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■IT投資対効果、ROI
 
IT投資とコストマネジメント
●東山 尚=著/日本情報システム・ユーザー協会=監修
●NTT出版 2008年11月
●3800円+税 978-4-7571-2224-6
競争優位や差別化を図ることができるビジネスモデル、ビジネスシステムを戦略的かつ迅速に展開するには、マーケティング先行のITを活用する必要がある。そのためには情報システムの企画段階から、実用性だけでなく経済性(IT投資効果)を評価することが重要だ。本書では、IT投資とそのコストマネジメントについて、その進め方や評価方法を紹介する。
ITコストマネジメントは、経営責任として行うべきものと、情報システム部門が代行して管理すべきものとを明確することが大切だ。経営責任として行うべきものは、企業価値と会社の予算実績管理水準やコストマネジメント水準を向上させる指針を作成すること。その指針に基づき、情報システム部門は、全社各部門のIT予算のとりまとめから、IT投資予算の執行管理、既存情報システムの運用・維持上のコストマネジメントに至るまでを体系化して行う。このとき、ITによる投資効果とコスト効果を、発生コストを参照して評価し、IT満足度とIT健全性(ITコスト効果)を評価することでITコストマネジメントの成果について説明責任を果たさなければならない。
企業におけるIT投資対象は、「経営・事業革新追求型」「生産性コストダウン改革型」「ビジネス情報環境強化型」「情報システム構造改革型」の4つに分類できる。これからのIT投資は、投資効果を享受する経営層をはじめそれぞれの部門が、それぞれの視点から戦略を立て、ITインフラストラクチャの調達やアプリケーション設計・開発などを効果的に行うことが、ITガバナンス上重要になる、と説く。情報システム部門に任せっぱなしにしてはいけないのだ。
企業ガバナンスとITガバナンスから、情報システムによるサービスと満足度、情報システム調達・契約とプロジェクト監督まで、広い範囲にわたって詳細に説明しており、ITが絡むさまざまなシーンで活用できるだろう。(ライター・生井俊)
 
ソフトウェア業における工事進行基準の実務
●岩谷 誠治=著
●中央経済社 2008年6月
●2800円+税 978-4-502-28580-6
 2007年12月、企業会計基準委員会から「工事契約に関する会計基準」および「工事契約に関する会計基準の適用指針」が公表された。「工事契約」とあるが、この基準の適用範囲には「受注制作のソフトウェア」も含まれる。そこで、ソフトウェア業を対象に新会計基準への対応方法をまとめたのが本書だ。
経営者は、企業経営の指針として会計を用いているが、新しい工事契約会計基準は、会計の使い方を根本から変えるもの。特に、工事進行基準への対応もさることながら、工事損失引当金の計上が規定されたことにより、損失を先送りするような処理は今後認められなくなる。また、プロジェクトマネージャ(PM)や管理職層は、従来の業務プロセスや取引慣行の抜本的な見直しが必要だ。
新会計基準導入にあたって注意すべきポイントは、「会計上の問題ではなく、経営上の問題という認識」「会計システムへの影響の把握」「スタッフの会計知識向上」という3点。自らの業務上の判断が、自社の最終的な財務諸表にどのような影響を与えるかを理解していなければ、精度の高い見積もりや判断作業を任せることは危険だ。このような矛盾した問題を解決するためには、スタッフレベルの会計知識を底上げする施策が求められる、と説く。
工事契約に関する会計基準、工事契約の税務上の扱い、内部統制との関係、導入時の留意点などを簡潔にまとめている。影響範囲を正確に理解できる、経営者やPM向け参考書だ。(ライター・生井俊)
 
