W3CのXML Schemaが勧告候補として公開

2000/10/26

 HTTPやXMLなど、World Wide Web関連の標準化を行うW3C(World Wide Web Consortium)は、XML文書の構造を記述するための仕様「XML Schema」を勧告候補として公開したと発表した。W3Cの仕様は、作業案からワーキングドラフト、勧告候補、勧告案をへて、勧告となる。今回の勧告候補の公開によって、W3CはXML Schemaの実装を広く呼びかけ、そのフィードバックを受け手さらに仕様を改善していく。

 XMLは、自由にタグなどを拡張して文書を作成することができるのが特徴。XML Schemaは、どのようなタグを用いて、どのような構造で文書を作成するのかのルールを記述する「スキーマ言語」と呼ばれるものの1つ。スキーマ言語でXML文書の構造を定義しておくことで、XML文書に記述できる情報項目にあいまいさがなくなるため、電子商取引などの場面で確実なデータ交換が約束される。

 XMLのスキーマ言語としては、すでにDTDと呼ばれるものが主に使われてきたが、XML SchemaはDTDに比べて、データ型の記述などが詳細に行えるようになっており、XML文書をデータ交換に使うためにより便利になっている。

 XML Schemaは、そこに含まれる内容が膨大かつ複雑で、そのために、ここまでの仕様の策定プロセスにも非常に時間がかかっており、このあと勧告に至るまでには、さらに時間がかかると見られている。そのため、いますぐにでもXMLで電子商取引を始めたいと考えている多くのベンダーやユーザーは、他のスキーマ言語などの選択肢を模索している状態だ。

 アットマーク・アイティで「XMLを学ぼう」などの連載を持つ川俣晶氏は、「XML Schemaは、マイクロソフトの.NET構想など、いくつかの企業のIT戦略にとって必要不可欠な重要な技術であり、早期実現が強く期待されている。しかし、仕様が巨大で難解、極めてデータベース寄りの構造であり、文書系のニーズに不向き、十分に実用性が検証されていない、といった問題点も指摘されており、必ずしも XML界においては、XML Schemaの支持で固まってはいない。これらの問題を解決 しないままXML Schemaが勧告候補になったとしても、それが勧告に続く平坦な道とは言い難い。もし、このままXML Schemaが勧告になったとしても、これが唯一のXML用スキーマ言語の標準の地位を手に入れるかどうか、現時点では何も確実なことは言えない」と、メールを通じてコメントした。

 また、XML専業メーカーであるインフォテリアは、「XML Schemaのような包括的なスキーマ言語は望んでいるが、しかし現状のXML Schemaは大きく、複雑なようだ。とはいえ、SOAPやWSDLなどの水平標準、RosettaNetなどの垂直標準の中では、DTDに代わるものとしてXML Schemaはデファクトスタンダードになるかもしれない。インフォテリアとしては、正式な勧告後すぐかどうか時期に関してはコメントできないが、取り組んでいく」と、広報の江島健太郎氏を通じてコメントした。その広報の江島健太郎氏は、アットマーク・アイティの「XML eXpert eXchange」のガイドでもある。江島氏は「個人的な見解」としたうえで「W3Cのブランドを背負っているので、他の選択肢がこれを打ち負かすことは不可能でしょう」とコメントした。

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