのデータを、自社だけでなく染工場などとも情報共有し、商品販売サイクルの短縮化と在庫規模の適正化を実現し、販売機会損失や値崩れを防いでいる。
 伝統産業や中小企業であっても、適切な規模のIT導入には大きな効果があることを証明している本書は、大企業に限らず中堅・中小企業の情報マネージャに目を通して欲しい。
(ライター・生井俊)
誰も語らなかったIT 9つの秘密──なぜ、会社のしくみは変わらないのか?
●山本修一郎、鈴木貴博=著 浜口友一=監修
●ダイヤモンド社 2004年8月
●1500円+税 4-478-37466-X
 本書の冒頭、あるメーカーの経営会議を再現する。
──「次は在庫管理システムの統合の件です。現行の販売系受発注システムのアラゴン3と製造管理系のNNSCのDBを一元化して在庫管理の精度をあげるのが目的です」と発言がある。その瞬間、会議室の温度がぎゅっと下がったような気がする──。
ITについて議論できない旧世代の経営者が多い。アメリカに比べ、経営者の情報リテラシーが低いため、ITを導入してもその効果が低い。そのITからブラックボックスをなくし、秘密のないものとして理解してもらうことが本書の目的だ。
先ほどの会議の場面で必要なことは、目的や狙い、効果をきちんと聞き出すこと。そうすれば、12億円の見積額に対し、なんとなく「8億円でできないか」といった的を射ない質問を投げかけることがなくなる。また、システム開発の6割が人件費だと本書は指摘するが、そのコストを削減すると、システムの試験期間を短縮するなど、不完全な納品となることが多いと警鐘を鳴らす。
情報システム構築に必要なことの把握や、予算を削る意味について、経営者のみならずSE/情報マネージャも本書から学ぶことは多いはず。ぜひ一読を。
(ライター・生井俊)
成功企業のIT戦略──強い会社はカスタマイゼーションで累積的に進化する
●ウィリアム・ラップ=著、柳沢享、長島敏雄、中川十郎=訳
●日経BP社 2003年12月
●2800円+税 ISBN4-8222-4367-2
 世界のリーディング企業における戦略的IT活用のケーススタディ集である。日米欧の有名企業十数社が登場するが、トヨタ、新日鉄、イトーヨーカ堂など半数は日本企業だ。著者は、その日本の大手ユーザーの特徴として、「カスタマイズしたソフトウェアを大量に使用していること」「IT子会社の発展」を挙げ、これによりITの高度な専門化とITの業務関連(知的)財産の集積という優位性を獲得していると説く。これらの企業は、ITを目的達成と差別化のための道具として見ており、「累積的進化」を実現しているとし、米国のソフトウェア産業主導型のITに警鐘を鳴らす。「日本はIT化に遅れている」という俗論を真正面から切る1冊である。
企業変革力
●ジョン・P・コッター=著、梅津祐良=訳
●日経BP社 2002年4月
●2000円+税 ISBN4-8222-4274-9
 企業変革での失敗事例を数多く挿入した読みやすい経営書で、経営者やプロジェクトマネージャに向けリーダーシップ論を展開している。
 変革を推進する上で「8つのプロセス」があると本書では説く。具体的には、1.危機意識を高める、2.変革のための連帯チームを築く、3.ビジョンと戦略を生み出す、4.変革のためのビジョンを周知徹底する、5.従業員の自発を促す、6.短期的成果を実現する、7.成果を活かして、さらなる変革を推進する、8.新しい方法を企業文化に定着させること、の8項目だ。これらは、順番にこなすだけでなく、複数が同時に進行する必要がある。
 新しいシステムを導入したり業務プロセスを変更することで、一時的に生産性が低下することがある。そのとき、問題に対して危機意識が低いと、なぜ新しいことを始めたのか、あるいはシステム導入の是非を問うといった議論が再燃することがある。結果、プロジェクトの撤退や見直しが起こり、従来型のやり方に戻ることになり、変革は失敗に終わる──。
 どの時代でも、変革には痛みが伴うものだ。これを推進するためには、人格者のリーダーが求められている。過去よりも、将来を重視するリーダーのいることが、企業にとって有益だという視点でまとめられている。(ライター:生井俊)
チェンジモンスター──なぜ改革は挫折してしまうのか?
●ジーニー・ダック=著、ボストン・コンサルティング・グループ=訳
●東洋経済新報社 2001年12月
●2200円+税 ISBN4-492-53131-9
 ITプロジェクトがそのまま、企業改革プロジェクトであることは少なくない。ITプロジェクトの失敗とされる例も、改革の失敗であることが多いのではないだろうか?
 本書は、企業改革を阻む人間的・感情的な障害要因を“チェンジモンスター”と呼び、これを乗り越えてチェンジマネジメントを実現する方法を述べている。この中では変革のプロセスを「停滞-準備-実行-決着-結実」からなる曲がりくねった道のり(チェンジカーブ)ととらえる。そして「停滞にありながら全社的にはそれに気付かない」「準備段階でプロジェクトを完了したと思ってしまう」「リーダーが孤立する」などのチェンジモンスターの退治の仕方を述べていく。
 内容は方法論や理論ではなく、実例集といったところで読みやすい。例えばITプロジェクトでの例として、システム部門とユーザー部門で愚痴を言い合う場を設けるといったやり方が紹介されている。
 プロジェクトの中で頑強な抵抗勢力に出会った経験がある方なら、手にとってみる価値があるだろう。

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