ソフトウェアの規模決定、見積り、リスク管理
●ダニエル・D・ガロラス、マイケル・W・エヴァンス=著/富野壽、荒木貞雄=監訳
●共立出版 2008年4月
●4700円+税 978-4-320-09751-3
 ソフトウェアの規模決定(サイジング)と見積もりに関するリスクは、多くの失敗プロジェクトの根本原因となっている。本書では、さまざまなソフトウェア規模決定技法におけるコスト・スケジュール・管理・制約から生ずるリスクなどを探究し、よりよい見積もり実施とプロジェクトリスク低減について解説する。
第1章では、ソフトウェアプロジェクトの見積もりはなぜ失敗するのかを紹介する。そこでは、技術課題というよりも粗雑な計画により失敗している現実が浮かび上がる。それを受け、第2章から第4章では、ソフトウェア見積もりのリスク管理に役立つプロセスを示す。「見積もりの範囲と目的を規定する」ことから始まる見積もりのプロセスは、合計10の段階を経て作成されるとよい。
第10章では、リスク管理プロセスを扱う。リスク管理はリスクの識別、評価、監視、軽減のプロセスを実行することで達成され、システム開発、フィールド展開、引き渡し後の保守と支援を通して不測事態への対応を行う。計画と実践が容易にできるリスク管理プロセスとして7つの段階を示し、7段階がその順序で行われる必要はないが、継続的に定期的に実行されることで、ソフトウェアプロジェクトの成功確率が著しく高まる、と説く。
現在広く用いられている規模の見積もり・決定手法を網羅するだけでなく、見積もりにかかわるリスク管理や見積もりの確率の問題にも言及しており、コスト削減をしながら短期間で高品質のソフトウェア開発を求められるプロジェクトに携わるPM/PLにとって役立つだろう。(ライター・生井俊)
 
IT投資は3年で回収できる
●畠中 一浩=著
●PHP研究所 2008年4月
●1800円+税 978-4-569-69883-0
 ITに対する投資額は年々増加しているが、その投資効果(IT-ROI)について不満を持つ企業経営者は多い。本書は、ITを真に経営に役立てるための手法について、事例を交えて紹介する。
IT-ROI最大化は、IT投資案件を「IT導入を含む戦略」と明確に位置付けることから始まる。戦略策定から計画・実行、業績評価までを一連の活動の枠組みとして設定し、効果を最大化するための諸施策を講じることが必要で、経営トップから業務部門全員の理解・納得の上で具体的・明確な「KPI」を設定し、各施策の進ちょくを計画・実行・モニターする「行動の実行」により、効果の最大化は現実的な目標となる。
プロジェクトマネジメントは、職位や権限に基づいてプロジェクトをコントロールするというよりも、各プロジェクトの効果面に着目し全社としての効果最大化を図る「編集機能」がその本質だ。企業戦略との整合は最も重視すべきポイントだが、「来年度はどちらの方向に策定を考えているか」といった未決定情報のキャッチも重要だ。これらの情報を基に、各プロジェクトの目標を軌道修正し、活動計画の延期・前倒し・他プロジェクトとの統合や分割などを調整し、リソースの再分配を行うが、その際にはKPIの変更を欠かさないようにする。「情報」は見直しに合わせ短期間に収集するのではなく、常に収集・把握する仕組みを企業として整備すべき、と主張する。
これらの手法により、IT-ROIを十分に上げることができた企業があり、その多くはIT投資を3年以内に回収することが可能になった。そして、収益性の向上だけでなく、企業価値の向上も実現した企業も多々あるという。さて、あなたの会社のIT-ROI、果たしていかがだろうか。(ライター・生井俊)
 
IT投資で伸びる会社、沈む会社
●平野 雅章=著
●日本経済新聞出版社 2007年8月
●1700円+税 978-4-532-31328-9
 IT導入をして効果を上げている企業と、そうでない企業があるのはなぜか?──本書はそんな疑問に答えるべく、「IT経営百選」のデータに基づいた実験などを通じて、IT投資の前段階としての“組織能力”の重要性を指摘するとともに、その組織能力がどのようなものかを紹介する。
 ミクロレベルの実証実験を分析すると、IT投資・組織能力・企業業績の間の関係から4つの事実が見えてきた。1つ目は「IT投資と企業業績には関連がある」、2つ目は「IT投資が増えるほど、組織能力が企業業績に与える影響は大きい」、3つ目は「組織能力が高くなるほど、IT投資が企業業績に与える影響は大きい」、そして4つ目は「組織能力が低いときに、IT投資を増やしても効果は薄い」ということだ。
 また、多くの企業では個別のIT投資案についての事前評価は行われるものの、その成果を測定する事後評価はほとんど行われていないという問題を指摘するとともに、評価においては、個々のプロジェクトの投資と効果を個別に評価しようとするより、その企業のIT投資プロジェクトすべてを全体的に評価し、企業のIT活用能力を判定することの方が合理的で容易である、と説く。
 組織能力指標である「組織IQ」の測り方や、IT投資と組織投資とのバランスなど、IT投資の成果を最大化する手法についても言及している。経営層、マネージャ向け。(ライター・生井俊)
 
IT投資マネジメントの発展──IT投資効果の最大化を目指して
●松島 桂樹=編著
●白桃書房 2007年4月
●2500円+税 978-4-561-24467-7
 戦略の実行を支援するのがIT投資の重要な役割だが、インフラにかかわる投資などがすべて戦略実行のための投資なのかという疑問がある。このような問題を解決するために本書では、資源ベースアプローチを基礎とし、戦略マップバランスト・スコアカードなどを活用したIT投資マネジメントの必要性を提示する。
 IT投資が企業戦略から見て適合する投資かどうかについては取捨選択の評価が必要で、ROIだけでなくそれ以上に新しい評価アプローチが求められている。資源ベースアプローチの観点では、ITは競争力を向上させるというポジティブな面も持っているが、データのデジタル化によって、競争相手が模倣しやすいというネガティブな面も持ち合わせており、永続的な競争優位を築けるかどうかが疑問視されている。
 ITにかかわる組織的な活用能力を高めるための概念「ITケイパビリティ」では、IT活用ビジョン構築能力、IT活用コミュニケーション能力、プロセスデザイン能力、IT投資適正化能力、チェーンリーダー開発能力の5つが必要だ。効率的に機能させるためには、インフラなどの物的資産、スキルなどの人的資本、知識・情報などの情報資本、さらに組織資本などを効率的に活用できるかが成否を左右する。これらの能力を総合的に診断し、どこに課題があるか見極めなければ成功は容易ではなくなったが、このような困難性はITが単なるコモディティではなく、模倣しにくい重要な競争要因となると解く。
 学術的な色合いの濃い本書だが、最後に日本の先進企業に見るITマネジメント・プラクティスとCIOの役割を紹介し、実務面もカバーする。(ライター・生井俊)
 
IT投資の評価手法──コストと効果を定量的に分析・管理する
●大和田 崇=著
●中央経済社 2007年3月
●3200円+税 978-4-502-39040-1
 情報システムはいまや企業における中核的な設備投資対象になっているが、IT技術の分かりにくさが原因で、適切にこれを管理するための手法が確立できていない。そのITを定量的にマネジメントするために、経営管理と情報技術分野の方法論を組み合わせて体系化したのが本書だ。
 情報システム投資の評価体系は、システム構築や運用に必要になるコスト・マネジメントと、システム稼働後に得られる効果に関する体系の2種類。評価を実施する際は、2つの視点を切り分けて、議論が混乱しないように留意する必要がある。また、評価に当たっては、投資の目的、分類(役割による分類とアーキテクチャ上の分類)、ライフサイクル、コスト構造の4点をあらかじめ明確に定義しておくことが重要だ。
 システムによるプロセス改善の効果を測定するためには、対象プロセスを実行するためのコストを計算し、導入前と導入後でコストの比較を行う。プロセス・コストは、基本的にプロセス開始から終了までに必要な各アクティビティの作業所要時間と作業単価で決まる。業務プロセス改善のためにシステムを導入することで、プロセスの短縮やアクティビティにおける作業時間の短縮、ミス発生頻度の減少が効果として得られる、という。
 ほかにも、ファンクションポイント法や、バランス・スコアカードにITを応用した「ITバランス・スコアカード」などを紹介しながら、ITと経営の手法をバランスよく活用していく大切さを説いている。経営者やプロジェクトマネージャが、明確な視点を持ち、局面に応じて適切な方法論を選ぶための手引きとして利用できるだろう。(ライター・生井俊)
 
SEのためのIT投資効果の測り方
●森 昭彦=著
●日経BP社 2006年6月
●2000円+税 4-8222-8279-1
 IT化やシステム構築の仕事は、相手にその意義や価値を正しく理解してもらうことが必要だ。そこでのポイントは「IT投資効果を明確にすること」にあるが、IT投資効果の予測が難しくなってきている現状がある。本書では、企業の目指す姿に到達するための「成功の鍵」を洞察するスキルと、実質的なIT投資について解説する。
 IT投資効果を考えるため、投資やコストなどを把握する基礎知識が不可欠になる。貸借対照表の見方から、所有か借用かを含めたハードウェア・ソフトウェアの調達方法、ファンクションポイント法などのソフトウェア開発費の見積もりについて紹介するほか、投資効果の基礎知識やバランスト・スコアカードなどのIT投資効果を測る切り口を扱う(第1章)。
 IT投資効果を上げるためのノウハウとしては、特に人間関係の板ばさみになりやすいSEにとって、基本的なコミュニケーションスキルや折衝力の強化が欠かせない。そして、開発ルールや基準を定め、SEがこれを守ることにより、開発作業の確実性が上がり、コストを抑えながら成果を上げていくことができる。ほかに、RFPの作成、投資効果の見込みの確認としてメリット・デメリットの洗い出しと整理を行うと、ロスが少なくなると説く(第2章)。
 第3章では、まとめとしてコストダウン、売上拡大、情報セキュリティ強化などの目的に応じた投資についての事例を扱う。SEが何をすべきかの視点で書かれているが、ユーザー企業の情シス部門にとっても有益な一冊だろう。(ライター・生井俊)
 
ソフトウェア開発見積りガイドブック──ITユーザとベンダにおける定量的見積りの実現
●情報処理推進機構 ソフトウェア・エンジニアリング・センター=編
●オーム社 2006年4月
●1524円+税 4-274-50068-3
 情報システムの開発を発注するユーザー企業にとって、最も悩ましい問題の1つが「提示された見積もり金額が妥当かどうか分からない」ということだろう。本書では、見積もりの具体的な方法とノウハウについて、総論、事例集、実証実験の3部構成でまとめている。
 妥当な見積もりをするためには、まずユーザーとベンダ間で、システム開発にかかわる成果物および活動のうち、どの範囲で見積もるのか、見積もりのスコープを明確にし、共通に認識しておく。また、契約によるリスク解消の糸口として多段階契約を採用すれば、契約にかかわる作業は増大するが、開発途中で発生しがちな仕様変更の影響を抑えつつ、その時点で明確になった部分の反映が可能で、大規模プロジェクトに適している(第1部第1章)。
 見積もりの結果について、唯一の正しい答えがあると考えるのではなく、プロジェクトのゴールを目指し、関係者がプロジェクトをコントロールし、プロジェクトの実績を見積もり値に近い値に収められるかが重要になる。見積もりは単独の活動として扱うのではなく、過去のプロジェクトで実証された定量的能力および規模、工数、工期などの関係式に基づき見積もるように、常にプロジェクトマネジメントと一体として対策を考えていくべきだ、と説く(第1部第2章)。
 後半、FP法COCOMO法をベースにした手法や、独自モデルによる見積もりの事例を取り組みの背景など含め詳述する。プロジェクトマネージャ、ユーザー企業の契約担当者、ベンダの営業担当者向け。(ライター・生井俊)
 
勝者のシステム 敗者のシステム──こうすればできるIT投資の適正化
●坂口 英弘=著
●ソフトバンク クリエイティブ 2006年2月
●2200円+税 4-7973-3457-6
 ITを積極的に活用し大きく業績を伸ばす企業がある一方で、多額のITコストを使いながらメリットが獲得できない企業、トラブルに悩まされる企業が増えている。それを分けるポイントが「システム構築のプロセスに対するノウハウの差」にあるという。本書では、システム構築を成功に導くための思考法と、その具体的な技術を紹介する。
 第一部マネジメント編では、なぜシステムは問題を抱えてしまうのか、ユーザー企業とSI企業の問題点を挙げ、ユーザー企業がとるべき改善方法を提示する。また、システムコストが増え続ける理由として、レガシーシステムから脱却できないこと、既存のシステムが複雑すぎて新たな要件定義を整理できないこと、SIベンダの移行見積コストが高額になりあきらめざるを得ないことなどを挙げ、それぞれについてアドバイスをまとめている。
 第二部テクノロジー編では、これからのビジネスニーズ、柔軟性や安定性などのシステム特性、ITコストの最適化の観点から分散システムが最も優れているといい、それを構成するためのポイントを解説する。また、システム設計手法として、オブジェクト指向とサービス指向アーキテクチャ(SOA)の概要と導入について簡単に触れる。
 マネジメントと技術に分かれている点、章の終わりにまとめがある点が好印象。より良いシステム導入を目指す情シス部門の担当者にお薦めしたい。(ライター・生井俊)
 
図解 よくわかる 調達CMM
●前田 卓雄=著
●日刊工業新聞社 2005年11月
●2400円+税 4-526-05555-7
 システムトラブルだけでなく、ITに関する多様な問題が身近に起きている。ITに対して主体的にかかわったうえで、どのようにすれば限られた時間や予算などを生かせるのか。ユーザー企業の視点から「IT調達」能力向上の重要性と、そのためのフレームワーク「調達CMM」について解説する。
 3章構成の第2章は、IT調達にかかわるEAITILCMMI個人情報保護法といった予備知識と調達のマネジメント手法についてを扱う。複数の部門が連携するような情報システムの調達では、業務改革の目的やゴールを明確にすることが「本当に」重要であり、そのゴールを定量的に示すこと(KPI)が肝要である。ただ、モデルに頼ることには自ずと限界があり、ビジネス成果は自己定義して自ら形成すべきものであることに注意しないといけないと説く。
 第3章は、「調達CMMとはいったい何か?」からロードマップ、アーキテクチャなど概説している。ITや情報システムの活用をより高めるために、調達CMMのフレームワークをざっくりと学ぶことができる。企業の経営層や情シス部門担当者向け。(ライター・生井俊)
IT活用勝ち残りの法則──IT投資を活かすマネジメント
●淀川高喜=著
●野村総合研究所 2004年6月
●1890円+税 ISBN4-88990-113-2
 本書は「“事業サイクル”に基づいたIT活用目的の設定方法」と「“ITマネジメント”の実践方法」という、2つの軸を持つ。事業サイクルには「起業−成長−成熟−再編−分化−模索」があり、その段階によって取るべきIT政策が変化していく。また、ITマネジメントは、「変革」「アセット」「リスク」の3分野について考察する。
企業のIT活用がうまくいかない背景に、「ベンダからの提案を真に受ける」「システム開発から運用までアウトソーサーに丸投げする」「撤退のシナリオが描けない」といった問題点があると指摘する一方で、ユーザー発のシステムにも「部門だけは便利になるが、事業全体に対する貢献は少ない」「現行業務の改善はできるが、業務そのものの抜本的な改革は難しい」などと手厳しい。
それなら、どういうシステムやマネジメントが必要なのか。1つの解になり得るのが、経営者の在り方だという。情報システム部門やアウトソーサー任せになりつつある今日的状況に、ITマネジメントの重要性を説く本書は、経営者がIT戦略の理解を深めるために役立つはずだ。(ライター・生井俊)
 
IT資本論──なぜ、IT投資の効果はみえないのか?
●近 勝彦=著
●毎日コミュニケーションズ 2004年12月
●1600円+税 4-8399-1646-2
 IT産業で働くインフォメーション・ワーカー、組織に改革をもたらし価値的創造をもたらすナレッジ・ワーカー(中間管理職)、ナレッジ・ワーカーを導くインテリジェント・ワーカー(企業家)にターゲットを絞り、3つのジレンマと8つのパラドックスについて解説する。ジレンマのパートでは、IT投資効果がないように見える理由を明らかにし、パラドックスのパートでは、IT投資によるさまざまな矛盾について、正と負の効果を同時に発生する可能性についてをまとめている。
 IT資本は、根元的に2つの効果をもたらす力がある。1つは経費削減で、もう1つは付加価値の増大だ。これらを実現しながら、業界内および業界間で熾烈な競争的効果も実現する。「SISはもう古い」というがこれはなくならないもので、そこに新しい息吹と力を付与するのは、新しいビジネス戦略の創造であり、クリエイティブなナレッジが競争的に必須だ。この持続的な努力が既存産業の再生の鍵になる、と指摘する。
 構成は、ジレンマやパラドックスについて例を挙げて説明し、その論を補足するために実証データを掲載する形をとる。通して読むというよりは、IT投資の意義を探すときなど、必要な項目を拾い読みするのが良さそうだ。(ライター・生井俊)
ITポートフォリオ戦略論──最適なIT投資がビジネス価値を高める
●ピーター・ウェイル、マリアン・ブロードベント=著、マイクロソフト株式会社コンサルティング本部=監訳、福嶋俊造=訳
●ダイヤモンド社 2003年8月
●3200円+税 ISBN4-478-37425-2
 適切なIT投資はどうあるべきか? という議論は古くからあるが、近年IT-ROIなど再び話題になっている。
 本書は、世界各地の企業を調査した結果などから、ビジネス上の価値を生み出すためのITインフラを構築するための手法として「ITポートフォリオ」によるアプローチを提唱するものだ。ITポートフォリオとはIT投資全般をリスク・リターンや事業戦略、株主価値などの面を含めてバランスを取って考えていくこと。ポートフォリオ内のさまざまなIT投資は役割と特徴が異なり、最適投資のためにはその理解が必要だとし、そのマネジメントのためにIT原則を策定することを説く。
 ここで展開される議論はある意味、常識に沿った当たり前のものである。しかし、現実にはITポートフォリオが構築できている企業は少ない。IT戦略の根本を見つめ直すための出発点として活用したい。
もうかる情報化,会社をつぶす情報化 ホンネで語るシステム・マネジメント
●木暮仁=著
●リックテレコム 2003年9月
●2000円+税 ISBN4-89797-777-0
 情報システムを導入するといっても、ハードやソフト、インフラによって話が相当異なる。デファクト・スタンダードの技術だから安心、とあぐらをかいていると、次々と新しい技術、ソフトが登場し、市場が塗り変わっていく。そんなため息の出るような情報化時代、どんな情報化が最適なのだろうか。それをとことん突き詰めたのが本書だ。
 情報システムの提供側、導入側、経営側の異なる立場を経験した筆者が、情報化の現場を、ビジネス誌に書かれていたことや市場動向などの客観的なデータを用い、多方面から分析するていねいな作りになっている。
 「情報化投資は売上高や経営利益の何%程度が適当だろうか?」という素朴な疑問に関して、TCO(パソコンを運用する総費用)のような算出方法があいまいなデータを過信することや、「同業のA社やB社でもやっているから同様の情報化が必要」と判断することの危険性を説くことで、コア・コンピタンスへの適切な投資を促している。またインフラと個別アプリを区別し、それぞれ会社に合わせた判断基準が必要だと指摘する。
 情報化が「目的」になっている現在の風潮に、一石を投じている。読んだ印象は大手企業の情報システム部門向けのようだが、「お金」「モノ」「エンドユーザー・コンピューティング」「人、組織」の視点からまとめられており、中小企業の情報システム導入においても十分役立つ内容だ。(ライター:生井俊)
図解 情報化投資効果を生み出す80のポイント──効果を見極めるためのマネジメント手法
●小野修一=著
●工業調査会 2003年6月
●2600円+税 ISBN4-7693-6152-1
 情報化投資の基本から、コストの見積もり・投資対効果評価方法までを図解入りで説明した概説書。経営者に向けて、情報化投資をブラックボックスにしないためにどのような方法があるのか、その基本的な考え方が述べられている。また、概説書としてはやや詳しく書かれているので、IT担当のマネージャがITマネジメント全体を俯かんしたり、導入評価プロセスを設計する際に役立つだろう。
情報価値経営──情報化の生産性を高める6つ基準
●社会経済生産性本部=編 鴇田正春=監修
●生産性出版 2003年7月
●1456円+税 ISBN4-8201-1762-9
 財団法人社会経済生産性本部が策定した、企業における「情報化の生産性」を自己診断するための評価基準「情報化・生産性評価基準 セルフ・アセスメント・ガイドライン」を解説したガイドブックである。ここでいう“情報化”とは「情報を活用して新たな価値を創造すること」であり、この評価基準はそれがどの程度実現できているかをチェックするためのもの。同時に「情報ならびに情報システムのリスクに対処するため」のガイドラインでもある。
 本書前半では、企業を社会システムとしてとらえ、それに必要な情報は何かという観点から、情報化を成功させるその本質とポイントを解説する。後半はガイドラインを具体的に利用する際のノウハウが展開される。
 セルフ・アセスメント・ガイドラインは、マルコム・ボルドリッジ賞や日本経営品質賞などのようにクライテリア(評価基準)による診断を行う経営ツールである。クライテリアは「情報価値の把握と情報化の必然性」「情報の開発・活用・管理の現状」「情報化推進体制とその仕組み」「組織と個人の情報技術の使いこなし」「情報化への取り組みの創意工夫と改善」「情報価値創造と価値連鎖の円滑化についての経営成果の評価と課題の把握」の6つ。本書は言う。「クライテリアに経営トップが回答できるかどうかで、情報化の生産性はほとんど決まってしまう」──企業のCIOや情報システム部門要員のみならず、IT活用に悩める経営者にこそ読んで欲しい1冊だ。

[図解 企業ユーザーとSE必携]情報システム投資の基本がわかる本
●小笠原泰、小野寺清人、森彪=著
●日本能率協会マネジメントセンター 2003年11月
●2000円+税 ISBN4-8207-4190-X
 企業の情報化投資に関する入門書。各項目ごとに見開き構成で、図解もあり読みやすい。「ITとは何か」から始まって、「なぜ、情報システム投資をするのか」「情報化投資計画の立案」「プロジェクトの立案・開発・運用」「情報システム投資の評価」まで、企業の情報化に必要な要素が全般的に触れられている。
 各要素はさほど詳しく書かれているわけではないので、本書だけで書名にある「情報システム投資」の評価や効果測定ができるようになるわけではないだろうが、その全体像や複雑さを掴むにはよいだろう。
 また、情報システム導入における活動項目が網羅されているので、関係者が基本知識を共有した上で、独自のITガバナンスを構築する際のガイドブックとしては便利だろう。巻末には各種計画書、契約書、RFPなどのフォーマットサンプルが付いている。
 自社のITガバナンスを再構築しなければ、という際の教科書としてお奨めしたい。

インタンジブル・アセット──「IT投資と生産性」相関の原理
●エリック・ブリニョルフソン=著、CSK=訳・編
●ダイヤモンド社 2004年5月
●2000円+税 ISBN4-478-37465-1
 ERPシステム導入のような大規模プロジェクトを調査すると、平均的な支出は20億円強。ハードウェアのコストはそのうち5%にも満たない。コストの大半は、業務プロセスの再構築やユーザーの教育費に充てられる。これらの「組織資本」や「人的資本」を築くための投資は、ERPの初期導入コストの80%に及ぶという。
 こうした投資、そしてその結果としての効果としての情報システムの全体的な価値は、会社の貸借対照表に現れることはない。このような組織的資産を「インタンジブル・アセット」と呼ぶ。ハードばかりに目がいきがちだが、実は社員教育や、取引先との関係、顧客満足度、社員の忠誠心といったものが、実質的に生産性の向上を支える。その割合は、ハードウェアの投資額1ドルに対し、インタンジブル・アセットの平均投資額が9ドルになると本書は指摘する。
 前半はデルの「見えない工場」などを取り上げ、デジタル組織になるための7つの原則をまとめている。原則の例を挙げると第1は業務プロセスのデジタル化、第7は人的資本に投資することだという。後半はインタンジブル・アセットの効果を計算式を示しながら解説する。
 情報技術と生産性向上との相関関係を学ぶことで、企業の競争力を強化し、成功する確率を上げることが可能になる。情シス担当者のみならず、経営者も手にしてほしい。(ライター・生井俊)

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